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ジーコジャパン(49)・・ドイツ代表が本物の発展ベクトル上に乗っていることを体感できたから、日本代表の消化不良サッカーによるフラストレーションも相殺できた・・(日本vsドイツ、0-3)・・(2004年12月16日、木曜日)

先日のトヨタカップ以来、ちょいとご無沙汰してしまいました。小野伸二、中村俊輔、中田英寿のゲームだけではなく、昨日の天皇杯(マリノス対ザ・スパ草津、レッズ対ベルマーレ)もDVDレコーダのハードディスクに録画してあるのですが、如何せん時間が・・。様々なプリントメディア用の原稿書きだけではなく、電波メディアへの出演、ビジネス関連の作業、またプライベートでも様々なことが重なっているため、まだビデオを観られないのですよ。月曜日から、多くの方々が「ヨーロッパの日本人」シリーズや天皇杯レポートを期待して私のHPを訪問してくれているというのに・・。いや、ホント、残念です。ヨーロッパの日本人たちの出来も良かったと聞いているし、レッズでは、長谷部が二列目をうまくこなしていたという報道も目にします。とにかくビデオを観たいのはヤマヤマなのですが・・。

 いまは、このHPレポートと並行して、雑誌ナンバーの原稿も書いています。どちらかが煮詰まったら、もう一つの原稿へ移る・・っちゅう具合。そんなことでは、何時になったら終わるのか・・。とにかく「楽しんで文章が書ける」という状態に至るまで時間がかかるのですよ。

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 さて前置きが長くなってしまいました。HPレポートなのですが、どうもうまく切り出せない。要は、攻守にわたって最高のサッカーを展開したドイツ代表に対し、日本代表のプレー姿勢は最低だった・・ということなんですがネ。

 この試合の二日前、ドイツ代表が来日した日に、監督のユルゲン・クリンズマンと単独インタビューをしました(紹介してくれたギド・ブッフヴァルトに感謝!)。なかなか面白いコンテンツが詰め込まれていたのですが、そのインタビューをベースにした記事は再来週のサッカーマガジンに載ります。またその後に、インタビューコンテンツの全てを網羅したコラムを、「ザ・対談シリーズ」で当HPに掲載する予定です。ご期待アレ。

 そのインタビューのなかで、クリンズマンが、こんなことを言っていました。「ドイツのサッカーでは、前にスペースがあれば、誰でも、どこからでもオーバーラップしていく・・それでも、高い守備意識をベースに、次の守備で前後のバランスが崩れることはない・・現役当時のギド・ブッフヴァルトは、味方や自分がボールを奪い返したら、まず自分が率先して前線へ飛びだして行ったものだ・・そんなダイナミックなサッカーがドイツの特徴なんだ・・我々は、決してリアクションサッカーに陥ることはない・・自分たちからアクションを起こし、全力で仕掛けていくことで、相手の心理状態を抑制し、リアクションサッカーに陥れてしまうんだよ・・そんなプレー姿勢が我々のダイナミズムの源泉だ・・今回の遠征では若手も多く連れてきた・・このチームでは、フェアな競争がコンセプトだから、若手もベテランも大きくモティベートされている・・日本との試合では、最初からガンガン行くゼ・・」。

 そして、まさにその言葉通りの展開になったというわけです。チャンスとなったら誰でも最前線まで押し上げていく・・。最初のシュートを放ったのが、味方トップ選手を追い越してまで決定的スペースへ入り込んだ守備的ハーフのエルンストだったという事実も、そんな彼らのプレー姿勢を象徴していましたよネ。前半ドイツが放ったシュートは、3本の100%チャンスも含めて計7本。対する日本は、小笠原が放ったアバウトな枠外シュート一本だけですからネ。

 ドイツのゴールは時間の問題・・。誰もがそう思っていた後半9分に、セットプレーのこぼれ球をミロスラフ・クローゼが先制ゴールを奪いました。そしてその後からですよ、日本がやっと吹っ切れたプレーを展開できるようになったのは。最初から積極的にいけば、ある程度のサッカーができたはずなのに・・。彼らの消極的な受け身サッカーは試合前の意識付け内容が原因だった?! まあ、そういうことでしょう。

 人間は誰しもが安全・安心を希求します。試合に臨むときの意識が、慎重に、安全にということで統一されたら、もちろんグラウンド上でのプレー内容は、その何倍も、慎重で安全なものに落ち込んでしまうのも道理なのですよ。いやホント、見てられなかった。

 ドイツの素晴らしい攻撃サッカーですが、もちろんその絶対的ベースはディフェンスにありなのですよ。言うまでもなくネ・・。相手ボールホルダー(次のパスレシーバー)に対する忠実でパワフルなチェイス&チェックアクションを守備の起点に、次、その次と、どんどんと迫力の「囲い込み」を実践しつづけるドイツ代表。いや、その迫力たるや、まさに世界。ユルゲン・クリンズマンは、世代交代・チームの体質改善、フェアな競争環境の整備などなど、とにかく確実にチームの雰囲気を活性化していると感じます。

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 ちょっとアタマがモウロウとしてきたのですが、メモしたテーマを全て網羅できないまでも、もう一つだけ、大事なポイントを書き記しておくことにします。それは、仕掛けの流れに入ったときの「方向」。

 ドイツは、とにかくタテへ・・とにかくシュートできるところへ・・と、失敗を恐れずに常にチャレンジしていく意志を前面押し出していました。リスキーなタテへのドリブルや、リスキーなタテパスのオンパレードというわけです。周りも、そんな「仕掛けプレー」を明確に予想できるから、しっかりとしたタイミングでフリーランニングをスタートできるし、味方のドリブル突破をサポートするような動きにもタイミング良く入ることができる。それは、それは大迫力の仕掛けコンテンツなのです。

 それに対して日本。安全・確実志向なんでしょうね。ポゼッションですか・・。とにかく不必要な安全パスが多すぎると感じます。サッカーはミスの積み重ねなんですよ。ミスを恐れたり、ミスをやらないようにしようとした次の瞬間には、サッカー内容が地に落ちてしまう。フットボールネーションでは、それを「アリバイプレー」と呼ぶのです。だからこそ、指揮官の姿勢が殊の外大事になってくるというわけです。

 これはフレンドリーマッチなのですよ。だから、W杯の予選マッチのような戦術イメージ先行のサッカーではなく、もっと吹っ切れた仕掛けがあってもいいじゃありませんか(その意思統一こそが、心理マネージャーとしての監督の仕事!)。相手は強く、ガンガン前へ仕掛けてくるのだから、あんな慎重プレー姿勢だったら、何も得ることはできないのは目に見えていたハズ。そして残るのは、消化不良のフラストレーションばかり。書いているこちらも同様というわけです。

 まあ私は、第二の故郷であるドイツの代表チームが本物の復活ベクトル上にあることを再認識できたというポジティブなマインドがあるから、それでフラストレーションを相殺することができるわけですがネ・・。

 



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