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ヨーロッパの日本人・・ありゃりゃ、中田のゲームが雪でキャンセルだって・・ということで、今週は高原直泰と中村俊輔をショートレポート・・(2004年3月7日、日曜日)

どうもイカンな〜〜。先週の土曜日(2月28日)のブンデスリーガ、ハンブルガーSV対バイヤー・レーバークーゼンを、ケルンのホテルでテレビ観戦していたときのことです。

 この日、本当はハンブルクのAOLアレーナ・スタジアムまで出向いて観戦する予定でした。でも結局は、ホテルでのテレビ観戦ということに・・。前回のレポートでも書いたように、今回のドイツ出張の最後の数日、ガラにもなく、カゼをこじらせてダウンしてしまったのですよ。もちろんそれでも、大事な人々との会談やビジネスミーティングはこなしていましたが、結局、その日にケルンからハンブルクまで(ちょうど400キロ)クルマを飛ばして往復するだけの元気は残されていなかったというわけです。ハンブルク広報部は「お待ちしています・・」ということだったので本当に残念でした。

 このレーバークーゼン戦での高原は、後半からの交代出場ということになりました。それもハンブルクが「3-1」と大量リードを奪った状況でネ。まあ、試合全体が締まりを欠いてしまったのも仕方ない状況だったのですが、その締まりのない雰囲気に高原のパフォーマンスも丸め込まれてしまったのはいただけなかった。相手のレーバークーゼンにしても、絶対に追いつくぞと必死の迫力プレーを転換していたというわけでもなかったから、ハンブルクの選手達が刺激を受ける状態でもなかったわけですが・・。

 それにしても、高原が雰囲気に呑み込まれてしまっていたのはいただけない。私はこれまで、高原のことは、常にポジティブに見てきました(期待を込めて観察していた!)。それは、常に彼のプレーからは、「仕掛けの流れ」に乗ろうとする強い意志が放散されていたからに他なりません。もちろん攻守にわたって・・。

 常に、「オレの足許へパスをつけろ!」と戻り気味に走ってみたり、バルバレスへのタテパスが出された次の瞬間には、バルバレスからのダイレクトパスを強烈に意識した決定的フリーランニングを仕掛けている・・マハダヴィキアが構えた次の瞬間には、誰よりも早くニアポストスペースへ飛び込んでいる・・ボールを持った状況では、少しでも相手ディフェンスのマークが甘ければ、すぐに勝負のドリブルを仕掛けていく・・もちろんボールがないところでの爆発アクションでシュートポジションに入ったり(ラストパスの決定的レシーバー!)、自らドリブルシュートにチャレンジしたり・・はたまた守備では、ボールがないところで忠実なマーキングを「最後」までつづけたり、相手パスを読んだ(限りなくインターセプトに近い)アタックを仕掛けたり・・。そんな、攻守にわたる自分主体の積極プレー姿勢を高く評価していた(大きな期待をもって見つめていた)のですよ。それこそが全てのスタートライン。それがあれば、必ず発展する・・。

 ところが先週のレーバークーゼン戦では、周りの雰囲気に呑まれて(?!)、彼のプレー姿勢が受け身で消極的なものに落ち込んでしまったと感じ、ちょっと落胆していたのですよ(登場して数分後のファーサイドスペースでのダイレクトシュート場面は良かったけれど・・)。私をホテルまで尋ねてくれ、一緒にゲームを観戦した友人も、「タカハラはどうしたんだ・・もっと動いてたくさんボールに触らなければ・・それに、パスミスも多すぎる・・」等々、苦々しい顔で批評をつづけていましたよ。そして私の熱は上がるばかり・・。ちょいと落ち込んでいたレーバークーゼン戦だったのです。

 そんな体たらくでしたからね、今週のローシュトック戦(第23節)を楽しみにしていたことをご理解いただけますよね。現地の知人からも、「もしかしたらタカハラは先発になるかもしれない・・トレーニングでもかなり気合が入っていたという報道だったよ・・」なんていう連絡が入っていましたしね。でも結局は、今週も後半からの出場ということになりました。とはいっても今回は、先週とは状況が「まったく逆」です。アウェーを戦うハンブルクが、「2-0」とリードを奪われていたのです。前半の立ち上がり5分に、タテパスからラッキーに抜け出したローシュトックのメルカムが、ゴール前数メートルから完全フリーシュートを決めたのです(ハンブルク守備陣が味方同士でジャマし合っちゃったりして・・)。追加ゴールは、ハンブルクが攻め上がりつづけていた前半20分に、見事なカウンターから、アルヴィドソンに決められてしまいました。これで「2-0」というわけです。

 この試合のハンブルクは、バルバレスを欠いています。それが殊の外大きかった。そのことでハンブルクが、前線での「仕掛けポイント」を失ってしまったのです。そんなにスピードがあるわけじゃないし、器用な上手さを魅せるわけでもないバルバレスですが、攻撃の目的を達成するための「合目的的なシンプル実効プレーのレベル」は、本当に素晴らしい水準にあるのですよ。

