トピックス


ジーコジャパン(39)アジアカップ・・勝つには勝ったけれど・・(日本vsオマーン、1-0)・・(2004年7月20日、火曜日)

「自由にイマジネーションを発揮して欲しい・・」

 大会前、ジーコがそんなことを言っていたということです。まあ、チェコ戦やイングランド戦、はたまたセルビア・モンテネグロ戦など、このところ日本代表は、フレンドリーマッチで「結果」だけは残しているから、その自信が背景にあるということなんでしょう。しっかりとボールをキープし(例の、両刃の剣のポゼッション!)、チャンスを見計らったイマジネーションプレーで仕掛けていくってな戦術イメージ。ところで、自由にイマジネーションを発揮するって、一体・・??

 要は、確実にボールをキープしながらチャンスをうかがい、イマジネーション(想像力)を発揮して相手守備ブロックの「ウラ」を突き、シュートチャンスを演出していこうということでしょう。でもそれって、周りの選手たちによる、ボールがないところでの汗かきプレーがキーポイントなりますよね。何せ、単独ドリブル勝負やタメ&勝負パスなど「個の能力」では限界がある日本代表のことですから・・。そこでは、パスレシーブの動き(クリエイティブなムダ走り・・積極フリーランニング)だけではなく、味方にスペースを作るクリエイティブな動きや、コンビネーションの流れに乗った二人目、三人目の動きが決定的に重要になってくるということです。

 もちろんジーコにとっては、そんな汗かきプレーも、自由イメージの構成ファクター(要素)なのだろうけれど・・。たしかに、相手のチカラがかなり劣っていたり、(チェコやイングランドのように)相手が強いことでチームのチャレンジ精神が自動的に高揚するようなゲームの場合、ボールがないところでの汗かきプレーも積極的に回りつづけるケースが多くはなってきました。とはいっても、この試合のように、攻守にわたって相手にペースを握られてしまったときに、押し返すパワーを充填することがままならないというのも確かなこと。そんな状況でこそ「自由な解放パワー」が発揮されなければならないのに・・。それは、自由に(=自分主体で)厳しい義務プレーにチャレンジしていけるかどうかという、ギリギリの勝負において決定的に重要になってくるポイントのことです。それが、まだまだ明確に見えてこない・・。

 だからこそ心配なんですよ。ホンモノの勝負マッチにおいて、サッカー内容が沈滞してしまっている状況から、自らを鼓舞し、プレーリズムを「最終勝負ペース」へ高揚させられるのかどうかというポイントでね・・。

 皆さんが見られた通り、この試合での日本代表のプレーは低迷の極みでした。その元凶は、ディフェンスのダイナミズムがまったく高揚しなかったことでした。チェイス&チェックもおざなりだし、次のボール奪取イメージにしてもまったく鋭さが出てこない。特に、前方から戻りながら競り合いに参加した選手が、肝心の勝負場面で簡単に諦めて置き去りにされてしまう安易なディフェンスは大きな問題。そんなアリバイ守備が横行するから、守備ブロック全体の機能性が損なわれてしまうのですよ。そして守備が機能しないことで、次の攻撃に勢いを乗せることができない。

 このようなアナタ任せの消極&受け身プレーは、「自由の弊害」と言い表すしかない?? まあこの試合では、選手たちが、攻守わたってリスクを負うこと、また積極的に汗かきプレーにチャレンジすること(=組織的な義務プレー)に消極的だったのはたしかな事実でしたからね。「やらなければ・・行かなければ・・」ミスをすることもないというのがサッカーの基本メカニズムということです。

 この試合でのオマーンは、守備だけではなく、攻撃での人とボールの鋭い動き(プレーの戦術的な意図のレベル)でも、完全に日本を凌駕していました。流石にマチャラ。私はそこに、チェコ伝統のウルチカパス(小径を通すパス)のマインドを見ていました。たしかにシュートは下手クソだったけれど、でも彼らは、日本を相手にしても、キッチリとシュートチャンスを作り出すだけのチカラがあることを証明しました。「次」は彼らのホームでのギリギリの勝負マッチですからね。一人の例外もなく、攻守にわたって全力の汗かきプレーをつづけることが、ドイツワールドカップへの一次予選を通過するための必須条件というわけです。

 「ホンモノの勝負マッチ」になったときに重要になってくるのは、ギリギリの緊張感によって自らの心の奥底から突き上げてくるような「闘う意志」。それこそが、互いに使い、使われるメカニズム(=チーム組織プレー)に対する深い理解をベースに、「攻守にわたって自ら仕事を探しつづける」というプレー姿勢の源泉なのです。この試合は、選手たちに、その「事実」を骨身にしみるくらい明確に再認識させてくれたはず。その意味でも意義深い「低迷マッチ」だったと思っている湯浅です。

 次のタイ戦ではどんな「プレー姿勢」をみせてくれるのだろうか・・。自分たちが最低のプレーをしたことは選手たち自身が一番よく分かっているはずですからね。注目しましょう。

 



[ トップページ ] [ Jワンポイント ] [湯浅健二です。 ]
[ Jデータベース ] [トピックス(New)] [ 海外情報 ]