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ヨーロッパの日本人・・調子をあげる小野伸二と相変わらずの中村俊輔・・(2004年9月13日、月曜日)

さて、小野伸二。彼のプレーを観ながら、まず、2001-2002年シーズンにおける中田英寿の復活プロセスも含め、8月31日に書いた前回の「小野伸二レポート」を読み返していました。タイトルは「どうも冴えない小野伸二」。たしかにその試合での彼のパフォーマンスは、オリンピック同様、攻守にわたって中途半端でした。

 その後、インド戦で復調を感じさせた小野伸二は、この試合でも増幅したパフォーマンスを魅せてくれました。攻守にわたる勝負所の「すべて」に絡んでいこうとするような活発な動き。まさにグラウンド全面がプレーエリアといった豊富な運動量なのです。基本的なポジションはセンターハーフ。まさに本物のゲームメイカーとして、そのプレー内容は、前節と比べて雲泥ともいえるほど良い出来でした。とにかくボールタッチの回数が雲泥・・そこからの効果的展開パスや勝負パスなどの量と質も雲泥・・ボール絡み&ボールなしの守備参加コンテンツも雲泥・・。まあ、守備が良く、ボールなしの動きも良かったからこそ彼にボールが集まったと分析するのが正解でしょう。

 自身がチェイス&チェックで守備の起点になるだけではなく、常に次のボール奪取勝負を狙いつづけます。もちろん必要とあらば、ボールがないところでのマーキングを「最後の最後まで」つづけるのです。そんなプレー姿勢が仲間の共感を呼ばないわけがない。そして彼にボールが集まりはじめる。そこからのシンプルな展開パスや、タメからの仕掛けパス、はたまた勝負のロングパスなど、見ていて楽しい限りです。

 たしかに、中盤でのボール奪取勝負プレーや攻撃での積極的な個の勝負(タメやドリブルのタイミング良いミックス)といった勝負所での決定的プレー内容、はたまたリーダーシップなどに課題はかかえているけれど、このゲームで魅せた前向きなパフォーマンスからは、彼の次のステップアップが明確に見えてくるというものです。

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 さて、シーズン開幕戦に先発で登場した中村俊輔。プレーペース(プレー内容)は相変わらずでした。全体的な運動量が足りない・・動きにメリハリがない・・全体的にはトントンというリズムの緩慢な動きで足許パスを要求するばかり・・攻守にわたる狙い所での全力ダッシュもない・・この全力ダッシュこそ、次の勝負泥をイメージした意志のほとばしりなのに・・だから、勝負所で、決定的スペースへ走り込むというイメージもまったく感じられず、オレはパサーだ!というプレーに終始してしまう・・フ〜〜ッ・・。

 それでも局面プレーでは、たまに光るモノを魅せてくれます。鋭いボールコントロールで相手アタックをかわし、スムーズに次の仕掛けパスを繰り出す動き・・素早く正確な展開パス・・特に、ツボにはまったときの中距離パスやクロスボールが素晴らしいし、もちろんセットプレーキッカーとしてのパフォーマンスは折り紙つき・・。

 こんなにいいモノを持っている中村俊輔だからこそ、惜しい・・。攻守にわたり、もっともっと積極的に仕事を探せば、今の彼のパフォーマンスが何倍にもふくれ上がること必至なのに・・。もう、本当に何度も、何度も繰り返したことですが、昨年6月のコンフェデレーションズカップでのプレーイメージを反芻して欲しい・・特にフランス戦での攻守にわたる積極プレーを・・。

 伝え聞くところによると、彼は、「ボールがないところでいくら頑張ったって、目立たなければ意味がない・・要は、目立つシーンで(そこへ効率的に入り込んで!)決定的な仕事ができるかどうかが評価されるために問題なのさ・・」という意味のことを言ったとか。たしかに、特に彼が才能タイプの選手ということで、そういう側面もなきにしもあらずということだけれど、それにしては、「才能プレー」のパフォーマンス自体がレベルを超えているわけじゃない。要は、彼はマラドーナではないということ。だからこそ、攻守にわたる、実効ある汗かきプレーも必要になるのですよ。

 一時期は、運動量も、組織プレー貢献度も、どんどんと発展していった中村でしたが、ここにきて、以前のプレーに逆戻りしてしまった感があります。要は、彼の全体的な仕事量の少なさと、効果的な局面プレー(結果)とを、常に天秤に掛けられるタイプの選手に逆戻りしてしまったということです。彼は、誰もが「ヤツは絶対に必要だ」と思うような選手ではないということです。周りにそう確信させられるだけの能力を持ち合わせていながら・・だから本当に惜しい・・。

 選手が発展するためには、様々な「難しいプロセス」を経なければなりません。中村は、攻守にわたる汗かきプレーにも精進することで、本物の良い選手へ向けて発展をつづけていたのに、それに対する我慢がつづかなかった?! もう少しだったのに・・。

 やはり、「才能」は両刃の剣。それこそ、サッカーという本物のチームスポーツが抱える根元的なテーマなのかもしれません。誰かが言っていました。「ペレを歴史に残る選手にしたのは、1割の才能と9割の努力・・」。ものすごく「クサい言葉」だとは思うけれど、その「クサイ」ことを、若い選手たちに大真面目に突き詰めさせることもコーチの重要なタスクの一つなのですよ。だから、才能が本当の意味で開花するかどうかは、良いコーチとの巡り会い(出会い)という偶然ファクターにも拠るという視点もある。フ〜ッ、難しい・・。

 



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