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ヨーロッパの日本人・・中田の好調プレーに舌鼓を打っていた湯浅でした(ラツィオとの再試合)・・(2004年3月26日、金曜日)

どうも皆さん。今日(金曜日)は朝から所用が重なったことで、中田の試合(対ラツィオ戦)のビデオを観られたのは夜になってからでした。でも、だからこそ、ジックリと彼のパフォーマンスを観察できましたよ。

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 先週のゲーム(ホームでも対ブレシア戦)の後、マッツォーネ監督が、中田のパフォーマンスについて、かなり厳しい口調で苦言を呈していたとか。サスガ、マッツォーネ。まあ私の眼には「そこそこの出来」とは映っていたわけですが、期待値の高さがベースにあるマッツォーネ監督にとっては、「よし、いま状況が整っているから、ここはひとつ中田に刺激を与えておかなければ・・」ということだったのでしょう。

 もちろんそれは、この試合でボローニャが「3-0」という完勝をおさめたからに他なりません。だからこそ、「中田!・・オマエはもっと出来る・・あんなプレーじゃだめだ!・・決して(自分自身に)妥協せず、どんどんと動きまわってチームの中盤コアとして、もっと積極的にプレーせよ!!」なんていうメッセージを送るのに、最適の状況(結果がポジティブで全体的な雰囲気もプラス指向だったからこそ!)だと、マッツォーネが判断したということだと思いますよ。

 私は、そのゲームでの中田のパフォーマンスについて、「中田は、出来が悪いというわけではないけれど、どうも良いタイミングで彼にボールが集まらないから、相手マーカーとのガチャガチャの潰し合いになるシーンが多く、彼を中心にした仕掛けがままならないという印象でした・・」なんていうニュアンスで書きました。それでもマッツォーネ監督にとっては、中田のボールなしの動き「も」悪かったからボールが集まらなかった・・集まりにくかった・・と苦言を呈したのでしょうね。

 そして、その数日後のラツィオとの再試合。そこで、まさに「マッツォーネの刺激」が最大の効果を発揮するのですよ。たぶん彼は、このゲームのことをイメージして、勝利という好条件を活用して刺激を与えたに違いない。サスガだね、オッサン・・。

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 とはいっても、相手は強豪のラツィオですからね。ボローニャがゲームペースを握るのは難しい。全体的には、どうしてもラツィオの方が目立つという展開なのです。そんななか、中田の立ち上がりも、あまり冴えない・・。

 冴えないのは、攻守にわたる「ボール絡みプレー」がうまく回転しないから。どうもパスをうまいカタチで受けることができない・・ボールをもっても、ラツィオ守備ブロックの囲い込みが厳しいし、周りの味方パスレシーバーたちもうまくフリーになれないからミスパス(中田の場合は、味方が良い体勢でパスを受けられなかったらミスと評価する?!)も目立つ・・。ということで、うまく仕掛けを演出できない中田英寿なのです。

 それでも、ボール絡みのネガティブ現象がつづいたにもかかわらず、彼の、攻守にわたるボールなしアクションはまったく衰えることはありませんでした。それが凄い。私は、彼の動きに目を凝らしつづけ、そして思ったものです。サスガに、中田の意識と意志の強さは世界トップクラスだ・・。

 もちろんそんなプロセスを経て、彼のプレーの効果レベルも上昇ベクトルに乗るのです。やる気のポテンシャルが減退することなく、目立たないプレー(攻守にわたるボールなしのアクティビティー!)に気のパワーを注入しつづけた中田。それこそ、ホンモノの「セルフ・モティベーション・能力」。いや、本当に素晴らしい。

 そして、中田が攻守にわたって展開する、(結果では)ムダに終わってしまうことの方が多い「ボールなしアクション」が、徐々に結果にもつながりはじめるのですよ。前半24分に中田自身がゴール前に上がっていって放ったヘディングシュートのシーン。それは、ハーフウェイライン付近で、彼自身がボールを奪い返した守備プレーが「起点」になりました。そこから、右サイドでフリーになっていたシニョーリへタテパスを出し、中田自身は、脇目もふらずにゴール前へ・・。そこへシニョーリの左足から正確なクロスボールが糸を引いたというわけです。

 中田とシニョーリのコンビプレーは、見所豊富でしたよ。中盤の底でボールを奪い返した中田・・戻り気味にフリーランニングしてきたシニョーリの足許へタテパスを付ける・・そして中田は、間髪を入れずに前線へ押し上げていく(ボールなしのクリエイティブな仕掛けプレー=ボールなしのリスクチャレンジ!)・・中田とシニョーリによる、クリエイティブなタテのポジションチェンジ・・そんなクリエイティブな攻撃の変化が連続して出てきたからこそ、ボローニャの仕掛けにも勢いが乗るようになった・・中田とシニョーリの間では、明確なイメージシンクロプレーが成り立ちはじめている・・。

 そして、中田がヘディングシュートを放ったあたりからボローニャの勢いが増幅していくのです。攻撃に人数をかけられるようになったことで、中田のチャンスメイクもうまくはじめている・・もちろんそこでは、シニョーリとの変幻自在のポジションチェンジもうまくミックスしている・・だから仕掛けの変化コンテンツの幅も広がる・・。

 とはいってもその後は、一進一退の展開。そんななか、シニョーリの先制ゴールが決まるのです。ゴール前からの中距離シュート。それが相手に当たってコースが変わり、ラツィオゴールの右隅に吸いこまれていったというわけです。シニョーリへラストパスを送ったボローニャ選手へ仕掛けのタテパスを送り込んだのは中田英寿でした。

