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ヨーロッパの日本人・・トップ下に入った中田の、スーパーという表現がふさわしい素晴らしいパフォーマンスと、ケガが心配な(好調プレーの)小野伸二・・(2004年3月28日、日曜日)

昨日の夜中、マンチェスター・シティ対フルアム戦では、稲本の出番はありませんでした。さて今日(日曜日)は、小野伸二、中田英寿、中村俊輔の誰をレポートすればいいのかな・・。

 とはいっても、エールディビジ(オランダ一部リーグ)は、セリエよりもキックオフが30分早いから、もちろんまず小野伸二から観はじめたという次第。相手は、上位で、次年度のUEFAカップ出場圏内を目指すローダ。簡単な相手ではありません。

 はじまってすぐに、先週とは違い、小野伸二のプレー姿勢がかなり上向き(積極的)になっていると感じました。そのことは、彼の守備でのプレー姿勢に如実に現れている・・特にチェイシングの勢いがかなり高揚している・・。チェイシングは、守備の起点プレーとしての重要な意味合いがあります。要は、中盤守備での汗かきプレーとか、守備でのクリエイティブなムダ走りとか呼ばれる縁の下の力持ちプレーのこと。そんなプレーにも全力で取り組んでいるからこそ、小野伸二のスピリチュアルパワーが充実していると感じるのです。

 また攻撃でも、守備において汗かきプレーをつづける(重要なチームプレーに精を出す)小野にボールが集まるのも自然な流れです。そして何度も小野を起点に、仕掛けの流れがスタートするのです。一度など、右サイドに開いたブッフェルへ長いパスを出し、自身は、脇目もふらずに相手ゴール前へ・・というシーンも目撃しました。

 このシーンでの小野は、右サイドのブッフェルへ仕掛けパスを出したことで、相手守備ブロックの視線が、その右サイドに集中するという「スキ」を突くというイメージで、大外から、相手ゴール前のファーサイドにできたスペースへ抜け出したのです。そこへ、ブッフェルの足から、見事な「ラスト・サイドチェンジパス」が糸を引く。結局小野はシュートまでいけませんでしたが、小野を仕掛けの起点にした素晴らしいイメージ・シンクロプレーでした。長い距離を「走り切った」小野の勝負のフリーランニングに拍手!

 先週のゲームでは、攻守にわたって中途半端に過ぎる・・なんていうコメントに終始したわけですが、この試合では、彼の積極プレー姿勢が目立ちます。数日後に、W杯地域予選のシンガポール戦が控えているという「心理環境」も、ポジティブに作用しているのかな・・??

 そこまで観ていて、さてどうしよう・・と悩みはじめた湯浅です。あと数分で、中田英寿のゲームがはじまってしまう(中村が先発ではないという情報は入っていました)。

 とにかく、小野が魅せつづける積極プレー姿勢と、攻守にわたる実効プレーは、観ていて楽しいことこの上ないな〜〜・・それでも、中田のゲーム内容も気になる・・何せ相手はローマだしな・・でも、中田はまったく心配ないし、相手がローマでも例によって高みで安定したプレーを魅せるだろう・・小野のゲームをメインに、セリエをタイミングよくミックスするように観戦するか・・。なんてことを思っていたら、小野のチャンスメイクから、ブッフェルがが先制ゴールをたたき込んじゃったりして。

 そこでは、中盤でボールをもった小野からの、シンプル&スピーディーなコントロールとタテパスが明確なキッカケになったのです。そのパス出しプレーが見事だったからこそ、ブッフェルが余裕をもってドリブル勝負を仕掛けていけた。特筆だったのは、パスを出した小野が、ブッフェルがシュートしたときには、すでに相手ゴール前まで上がってきていたこと。素晴らしいバックアッププレー姿勢じゃありませんか。そんな素晴らしいシーンを観ていて、「やっぱり、このまま小野の試合を観つづけることにしようかな」なんてね・・。

