それにしても危険なフリーキック。狙い目イメージは、大きく分けて二種類かな・・。一つは、フリーな味方へピタリと合わせるキック。そしてもう一つが、走り込む味方という状況の変化を予想し、スペースへ送り込むキック。この試合では、立ち上がりの1分にスペースへのフリーキックでチャンスを作り、14分には、相手守備の「意識のブラックホール」で瞬間的にフリーになった味方への正確な「ラストパス」を決めた。いや本当に素晴らしい。
最初の立ち上がり1分のシーン。右サイド、ペナルティーエリアから10メートル手前のタッチライン寄りスポットからのフリーキックです。ボナッツォーリ、パレーデス、フランチェスキーニなど、動きまわるレッジーナ選手たち。その動きに目を凝らしながら、勝負シーンを脳裏に描写する中村俊輔。そして蹴られたボールは、相手を引きつけたボナッツォーリのアタマを越えた(一山越えた)後ろのスペースへ飛んでいく・・そこには、ボナッツォーリの背後スペースへ入り込んだパレーデスがいた・・そして、チョン!というスリップヘッドシュート・・惜しくも、ゴール左へ外れたけれど、とにかく絶対的なゴールチャンスだった・・。
このシーンでは、味方の動きに合わせてスペースへ飛ばすフリーキックというのがテーマでした。そんなシチュエーションでのディフェンダーは、相手のユニフォームを引っ張りながらでも、とにかく「身体を預ける」ことくらいしかできない・・でもピタリと身体を密着させられれば、相手もフリーでヘディングできないから、そう簡単には正確なシュートは飛ばない・・昨日の「2004サントリーチャンピオンシップ」で魅せたマリノス守備陣のようにネ・・。でもこのシーンでは、あまりにもフリーキックが正確だったから、相手の「身体寄せ」というプレッシャーにもかかわらず、パレーデスは、スリップヘッドシュートを飛ばすことができた・・。いやこのシーンでは、中村の正確なキックに対する信頼があるから、パレーデスが、相手マークを振り切るくらいの勢いでスペースへ入り込めたといった方が正しい表現かも・・。
また14分のシーンでも、正確にスペースを使った。ボールを置いて助走に下がる中村俊輔が、一瞬で、ファーポストサイドの大きなスペースをフランチェスキーニが狙っていると察知し、素早くそこへラストパスを飛ばしたということです。一瞬の全力ダッシュで完全にフリーになったフランチェスキーニ。あとはサイドキックでボールを相手ゴールへ送り込むだけだったのに・・(結局は空振り!)。中村へ視線を投げる相手守備の「背後」から全力ダッシュでスペースへ抜け出したフランチェスキーニ。まさに、ラストパスを呼び込む決定的フリーランニングでした。もちろん、その意図を察知し、勇気をもって、スペースへの鋭く正確なボールを送り込んだ中村も素晴らしかった。
この両方のフリーキックシーンからは、レッジーナが、中村俊輔という、セットプレーでの「イメージリーダー(中村のずば抜けたキック能力)」をコアに、それを活用するための「イメージ・シンクロ・トレーニング」を積んでいることを如実に見て取れます。もちろんジーコジャパンでも、イメージ・シンクロ・トレーニングを積み重ねているでしょう。この素晴らしいフリーキックシーンを見ながら、来年のW杯二児予選に思いを馳せていましたよ。
とはいっても、その他のフィールドプレーの内容は、ちょっと減退気味。たしかに、攻守わたる勝負の局面プレーでは、なかなかいいコンテンツを魅せてくれるし、ボールがないところでの「意志を込めた全力ダッシュ」もあるけれど、どうも、全体的な運動量が足りないし、攻守の目的(シュートを打つこととボール奪取)を達成するために、勝負所に絡んでいこうとする意志のパワーもダウン気味だと感じる。だから、チームの全体的なダイナミズムアップに貢献できていない・・。
チームのダイナミズムアップの源泉は、もちろん人とボールの動きの活性化だし、チャンスでの個のドリブル突破チャレンジにおける「量と質」の高揚です。中村俊輔は、そのことに目立った貢献が出来ていないと感じるのです。要は、以前の「テレンコ・テレンコ」という様子見のジョギング状態が、ちょっとまた目立ち過ぎるようになってきている・・ということです。リードされた状態で、周りのチームメイトたちが必死にボールを追いかけ、ボールがないところでの全力パスレシーブアクションをつづけているのに・・。
そんなことを思っていた矢先の後半6分。中村が交代してしまった。何か「腰」とかに問題を抱えていたということなのだろうか・・。こちらは知る由もないから、素晴らしいセットプレーコンテンツと、ちょっとパフォーマンスが減退気味のフィールドワークのギャップにフラストレーションがたまってしまいました。
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さて、後半37分から交代出場した中田英寿。フムフム・・もう少しかな・・交代出場してすぐに目立つパフォーマンスを誇示するというのは並大抵のコトじゃないから仕方ないけれど、グラウンドに出た次の瞬間から攻守にわたって走りまくる(味方へのアピールエネルギーを放散しまくる!)くらいの意志の爆発があるべきだった・・もちろん局面では、強烈な意志を爆発させようとするシーンもあったけれど・・。
その意志とは、高みで安定する良いプレーをつづけることへの欲望。もちろんそれは、自己実現へ向かうベクトルに乗ることに対する渇望とも表現できる。良いプレーができるための絶対的なベースが守備コンテンツにありというサッカーのメカニズムを深く理解している中田のことだから心配はしていないけれど・・。