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ジーコジャパン(37)・・見るべき内容が希薄だった日本代表・・また中村俊輔メモも・・(日本vsスロバキア、3-1)・・(2004年7月9日、金曜日)

それにしても中村俊輔のスルーパスはタイミング良く決まったな・・何せ、その1分前に同点ゴールをたたき込まれたばかりだったんだから・・。そして後半35分に飛び出した柳沢の粘りゴールによって「3-1」という日本の勝利。まあ、内容からすれば順当なゴール数の分配ということになったよな・・なんてね。

 チーム総合力は、明らかにホーム日本が上。全体的にゲームを押し気味に進めているのもホームの日本。でも、守りを固めるスロバキア守備ブロックを振り回したり崩し切るなんていう最終勝負シーンを演出することはままならない・・例によって・・。

 たしかに後半は、より中盤守備がアクティブになり、(それによって!)ボールがないところでのアクションも活性化してきたことで仕掛けの量と質が上がっていきました。それでも、相手の総合力を考えれば、どうも不満ばかりが先行してしまう・・。

 もちろんそれは、最終勝負ゾーンでフリーでボールを持つ「仕掛けの起点」を演出できないからに他なりません。ドリブルで相手を抜き去っても、フリーでスペースへ走り込んだ味方へのタテパスが通っても仕掛け起点を作り出せます。でも、相手を抜き切るようなドリブルが出てくるわけじゃないし(アレックスや玉田は、たまに鋭い切れ味のドリブル勝負を魅せてはいたけれど・・)、またパスコンビネーションが冴えわたるわけでもないから、起点を演出できないのも仕方ない・・。

 この試合では、もちろん、「人数をかけて固めるスロバキア守備ブロックを、いかに崩していくのか・・」というのがテーマ。もちろんパスコンビネーションを主体にして。でも結局は、相手の厳しいマークを簡単に外せないことで、ボールがないところでの動きが停滞し、それによってボールの動きも鈍重になっていく・・。まあ、高い位置でボールを奪い返し、それがタイミング良く中村俊輔にわたったときにはチャンスの雰囲気が出てきますけれどね。

 とにかく、試合を通じて、パスコンビネーションで相手守備ブロックを切り崩したというシーンが前半の一本だけだったというのは寂しい限りでした。この決定機のキッカケになったのは、アレックスによる相手三人を引きつけるドリブルでの突っかけ。そこから、相手最終ラインに入り込んだ玉田へタテパスが通る・・その左側ゾーンでは、そのパスが出される直前のタイミングで、福西が決定的スペースへ飛び出していた・・そこへ玉田からのダイレクトパスが見事に決まる・・フリーで抜け出した福西は、迷わず、ゴール前スペースへ入り込んだ鈴木へラストパス(マイナス気味のラストパス)を通した・・ってな見事なコンビネーション。本当に見事でした。でも結局、相手のウラを突いた明確なチャンスメイクはそれだけということになってしまって・・。

 そんな拙攻をみせられつづけ、思わず「誰でもいいから、パス&ムーブで相手守備ブロックのウラへ走り抜けろよ! ムダ走りがなければチャンスなんて作り出せっこないぞ!!」なんて声が出たりして・・。とにかく、パスをした後に勝負の全力ダッシュをスタートする者がいない・・ターゲットになるタテのスペースを意識して(そこへの全力ダッシュをイメージして)ボールをキープする者がいない・・のですよ。これでは、スロバキア守備ブロックのバランスを崩すコトなんて出きっこない。なにせ相手は、日本の仕掛けを「常に」自分の視野の範囲で捉え、イージーに次の守備イメージを構築できるのですからね。

 タイミングを見計らい、決定的スペースを狙ってスピードアップするぞ・・でもチャンスが訪れるまでは、しっかりとボールをキープしよう(ボールポゼッション)・・ってなプレーイメージなんでしょう。いつも言っているように、誰かがクリエイティブな無駄走り(≒味方に対するポジティブな刺激)をスタートしないことには、選手たちの「マインド」は重く湿ったままなんですよ。「出よ! 刺激プレー!!」

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 ところで中村俊輔。このゲームは「全体的な動き」は少ないだろうと思っていたから、とにかく彼のことも中心的に観察しようと目を凝らしていた湯浅だったのです。

 そしてこんなことを思っていました。たしかに、中村のボールコントロールとスルーパス感覚には目を見張らされるモノがある・・彼がボールを持ったときには(持ちそうになった状況では)最前線の鈴木や玉田が早めにフリーランニングをスタートするのも特筆・・それは、中村のパス能力の高さに対する信頼そのもの・・数本しか通らなかったけれど、それは大きな武器だよな・・でも、シュートをするという攻撃の目的とボールを奪い返すという守備の目的をベースにした「実質的な貢献度」という評価基準での「総合・効果ポイント」ではどうだろうか・・要は、中村俊輔のプレーにおける(チームにとっての)プラスとマイナスを相殺したポイントということだけれど・・彼にはパサーとしてのプレーイメージしかない・・特に日本のミッドフィールダーは「すべてのタスク」をバランスよくこなさなければならなのに・・互いに使い、使われるという相互メカニズムに対する理解こそが重要なのに・・フム、フム・・

 ・・前半の中村は、ほとんど消えていたから見るべきシーンはなかったけれど、福西の見事なヘディングゴールを引き出したコーナーキックは素晴らしかった・・それでも後半になって徐々にプレーのダイナミズムが高揚していった・・シンプルプレーを基盤にしたボールなしの動きも徐々に活性化したし、勝ち越しゴールを決めた鈴木への見事なスルーパス(鈴木の鋭い動き出しにも拍手!)を筆頭に、正確なサイドチェンジパスも決まりはじめた・・でもやっぱり、「攻守の目的を達成するための、攻守にわたる実効プレー」の量と質というポイントで全体的には不満の方が先に立ってしまう・・そのことを、どのように表現したらいいだろうか・・

 ・・とにかく彼には、特にチームの全体的なプレーの流れが沈滞しているときに、チームのダイナミズムを高揚させられるような「刺激プレー」を期待できないことが大きい・・これまでの勝負マッチにおけるプレー内容が如実に示しているように、「ギリギリまで闘い通す」というポイントで十分な信頼を置けないことの意味は重大・・彼の場合は、チームが沈滞しはじめてしまったら、そのネガティブな消極プレーに「紛れ込んで」しまうというイメージの方が先に見えてきてしまう・・沈滞した雰囲気のなかで、チーム全体を鼓舞するような積極的なモティベートアクションを起こしたり(声を出したり)、守備において爆発チェイス&チェックプレーや爆発タックルを仕掛けたり、ボールがないところで全力ダッシュ・パスレシーブプレーを仕掛けたり・・なんていう「刺激エネルギー」を発散するプレーを十分に期待できない・・とにかく彼には、2003コンフェデレーションズカップ、対フランス戦でのパフォーマンスをもう一度イメージに刻み込んで欲しい・・来週火曜日のセルビア・モンテネグロ戦が楽しみ・・

 



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