 この試合では、とにかく小野の「起点ディフェンス」がうまく機能していることが目立つ。とはいっても、決定的なシーンでのボールなしディフェンスには、まだまだ不安が残りますけれどネ。いつも書いているように、前気味中央のミッドフィールダーとしては、その守備意識やインテリジェンスの高さも含め、本当に小野が良い選手へと発展をつづけていると感じていた湯浅でした。

 それでも、ここまで観て、急に気が変わっちゃいました。中盤ディフェンスでの実効ある絡みプレーや、次の攻撃での素晴らしいゲームメイキング&チャンスメイキング&決定的パスレシーブイメージ等々、まあこの試合での小野は、そんな優れたパフォーマンスを魅せつづけるに違いないと確信できたことで、急に、中田英寿の「ローマ対ボローニャ」が気になりはじめたのです。やはりローマ戦ですからネ。相手が強いと、見えてくる部分にも広がりがある・・なんてネ。

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 ということでボローニャ。この試合では、シニョーリがベンチスタートということで、中田英寿は二列目トップ下でのスタートということになりました。面白い・・。そして中田は、前線からの積極ディフェンスだけではなく、攻撃での組織プレーの起点になったり、人数をかけることができない仕掛けシーンで吹っ切れた「個の勝負」を仕掛けていくなど、期待に違わぬ活躍を魅せてくれるのです。ドリブル突破や、タメからのスルーパス勝負などの個の勝負クオリティーでも高いレベルにあると感じさせてくれる中田。楽しそうにプレーできていると感じます。相手がローマであるにもかかわらず・・。

 それにしても、中田がボールをもったら、シンプルで効果的な展開になる。この試合でのボローニャは、ターレをワントップに、その後方に、ロカテッリ、中田英寿(彼は基本的にセンター!)、そしてベッルッチが並ぶというイメージでしょう。でも、ベッルッチやロカテッリがボールをもったときと、中田英寿がボールをもったときの次の展開コンテンツが、やはりというか、明確に違うのですよ。どうしても、そこで仕掛けの流れが停滞してしまうロカテッリとベッルッチに対し、中田がボールをもったときは、確実に、効果的なカタチで次へとボールが動きつづけるのです。

 この現象を言葉で表現するのは、ちょっと難しい。まあ、ボールを持つ前から、自分が置かれるに違いない状況と、次の展開イメージに対する多くの選択肢をアタマに描写できているかどうかという表現ですかネ。中田の場合は、ボールをうまくコントロールできるから余裕を持てますしね。まあ、大したものだ。

 いまの中田は、二列目(チャンスメイカー)をやるにしても、以前のように守備意識と実際の守備参加プレーが減退するという心配はまったくありません。それもまた「体感の蓄積」の為せるワザというわけです。

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 中田のゲームがハーフタイプに入ろうかというタイミングで小野の試合にスイッチしました。それは、ちょうどフェイエノールトが二点目のゴールを奪ったタイミングでした(後半14分)。

 でも、小野のプレーにはちょっと違和感が・・。前半の25分間、あれほど素晴らしいプレーを魅せていた小野のパフォーマンスが、ガラリ低落してしまっているのです。攻守にわたるアクティビティーが半減・・ってな感じなのですよ。それに対して、彼の守備的ハーフパートナーであるガリの目立つこと。守備が強いだけではなく、ボールをもってもかなり高質なパフォーマンスを魅せます(チャンスメイクパス能力も高い!)。このゲームで6試合目らしいのですが、もうフェイエノールト中盤のダイナモとして完璧に機能していると感じます。フェイエ復調のリーダーになっている?!

 たぶん小野は、身体に何らかの変調をきたしている・・。ケガか?! それでも小野は、後半30分のゴールを演出してしまうのだから素晴らしい。小野からのスーパースルーパスを受けたスモラレクが、フェイエノールトの三点目をたたき込んだのです。そして小野は、そのゴール演出を置きみやげに交代。やはりケガらしい。心配です。以前も書きましたが、とにかく小野は、ケガを完全に治すことをまず心がけなければ・・。その交代が、彼の古傷の悪化でないことを願うばかりです。

