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ヨーロッパの日本人・・小野と中田についてショートレポート・・(2004年4月12日、月曜日)

とにかくまず小野伸二から。ホームゲームとはいえ、相手は、現在リーグでダントツトップのアヤックスですからね。強い相手とやったときの、守備的ハーフとしての小野伸二のプレーに興味がつのる・・。

 そして観はじめてすぐに、「彼は大きく発展している・・攻守にわたって、ボール絡みだけではなく、ボールなしでも実効あるプレーが展開できている・・この日のプレーは、ホンモノのボランチとか、ホンモノのセンターハーフなんていう称号を与えてもいいと思えるほど高質だ・・相手がアヤックスだからこそ、そこでの実効プレーは高い価値がある・・」なんていう、ポジティブ評価がつづきました。

 具体的にはこんなイメージ・・。攻守にわたって、とにかく無為な様子見という状態がほとんど見られなくなった・・守備では、最終ラインの前にポジションをとっていた小野が、次の瞬間には、三列目から決定的スペースへ走り抜けるピーナールを、タイミングよいスタートからピタリとマークし、味方の最終ラインを追い越してまでマークしつづける・・味方のセンターバックが上がった状態でアヤックスにカウンターを仕掛けられるが、攻撃の流れに乗れなかったことで次の守備に備えてポジショニングしていた小野は、迷わず最終ラインまで戻ってイブラヒモビッチをタイトにマンマークするだけではなく、最後は競り勝ってボールをクリアする・・等々。小野の守備ですが、とにかく相手のパスに対する予測がしっかりしてきていることで、アタックへのスタートタイミングが大きく好転していると感じます。だからより効果的にボール奪取シーンに絡めるようになっているということです。

 また攻撃でも、センターハーフ(本物のボランチ?!)として後方から組み立てながら、タテへの素晴らしい一発勝負パスやタメからのサイドチェンジパスを繰り出したり、自らがコアになったコンビネーションを仕掛けていったり、はたまた、相手の視野から消え、スッと相手ゴール前の決定的スペースに姿を現したりと、実効あるリスクチャレンジパスが目立ちに目立つ・・。

 フェイエノールトにとっては、全体的なゲーム内容でもチャンスメイクの量と質でもアヤックスに凌駕されていたわけだから、いくらホームといえども、引き分けられたのは成功といえるでしょう。そんなゲーム展開における小野の自信にあふれるプレーコンテンツですからね、観ていて心地よいことこの上なかったというわけです。

 まあ、足が遅いことでマークを振り切られたり(読みベースのマーキングスタートタイミングはよくなっているけれど、でも単純な走りっこに陥ってしまう状況もあった)、守備での勝負イメージがまだまだということで、ボールを持つ相手に振り回されたりといった守備でのネガティブシーンがまだまだ目に付くし、攻撃でも、1点を追いかける状況で、後方ゲームメイカーとして、仕掛けのダイナミズムを高揚させるようなリーディング機能をうまく発揮できなかったなど、課題はありますが・・。

 とにかく私は、守備意識とディフェンス実効度が大きく発展しつづけている小野伸二は、日本代表においては、中田英寿の理想的なバートナーだと思っている湯浅なのです。もちろん前気味ハーフを基本タスクとしてネ!

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 さて、その中田英寿。今節での対戦相手は、既に二部落ちが決まっているアンコーナです。失うものがないホームゲーム・・そして選手たちは、別のチームからのスカウトを期待している者もいれば、チーム内でのサバイバル状況に陥っている者もいるに違いない・・。またまた、サッカーはホンモノの心理ゲームという事実が・・。

 ホームのアンコーナがペースを握るという展開ではじまったこのゲームですが、先制ゴールはボローニャが奪います。久しぶりの中田英寿のゴール。PKでしたが、その落ち着きは、まさに存在感・・といったところでした。

 でもそのゴールが、ハングリーなアンコーナに火をつけてしまった。そこからの彼らの勢いは、まさにレベルを超えていたのですよ。もちろんそれは、中盤守備に如実に現れてくる。後方からの勝負アクションだけではなく、前線からも必死に戻ってアタックを仕掛けてくるのです。常にサンドイッチ状態にさらされてしまうボローニャ攻撃陣。そして徐々に足が止まり気味になってしまう。もちろんそこはセリエだから、どこかの国のように、ボケッと無為な様子見(≒アリバイや言い訳を探す状態?!)になってしまう選手はいないけれど・・。

 そして同点ゴール・・逆転ゴール・・追加ゴールと、気付いたら、アンコーナ演出の「3-1」という大逆転劇にはまりこんでいる・・。その直後に三人を入れ替えたマッツォーネ監督の采配によってターレが追いかけゴールを入れたし、何度か同点ゴールチャンスもあったけれど、結局はアンコーナに逃げ切られてしまった・・というゲームでした。

 この試合での中田は、最初は二列目センターで先発しました。でも前述したように周りの動きが停滞気味だから、攻守にわたってどうしても孤立してしまう・・。そして彼自身の動きからも、徐々にダイナミズムが低減していく(まあ、相手ボールホルダーや次のパスレシーバーへのチェックアクションを見れば、意志レベルの低減が分かる・・)。とはいっても、そんな前半でも、最後はターレのフリーシュートにつながるような素晴らしいチャンスメイクはあったけれどね・・。

 後半、前述したように、3-1とされたところで大幅な選手交代があったわけですが、そのことで中田は、本来のセンターハーフの位置へ・・そして彼の、攻守にわたるプレーの輝度が、再び高まっていく・・。やはり、より積極的なディフェンスが、全てのプレーのダイナミズムを高揚させるものだと反芻していた湯浅でした。もちろん基本的なポジション(基本的な戦術タスク)の効果という側面もあるわけですが・・。

 実際に、ゲームメイカーとして効果的な組み立てを指揮したし、何度も決定的パスを送り込んだだけではなく、チャンスとあれば、後方から素晴らしい勝負ドリブルを仕掛けたりなど、プレーコンテンツも高揚しました。でも最後の15分間は、イケイケのボローニャ選手たちがどんどん上がってしまう状態で、守備ではバランサーとして、攻撃ではゲームメイカーとして後方に残る場面が増えましたけれどネ・・。




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