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ジーコジャパン(46)・・例によって、ゲームを「順当な勝利」という流れにするまでに苦しみ抜いた日本代表・・(インドvs日本、0-4)・・(2004年9月8日、水曜日)

「小野〜〜っ、もっと積極的にサイドからの仕掛けをリードしろ!!」。そんなことを心のなかで叫びつづけていました。何せクロスでは、確実に日本の方が有利だし、選手たちもそのことを体感しているはずなのに、どうもうまく最終勝負を仕掛けていくイメージが共有されていない・・だからこそ、チームメイト達の仕掛けイメージを引っ張る中盤での強力なリーダーシップが必要なのに・・。

 本山という、タテへ強い積極的な「仕掛け人」を先発させたのだから、攻守にわたる中盤リーダーは、もう小野しかいない・・オリンピックでの彼は、完全に消化不良だったから、汚名返上の大チャンスではないか・・なんて思っていたというわけです。

 また、そんな小野に対する期待(要求)の背景には、小笠原がベンチスタートだったこともあります。才能には十分すぎるほど恵まれているのに、攻守にわたって積極的に仕事を探し、それをどんどん実行していく(考える前に身体が動く!)というプレー姿勢に課題を抱えていることで(無為な様子見があまりにも目立ちすぎることで)発展プロセスが完全に停滞している小笠原・・。

 ところで、この「小笠原のベンチスタート」という判断に、ジーコの評価基準における「変化の兆し」が感じられる?! その評価基準に、やっと、攻守にわたるボールがないところでのプレーダイナミズム(もちろんその絶対的ベースは守備意識!)も含まれるようになったのかな(?!)なんていう期待が膨らんでしまったりして・・。

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 日本は、立ち上がりから何本か決定的チャンスを作り出しました。その全てが、セットプレーとサイド攻撃ベース(クロスからのヘディング)。だからこそ選手たちに対して(特に小野に対して)、そのチャンスの匂いをしっかりと感じ取り、仕掛け内容を「そちら」へシフトさせなければと思っていたわけです。にもかかわらず、またトレーニングでクロスという仕掛けイメージをシンクロさせていたはずだったのに、いざゲームとなったら仕掛けイメージが散漫になってしまう日本代表。

 それにしても流れのなかでの日本代表の攻めは稚拙でした。インドが守備を強化してくることは分かり切っていたはずです。要は、ボールホルダー(次のパスレシーバー)が完璧にマークされているだけではなく、その後ろのスペースも、しっかりとカバーされているということ。強化ディフェンスをどのように破っていくのかというテーマは、永遠のディスカッションですが、だからこそ「仕掛けに対する事前のイメージ構築」がものすごく重要になるのですよ。

 それでも、タテパスが入ったときに、そのポイントに対するサポートの動きが「薄い」・・これでは「そこ」で潰されてしまうシーンが目立つのも道理・・インド守備ブロック選手たちのディフェンスプレーイメージを「振り回す」ことができず、単発の攻めをくり返す日本代表という体たらく・・とにかく、中距離シュートをバンバン打ったり、アーリークロスも含め、意識的にクロスボールを多用したり等々、仕掛けに変化をつけなければならないのに・・。

 それでも日本は、苦しみながらも「2-0」まで持っていくことができました。その背景に、最後まで苦しい戦いがつづいたアジアカップで培った「粘りマインド」があったということかもしれません。そして、やっと「何かから」解放され、本来の日本らしい動きのある組織的な仕掛けが機能するようになっていきます。もちろんそれには、インドが攻め上がったことで守備ブロックを「開いた」ということもあったわけですが・・。

 そして高原に代わって入った久保の活躍もあって、素晴らしい三点目が入ります。それは、この試合でのベストゴール。どんどんと攻め上がってくる日本の後方選手たち・・そしてそのオーバーラップをうまく活用する前線選手たち・・。素晴らしい組織的な仕掛けだったというわけです。しっかりとしたタメから、オーバーラップしてきたアレックスの眼前スペースへボールを「置く」久保・・逆サイドスペースには福西が攻め上がっている・・そこへアレックスから、「一山越えるクロス」が美しい糸を引いていった・・。

 ところで久保と交代した高原直泰。この試合でのプレー姿勢を見て、彼のことが心配になりました。攻守にわたって、自分から仕掛けていく!という強い意志が感じられなかったのですよ。自分が欲しいカタチでパスが来ないからフラストレーションがたまっていったということなんだろうけれど、そんなネガティブマインドが守備のプレー姿勢にも悪影響を及ぼしてしまって・・。

 一度こんなシーンを目撃しました。ロングボール(クリアボール)が最前線に出る・・高原が競り合い、ボールを持つ相手ディフェンダーにプレスを掛けたけれど、結局パスを通されてしまう・・ただ、その次のパスレシーバーへ、後方から爆発的に押し上げてきた鈴木隆行がプレッシャーをかけた・・その状況で相手のインド選手のパスコースは一つだけ・・高原がパスをカットできるビッグチャンス!・・でも高原は、最初のアタックで外されたポイントで足を止めて様子見に入ってしまっていたから、結局そのパスを通されてしまった・・そのとき、長い距離を走ってプレスを掛けた鈴木が「エ〜〜ッ! そりゃないよ・・。オレのファウンデーション(汗かき守備プレー)をどうしてくれるんだよ!」と、大きく手を広げて不満のジェスチャーをしていた・・その怒りはよく分かる・・だからジーコが高原を引っ込めた判断もよく理解できる・・。ちょっと高原のプレー姿勢が心配になっていた湯浅だったのです。ところで、鈴木の不満のジェスチャー。まさに、今の日本代表に欠けているプレー姿勢じゃありませんか・・。

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 結局「4-0」というまあまあの結果を残すことができた日本代表。とはいっても、インドが敷いた強化守備ブロックを崩すだけの攻撃の変化を演出できなかったことも含め、どうも自分たちの持てるチカラを出し切るダイナミックサッカーを展開したとは言い難い。チャンスを見計らって相手のスキを素早く突いていくクレバーなポゼッションサッカー?! そんなモノ、まだまだ10年早い。

 それにしても、いくら気候的に厳しいとはいえ、選手とボールに動きのあるダイナミックサッカーとはかけ離れた内容が気になる・・。この試合では、2-0になってから、やっと(宮本や中澤も含めた)後方からの追い越しが目立つようになってきたけれど(ボールがないところでの動きをベースにした仕掛けの変化の演出!)、そんなリスクチャレンジプレー(姿勢)を、不安な時間帯(ゲームの立ち上がり)から勇気をもって繰り出していくことで自分たち主体でゲームのペースをアップさせられるようにならなければ、注意深く慎重な立ち上がりという「受け身で消極的な心理セット」のワナにはまってしまうだけだし、それでは決して発展など望めない・・。

 与えられた自由が逆に心理的な規制として機能してしまう気質?! さて・・。

 



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