 とにかく小野が、パフォーマンスを発展させつづけていることを明確に認識できて安心していた湯浅でした。これで完調になれば・・。だから彼のケガの具合が気になる・・。

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 さて後半の中田英寿。時間の経過とともに、どんどんとパフォーマンスをアップさせていると感じます。最前線からのチェイシングの勢いだけではなく、パスを受ける動き、そしてボールをもってからのシンプルパスと、個の勝負(タメやドリブル)等々が冴えに冴えているのです。それに伴って、ボローニャの攻めの勢いも加速する。それも、後半になってからのローマの前へのパワーが増大したにもかかわらず・・。ということで、ゲームはかなりエキサイティングな展開になっています。

 それにしても、中田の「クリエイティブなムダ走り」に対する意識の高いこと。こちらは、テレビ画面に映し出される彼の動きを目で追っているいるわけですが、だから、彼のボールのないところでのアクションラディウス(活動半径)の広さ、そのアクションコンテンツの実効レベルの高さが目立ちに目立つのですよ。

 その背景は、攻守にわたる目的を果たそうとする彼の意志の強さなのでしょうね。とにかく、アクションが途切れないことが凄い。存分にサッカーを楽しんでいることが、テレビ画面を通し、1万キロも離れたこちらにも明確に伝わってくるってものです。

 中田のボールキープ力が素晴らしいのは言うまでもないのですが、そこでのプレー内容の実効レベルも素晴らしい。要は、キープはキープでも、それが決してボールのこねくり回し(無為なボールの動きの停滞)につながらないということです。ボールをキープしながらも、常に味方のパスレシーブの動き(フリーランニング)や勝負のドリブル突破を意識している・・だからこそ、彼がボールをキープしているときに、周りもしっかりとパスレシーブの動きをつづけるという善循環が確立するというわけです。

 要は、中田のボールキープが、有機的なプレー連鎖を演出しているということです。無為なボールキープで、有機的プレー連鎖を分断してしまうシーンが多いなかで、本当に特筆の「実効レベル」ではあります。

 あっと・・もちろん、そのボールキープ力の唯一・絶対のベースが、彼の素晴らしいトラッピング能力(ボールをしっかりと止める技術)にあることは言うまでもありません。テクニックの基本は、何といっても、ボールを止め、コントロールすることなのです。

 さて最後に、このゲームの勝負の行方ですが、同点で迎えた後半33分。ターレが見事なヘディングシュートを決め、ボローニャが、12シーズンぶり(?!)でスタディオ・オリンピコ(ローマのホームスタジアム)での勝利を決めました。12試合連続フル出場で、攻守にわたる抜群の運動量も含め、スーパーという表現がふさわしいパフオーマンスを魅せた中田英寿の頑張りが報われたというものです。

 ターレの決勝ゴールですが、その背景には、右サイドでボールを持ったロカテッリの決定的クロスが上がったとき、ズバッとローマゴール前まで進出した中田が相手ディフェンダー二人が引きつけたということもありました。そのことが、ファーポストサイドにいたターレをフリーにしたということです。

 最後に、昨日のナビスコカップレポートの最後に書いた文章を再び載せておくことにします。

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 私は、明日(月曜日)からシンガポール。日本代表のトレーニングで気付いたことがあればレポートします。

 それにしても「赤道直下の暑さ」が心配。アクリマティゼーション(気候順応)の原則からすれば、三日目というのが一番つらい日なのですが・・。忘れもしない、1998年フランスワールドカップへ向けた勝負のイラン戦(ジョホールバル!!)。そこでイランは、国内事情もあって、試合3日前にマレーシア入りしました。そのことを知ったとき、私はほくそ笑んだものです。「これで日本の勝ちだ・・」ってネ。実際イランは、後半に入ってからピタリと足が止まってしまいましたからネ。当時のイランは、もう寒い季節に入っていた・・逆にジョホールバルは赤道直下・・その気温差は、少なくとも20度以上はあった・・そして、その暑さからの疲労感がピークに達する3日目が試合当日だった・・。

 まあ日本代表には優秀なスタッフが揃っているから、そこらへんもしっかりとマネージされているはずですが、でも本当に心配・・。




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