 でもその4分後には、素早いリスタートから左サイドを突いたラツィオが、正確なクロスからのこぼれ球を蹴り込んで同点にしてしまいます。このシーンでは、ボローニャGK、パリューカの見事なゴールキーピングが抜群に光り輝いていました(彼がギリギリのところでパンチしたこぼれ球を蹴り込まれてしまったのだけれど・・)。考えてみれば、ボローニャの勝利の多くが、パリューカの素晴らしいゴールキーピングによってもたらされたといっても過言ではないですからネ。まあ大したゴールキーパーだ。彼がいるからこそ、ボローニャ守備ブロックが心理・精神的にも安定してプレーできているということも忘れてはなりません。

 前半のシュート数は、完全にラツィオが凌駕していましたよ(枠内シュート数で、1本対5本でしたかネ・・)。まあ、全体的なゲームの流れ(ラツィオが地力の差を見せつけるようにゲームを牛耳っている!)からすれば当然のデータではあります。

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 後半も同じような展開。ラツィオが全体的にゲームを支配し、たまにボローニャが、ここ一発という鋭い攻めを仕掛けていく・・。

 ボローニャでは、中田英寿の仕掛けプレーが冴えはじめていると感じます。ボールなしのプレーは、相変わらずダイナミックなのですが、その積み重ねが、ボール絡みのプレーにもポジティブに現出してきている(よりフリーな状態でボールに触れるようになっている!)・・ってな感じ。

 カウンター気味の攻めでも、中田は、流れをしっかりと読んだ効果的な演出を魅せます。いまどのような攻めが有効かというポイントに対する判断が素晴らしい! カウンターならば(相手守備ブロックが整わない状況などでは・・)シンプルで早い勝負パス・・組み立てならば、相手守備ブロックを一方に引きつけてからのサイドチェンジパスや、シニョーリとの素早いワンツーなどを織り交ぜたコンビネーションにチャレンジしていくことで、ラツィオ守備ブロックを振り回す(=ラツィオ守備ブロックの薄い部分を作り出し、そこを突いていく!)。

 ホントに面白い展開になっていると感じます。たしかにラツィオが押しています。それでもボローニャは、押し込められることで前へ行くエネルギーも充填できなくなるというのではなく、たまに繰り出す攻めに、強力なラツィオ守備ブロックをも突き破ってしまうような強力な勢いを乗せられていると感じるのです。その勢いの演出家が、中田英寿でありシニョーリであり、はたまた右サイドの汗かき仕掛け人ネルヴォだったりする・・。

 要は、たしかに、ラツィオに対してイーブンのサッカーを展開できるほどボローニャに総合力はないけれど、高いクオリティーを有する(個の)仕掛け人たちが、うまく有機的に連鎖するプレーを展開していることで、たまに繰り出す仕掛けに、ヤリの切っ先のような鋭さがある・・だからラツィオ守備ブロックも、かなり神経質にならざるを得ない・・ってな具合なのです。そして、そんな雰囲気のなかでボローニャが、勝ち越しゴールを挙げてしまう。後半19分。バックパスを受けたアモローゾの、まさにキャノンシュート。興味深い展開じゃありませんか。

 その後の後半33分には、ラツィオ守備ブロックの重鎮ミハイロビッチまでもが退場になってしまうのですよ。でも、それでラツィオが万事休するはずがない。彼らの地力はトップクラスですからね。人数が足りないにもかかわらず、一点を追ってボローニャを押し込みつづけるのです。

 そんな展開のなかで、ボローニャ守備ブロックで大活躍したのが、後半21分から交代出場したコルッチ。やはり彼は、ボローニャ中盤に欠かせない「猟犬タイプの守備的ハーフ」なのです。彼のおかげで、ボローニャの中盤に、常に、より明確な「守備の起点」ができるようになりました。何せコルッチは、まさに猟犬のように、危ないシーンへ全力で急行したり(もちろん自分自身の判断と勇気で!)、相手ボールホルダーや相手パスレシーバーを、全力パワーで素早く効果的にチェックしてしまうのですからね、周りの味方は、次のディフェンスがやりやすかったに違いない(次の予測ディフェンスのために、コルッチの猟犬プレーは欠かせない!)。

 そしてタイムアップ。たしかに、ボローニャにとってラッキーな勝利でしたが、その「幸運」を、クリエイティブで積極的なリスクチャレンジプレーの積み重ねによって、選手たち自身が「呼び込んだ」ことも確かな事実でした。美味しい紅茶(ダージリン)を飲みながら、中田英寿のプレーにも舌鼓を打っていた湯浅だったのです。この好調さを、シンガポール戦までしっかりと維持して欲しい・・。

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 チャンピオンズリーグ準々決勝についてですが、全体のタテヨコのポジショニングバランスを徹底して崩さずに、守り、攻めるミラン・・攻めのコンテンツは世界一だけれど、それに比べてどうしてもディフェンスの弱さが目立ってしまうレアル・・とにかく守備が(イングランド的に)強いチェルシー・・全体的なサッカーの質やバランスでは現時点でのチャンピオン、アーセナル等々、見所は豊富なのですが、それらのポイントについては、第二戦をメインにレポートする予定なのです。

 このところ、文庫本への加筆作業とか、雑誌企画やインタビュー&座談会&対談、そしてビジネス作業などに忙殺され、コアのテーマ以外の話題をレポートするエネルギーを充填するのに四苦八苦している湯浅なのです。ご容赦アレ・・。




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