でもまず、ディフェンスに対する評価から入りましょう。たしかに彼のところでボールを奪い返すというシーンは例によって希だけれど、この試合では、ボールなしのマーキングが、よりクリエイティブに発展していることを感じさせてくれました(まあ、ここのところ全てのゲームで同様のハイパフォーマンスなのですがネ・・)。要は、ここが勝負だというときのマーキングアクションが、最終勝負へ向かう全力ダッシュのスタートタイミングと走るコース、身体のあずけかたも含めた競り合いの実効レベルなど、その安定度が格段に向上しているということです。最終勝負へ向けて、自分がマークすべき相手の意図とアクションを明確にイメージしつづけ、最後の瞬間に(彼の場合は、足が速くないから、少しタイミングは早めに)マークアクションのスタートを切るというわけです。もちろんそこでは、相手のフリーランニングのコース(最終勝負の舞台となる決定的スペース)も正確に予測していなければなりませんが、そんなにところも、余裕で確信をもてていると感じるのですよ。それも、彼の工夫能力(≒インテリジェンス≒学習能力)の賜というわけです。気持ちいいものですよね、ホントに、自らの意志と意欲、そしてインテリジェンスをベースに発展をつづける選手を観察するのは。
そんな実効あるディフェンスをベースに、また、ガリという守備的ハーフパートナーを得たこともあって、攻めへの絡み方が、より積極的に、効果的になっているというわけです。
ここで、先週のコラムの最後に書いた文章を引用します。『とにかく私は、守備意識とディフェンス実効度が大きく発展しつづけている小野伸二は、日本代表においては、中田英寿の理想的なバートナーだと思っている湯浅なのです。もちろん前気味ハーフを基本タスクとしてネ・・』
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さて次は中田英寿。
この試合では、最後まで、ダッラ・ボーナとコンビを組みました。それって初めてだったはずなんですが・・。ダッラ・ボーナは、期待の若手だとは聞いていました。でもずっとケガで戦列を離れていた。だから、この試合で先発に名を連ねているのを見て、「あっそうか、こんな才能あふれる若手もいたんだっけ・・これはゲームが楽しみになった・・」なんてワクワクしたものです。
中田とダッラ・ボーナのコンビですが、最初は、コルッチを中盤の底に置いて、その前の左右にポジション取りました。とはいっても強豪のインテルが相手だから、この三人で守備的ハーフトリオを組んだといった方が正しいかも・・。そして2点をリードされた後半からは、中田とダッラ・ボーナの二人が守備的ハーフコンビを組むことになります(マッツォーネ監督が、コルッチの代わりにフォワードのベッルッチを投入!)。
私は、そんなプロセスを見ながら思っていました。「たしかにダッラ・ボーナの守備は、忠実だし、競り合いにも強そうだけれど、ボールなしのマークや、次のパスレシーバーへの詰めなども甘いかな・・それに、コルッチと違って、猟犬タイプじゃないし、中盤で、中田と一緒に守備的タスクをこなすのには、ちょっと中途半端なタイプっていう印象も否めないな・・」なんてね。もちろんダッラ・ボーナの選手としてのクオリティーについては疑う余地はないのですが・・。
それでも、後半に中田と守備的ハーフコンビを組んでからは、中田がプレーしやすいように気を遣っていました。ボールを奪い返しても、すぐに中田を捜していましたしね。まあ別な見方をすれば、ダッラ・ボーナが実戦で中田とコンビを組んだのは初めてだから、そこで徐々に中田が繰りひろげる実効あるシンプルプレーの凄さを体感し、中田がやりやすいようにとプレーする姿勢になっていったということかもしれません。それほど、この試合でも中田英寿の存在感が輝いていたというわけです。
ボールを持ったときの素早いシンプルパス・・それもリスキーなタテパスをいとも簡単に決めてしまう・・前線も、彼がボールをもったときには、すぐにパスレシーブアクションに入っている・・また、タイミングよいドリブルやタメ等々。中田英寿が繰りひろげるシンプルな実効プレーの凄さは、グラウンド上で一緒にプレーしている仲間たちが、もっとも強烈に体感しているということです。
中田が中盤の王様に君臨するようになったのは、これで何チーム目ですかね。まあ、一つのチームでも、何度か浮沈をくり返すなんていうこともあったから一概には言えないけれど・・。とにかく彼は、「王様」になるたびに、様々な意味を包含するバランスがステップアップしていると思いますよ。それは、本当に凄いことです。
ボローニャで王位に就いた中田。彼の、守備と攻撃、組織プレーと個人勝負プレー等のバランスも、確実に発展したカタチを魅せているというわけです。本当に頼もしい限りじゃありませんか。