 そしてそんな状況で、後半から高原が登場してきたというわけです。すぐに彼は、前節とは見違えるような「ボールなしのアクション」を見せはじめましたよ。そりゃそうだ・・、先週のような気抜けプレーをしていたら、もう誰も振り向いてもくれない。でも、どうも実効レベルが上がってこないという印象が残るのです。プレーの実効レベルとは、もちろん「シュートいう攻撃の目的を達成する」ために、どのくらい効果的なプレーができているかどうかということです。タテパスを受け、それをしっかりキープしてスペースへ「つなぎパス」を出すという単純なプレーでも、タイミングさえよければ、大きな効果(間接的であれ、自分が効果的に絡んだシュートシーンの演出!)を得ることができるのですよ。

 それが、どうも高原のプレーの一つひとつが、ちょっと「効果が薄すぎる」と感じられるのです。スペースパスを出すにしても、もう一呼吸「タメ」れば、それをワンツーの「ワンのパス」として機能させることだってできるのに・・なんていう惜しいシーンがつづくのです。

 要は、高原のところから仕掛けの流れ(最終勝負の流れ)がスタートするという状況が少なすぎるということです。もちろん仕掛けドリブルにもチャレンジしますが、いかんせん動作がまだミエミエだから、マークする相手にアクションを読まれ、簡単に足を出されて止められてしまうようなシーンもまだ目立ちます。一度、思い切った25メートルの中距離シュートを放ちました。タイミングは素晴らしかったけれど、明らかなイージーボール。そのシュートには、味方を、「惜しい!!」と勇気づけ・元気つけるに十分なパワーは備わっていませんでした。

 2-3週間前の高原は、ボーフム戦、ヴォルフスブルク戦と、つづけて実効ある高質プレーを魅せてくれました。そのときのイメージが強烈だったから、この二試合のパフォーマンスにちょいと落胆したといったところでしょう。とはいっても、「あの強いチーム」を相手にしてあれほど活躍できるのだから、高原の基本キャパの高さ(高い発展の可能性を秘めているという事実)だけは確かなモノです。ほんのチョットしたところなのですよ・・パス出しのタイミングをほんの一瞬タメたり・・ほんの一瞬、勝負ドリブルへの決断を早くしたり、相手を身体で抑えるアクションを強化したり・・。まあ彼が、発展ベクトル上に乗っていることだけは確かな事実だから・・。

 ところで、彼のプレーを「動き過ぎ・・」なんてネガティブ評価する輩がいる。ロメオのように、ゴール前にドシンと構えている方がゴールを挙げられる・・とかネ。それは違う。高原は、常に最前線トップセンターで待ち構えるような(ロメオのような)プレーヤータイプじゃないということです。まあロメオ自身は、非情に古いタイプのゴールゲッターだから、活躍できる「状況」は限られてきますしネ。

 私は、攻守わたって大きく動きつづけながらスペース勝負を志向する高原のプレー姿勢は大正解だと思っているのです。もちろんここにきて、その動き方にしても、要領が良くなっている。要は、クレバーな「ボールがないところでのタメ」もできるようになってきたということです。だからボールを追いすぎることも少なくなったし、スペース入るタイミングが早すぎるというシーンも少なくなった。そんな「小さなコトの積み重ね」が彼を大きなステップアップへと誘うのです。ガンバレ、高原・・。

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 最後に、後半16分に交代出場した(アンコナ対レッジーナ)中村俊輔について。内容が良かったからショートコメント。何が良かったかって?? ボールがないところでの攻守の実効プレー。ホントに実の効果があったのですよ。

 ボールをもってからのプレータイミングや、いつも決定パスをばかりを狙うことで全体的なプレーリズムが遅くなってしまうという悪いクセはまだまだだったけれど、その代わりに、ボールなしの動きが素晴らしかった。3回のスパーなフリーランニング・・。パス出しだけではなく、パスを受けることができなければ、彼の才能レベルでは十分ではない・・。このところ、中村についてそんなことを書いていた湯浅ですから、ちょっとビックリして、目を奪われ、感動に似た感情を味わっていたというわけです。

 レッジーナ最前線へ、ズバッというタテパスが入る・・次の瞬間、二列目から中村俊輔が脇目もふらずに飛び出していくのですよ。もちろん全力で・・。そして、攻撃陣と守備陣を「全員追い越して」決定的スペースまで「走り抜けて」しまう・・。そのフリーランニングは決して「ぬるま湯」ではなく、本格感がプンプンと匂うような、最後まで走り抜ける全力の決定的フリーランニング。それが出てくるようになれば、日本代表での中田英寿とのコンビネーションももう一段階ハイレベルなものになるに違いない・・。

 中村が魅せた(これまでのイメージを払拭するような?!)勢いのあるフリーランニングがあまりにもインプレッシブだったから、「爆発的な創作意欲」に動かされてしまった湯浅でした。

 それにしてもディ・ミケーレ。何度「周りの動きをイメージしろ!!」なんて叫んだことか。そう・・中村が走り込んだときにボールを扱っていたのは、三回ともにディ・ミケーレだったんですよ。

 あっと・・中村の守備。たしかにボールなしの相手フリーランニングを最後まで抑える(しっかりとマークしつづける)のは辛いけれど、ボール絡みディフェンスでは、かなり実高レベルも上がりつつある・・なんてことも感じていた湯浅です。まあ正確に判断するにはプレー時間が短か過ぎたですがネ・・。ということで、こちらも、ガンバレ・・中村俊輔!!




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