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ヨーロッパの日本人・・今週は小野伸二と中村俊輔・・良かったですよ、二人とも・・(2004年9月20日、月曜日)

まず、この試合でも守備的ハーフに入った小野伸二からいきましょう。効果的な守備の起点プレーやボール奪取勝負プレー、後方からのゲームメイキングや最終勝負へ絡んでいく「影武者フリーランニング」、はたまたタテのポジションチェンジの演出家・・等々、豊富な活動量をベースに、攻守にわたってとにかく好調。だから、前半で退いたことが残念で仕方ありませんでした。それにしても、ケガをしたのがゲームの立ち上がり数分というタイミングだったことを考えれば、その後に前半を通じて魅せたハイパフォーマンスは称賛に値しますよ。

 前節でも書いたように、とにかく攻守にわたり、チームのコアとして抜群の機能性を魅せつづけていた小野伸二。その機能性の素晴らしさは、ボールを奪い返した後、彼を捜してパスを回そうとするチームメイトたちのプレー姿勢からも如実に伺えました。ボールのデバイダー(分配人)小野伸二に対する深い信頼。もちろんその心理ベースは、中盤での実効あるディフェンスというわけです。

 8月29日のフィテッセ戦では、二列目に入ったことで、全てのスタートラインとしての中盤守備が少しおろそかになった・・そしてその影響が、如実に攻撃プレーにも現れていた・・。そのことは8月31日にアップしたコラムに書いたとおりです。守備からゲームに入っていかなかったことの代償は殊の外大きかったということです。そのコラムでは、同じワナにはまったことがある中田英寿の再生プロセスも紹介しました。とにかく守備こそ全ての出発点なのです。

 前半12分あたりの守備プレーで、三列目から走り上がる相手選手を、最後の最後までマークしつづけたシーンがありました。そこでは、小野が相手のパスコースを一つ消したことで「次のボール奪取」も成功しました。このシーンでの小野は、相手のスタートを明確に予測していましたよ。昔だったら「アッ・・」というタイミングでスタートされることで、置き去りにされてしまうのがオチだったのに、いまでは、まさに余裕のボールなしマーキング。見事な汗かきディフェンスでした。だからこそチームメイトから信頼される・・というわけです。

 また実際のボール奪取プレーでも進歩しつづけていると感じます。以前だったら、たしかに効果的なディフェンス参加は魅せていたけれど、どうもそれが実際のボール奪取につながらなかった・・というシーンの方が目立っていたのに、ここにきて、「読み」と勝負アクションがうまくシンクロするようになり、それが実効あるボール奪取につながりはじめていると感じるのです。とにかく、日本代表にとっても頼もしい限りじゃありませんか。

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 さて次は中村俊輔。この試合でも、前節同様にフォワードで先発です。まあフォワードとはいっても、彼の場合は、限りないプレーの自由度を与えられた前線プレイヤー(チャンスメイカー)といったところでしょうか。さて、本物のロベルト・バッジョになれるのか・・。

 前節では、その自由度の高さが逆にネガティブに作用していたという印象の方が強かったわけですが、このゲームでの中村は、徐々にではありますが、その自由度の高さを本当の意味で理解し、活用しはじめたと強く感じました。その意味は、彼の意識が高揚する傾向が見えるということです。例によって、ボールに絡んだプレーでは、まだ勝負パスを意識し過ぎているとは思うけれど(それでもドリブル勝負を積極的に仕掛けたり、そのまま確信のシュートを放ったりという大きなプレー姿勢の変化も見えはじめていた!)、攻守にわたる全般的なプレー姿勢では、その積極性が増幅傾向にあると明確に感じられるようになったのです。

 そんなポジティブな傾向は、全般的な運動量の多さだけではなく、意図が凝縮された(攻守にわたる)全力ダッシュの量と質、また前線でのディフェンス姿勢に如実に現れてくることはいつも書いている通りです。最前線にいながら、チェイス&チェックで守備の起点として機能したり、ボール奪取にチャレンジしたり等、そこでも出来る限りのディフェンスを仕掛けようとする姿勢だけではなく、忠実で爆発的なバス&ムーブなど、仕掛けシーンでのパスレシーバーになるという意識も高まっていると感じられたのです。何度彼が、ボナッツォーリを「追い抜いて」決定的スペースへ抜け出すようなフリーランニングを魅せたことか。私は、ちょっと違和感を感じながら、中村俊輔が魅せつづける意味あるボールなしプレーに釘付けになったものです。

 そんな積極的なプレー姿勢は、自然とチーム内での自分のアイデンティティーを強化するものです。要は、自分自身がチームの目的にしっかりと貢献できていることに対する誇りと自信ということです。それを象徴していたのが、ボナッツォーリが同点ゴールを決めた後のシーンだったのかもしれません。チームメイトがつくる歓喜の輪のなかに、中村俊輔も積極的に入り込んでいたのですよ。このゴールシーンでは、まったく中村は絡んでいなかったにもかかわらず(ボナッツォーリへのラストパスはモザルトから)・・。歓喜の輪のなかで、心からボナッツォーリを祝福する中村俊輔の表情に、彼のチーム内アイデンティティー(誇りと自信)の深化を感じていた湯浅だったのです。

 たしかに、まだまだ全体的なパフォーマンスは上げていかなければならないけれど、とにかくプレー姿勢の上昇傾向は明確に感じ取ることができました。いや、楽しみじゃありませんか。これからまた、「コンフェデ・フランス戦のパフォーマンス」が期待できるのですからね。さて、「中村俊輔というストーリー」が復活してきた・・。

 



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