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ヨーロッパの日本人・・中村俊輔からですが、でもまずサッカーのメカニズムにもちょっと言及しようかな・・(2004年11月7日、日曜日)

レッジーナ対ユーヴェントス。チカラの差は歴然なのですが、ユーヴェが全体的にゲームを支配するという展開を観ながら、こんなコトも思っていました。「一体、この差の本質はどこにあるのだろうか・・?」

 サッカーは、基本的にはパスゲームであり、選手たちが協力して攻守の目的を達成しようとする団体ゲームです。そこでは、攻守にわたり、味方同士のプレーイメージがある程度重なり合っていなければなりません。だからこそ、ホンモノのチームゲームとも、ホンモノの心理ゲームとも言えるわけです。ここでは攻撃にスポットを当てます。

 ホンモノのチームゲームだから、しっかりボールを止めて、蹴ることができれば、いくら相手の方が上手くても互角のサッカーができる・・ハズ・・。何せ、攻撃の目的はシュートを打つことだし、そこに至るプロセスでの当面の目標イメージは、ある程度フリーでボールを持つこと(=スペース活用)ですからネ。ボールのないところでのクレバーな動き(=フリーランニング)でスペースへ入り込み、そこでパスを受ければいいというわけです。とはいってもネ、そこは、イレギュラーするボールを足で扱うという不確実性ファクターがてんこ盛りのサッカーのこと、そう簡単には「ロジック」を行使できないのですよ。

 相手や味方のポジショニングやボールの状況など、常に変化しつづける状態のなかで、スペース活用という攻撃での当面の目標や、シュートという究極的な目的を達成するためには、どうしても局面での「1対1の勝負」に入っていかざるを得ないし、そこでのせめぎ合いを優位に進めなければならない・・だからこそ、個のチカラ(特に、才能の本質であるボールコントロール能力など)が大きくモノをいう・・また、そんな背景があるから、サッカーは「1対1勝負の積み重ね」という見方もできるし、だからこそ、組織(戦術的な発想)と個(それぞれの選手のテクニックや才能)のバランスを取るのが難しいということも言えるわけです。サッカーは、形式的にはものすごくシンプルなボールゲーム・・だからこそ、その背景にあるメカニズムは複雑と錯綜の極み・・というわけです。

 サッカーを構成するメカニズムの「一端」にも触れたかった湯浅です。まあ、ちょっと「大回り」になってしまったけれど、ということで(レッジーナのホームスタジアムのグラウンド状態が悪いということも含めて)、個のチカラだけではなく、組織プレーの発想(戦術的なイメージレベル)でも上回るユーヴェントスがゲームをコントロールするのも仕方ないという展開だし、その高質なバランスの象徴が、いわずと知れたネドビェドだというわけです。

 さて、何故この話題から入ったかといえば、もちろんそれは、中村俊輔のプレー内容が冴えなかった総体的な背景をまず指摘しようと思ったからです。チーム力が一桁上の相手にゲームを支配されている・・だからレッジーナの攻撃頻度が低落するのも道理・・そんな状況で中村は、パスを受けてもサポートがない数的不利ななかで何とかしなければならない・・だから時間稼ぎのキープが増えるのも仕方ない・・また中村のドリブル突破は、タイミングを駆使しなければ相手を抜けないし、相手ディフェンダーも中村の足が遅いことを十二分に知っているから余裕をもって対処できてしまう・・とにかく中村俊輔は、ボールを持っても、周りが押し上げてくるまでキープして待たなければならないという厳しい状況でプレーせざるを得なかった・・というわけです。

 それでも、ボールを持ったら流石のクリエイティブプレーを披露しますよ。中村がボールを持ったら相手も容易にアタックできないし、そのことを十分に理解している味方の、ボールがないところでのパスレシーブアクションも活性化しますからネ。とはいっても、中村俊輔の全体的な出来については、やや不満。強い相手に押し込まれるという試合展開だからこそやらなければならないことがあったと思うのです。中村が、「そのこと」に全力でチャレンジしつづけたかどうか・・。まあ、その視点ではネガティブな批評をせざるを得ないというわけです。

 要は、もっと動きまわり(相手に押し込まれているから足を止めるのではなく、逆に、だからこそ運動量を増やすという前向きの発想!)、全力ダッシュのボール奪取アタックチャレンジをつづけたり、ボールを奪い返した後では、全力ダッシュでスペースへ入り込むことで常に味方の「パスターゲット」になりつづける等々、もっと積極的なプレーを展開すべきだったと思うのです。

 主体的に自分のプレー内容を高揚させられるようになった今の彼ならもっともっとチャレンジ出来るだろうし、チャレンジしていかなければならなかった・・。たしかに、あのような押し込まれる展開になったら、主体的にプレーのダイナミズムをアップさせるのは難しいのは分かりますが、でも逆に、だからこそ(はじめからこんな展開になることは分かっていたからこそ!)、事前に、プレーイメージを主体的に活性化させておくような準備(イメージトレーニング)が必要だったのでは・・。

 それにしてもレッジーナは本当によく守り切った。後半は、中村俊輔も、積極的にディフェンスに絡みつづけました(絡まざるを得なかった!)。でもやっぱり、最後の勝負所ディフェンスには不安と不満が残る。前述したように、もっともっと、読みをベースにした「ここぞ!」の爆発ボール奪取アタックアクションをイメージしていなければ・・なんて、主体的に自分のプレー内容を高揚させ、実際に素晴らしいプレーをつづけている中村だからこそ、もっともっとという欲求がつのるというわけです。

 



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