トピックス


帰国報告と、久保竜彦について・・(2004年5月10日、月曜日)

どうも皆さん、本日帰国しました。ちょっとヨーロッパでの所用が重なってしまったために、連休中のJリーグ「3節分」をミスってしまった・・。ちょっと残念ですが、これもサッカー探求のレベルを深めるためだから(機会をみて、深まったコンテンツを発表しますので)・・。

 本日の午後に成田着だったのですが、早々に購入したスポーツ新聞に「久保がヒザを損傷か・・」という記事が載っていました。もし損傷の内容が半月板だとしたら、ちょっと心配。手術するかどうかも含めて、微妙な判断力が要求されますからね。まあ手術するにしても、いまは内視鏡オペが主流だから、半月板を摘出しても3-4週間でプレーできるようになるはずです(手術の翌日からトレーニング開始!)。もちろん損傷の内容に対する正確な判断によりますけれどネ。

 とにかく帰国早々から本物ブレイクを果たしつつある久保竜彦のことが気になって仕方なくなった湯浅だったのです。彼については、チェコ戦の後、サッカーマガジン(先週号)でこんな文章を発表しました・・。

==============

 「よし、やっとこれで日本代表のトップに仕掛けのコアができた・・」。ヨーロッパ遠征のハイライトになったチェコ戦。その内容と、W杯予選オープニングマッチのオマーン戦後半のコンテンツを重ね合わせながら、そんなことを思っていた。久保竜彦・・。

 オマーン戦では、完全に抑え込まれていた日本代表の攻撃が、後半からピッチに立った久保の活躍によって明らかに活性化した。チーム全員が、ヘディング勝負という明快な仕掛けイメージを描けるようになったのだ。またチェコ戦では、ヘディングだけではなく、パスを呼び込む勢いがある決定的スペースへの飛び出し、そしてドリブル勝負でも、巧みさと強さをしっかりとアピールした。まさに、最前線のコアと呼ぶにふさわしい存在感だった。

 日本は、「攻め手」という視点でもまだまだ世界の二流だ。世界に抗して、ドリブル突破で「常に」大きな可能性を感じさせてくれる選手はないに等しい。「J」時代はドリブルに威力を発揮していた高原にしても、クレバーで速く、競り合いにも強い本場のディフェンダーを相手にしているうちに、吹っ切れたドリブル勝負へのチャレンジマインドが減退していったと感じる。「個の能力」では世界に後れをとっている日本。やはり、人数をかけた組織パスプレーで崩していくのが現実的な選択肢なのだ。

 とはいってもこれまでの日本代表は、選手個々の仕掛けプレーがチグハグになることが多かった。それは、彼らの確信レベルを高揚させられるだけの「組織的な攻め手」のイメージを欠いていたからだろう。それは、自由すぎることの弊害と言えるかもしれない。コンビネーションやスルーパスで崩していこうにも、パス&ムーブやタテスペースへのオーバーラップ等、ボールがないところでのアクションがうまく連鎖しない・・クロスにしても、中央で待つ味方とのイメージがシンクロしないからターゲットを絞り込めない・・一発ロングパスで勝負を仕掛けようにも、最前線が飛び出していかない・・。

 そんな閉塞した現状を打開できるだけの輝きを放ちはじめたのは「国内組」の久保竜彦だった。これまでは(数日前のハンガリー戦でもそうだったが・・)代表チーム内の雰囲気に押し流されてパフォーマンスが波打っていた久保。しかし徐々に、自己主張プレーでチームの雰囲気を引っ張っていけるようになった。そして、オマーン戦、チェコ戦で、仕掛けのコアとして本物のブレイクスルーを果たすことになるのである。それは、「攻め手イメージ」に対するチームの確信レベルを高揚させる有意義な機会でもあった。オマーン戦の後半に作り出したチャンスのほとんどは、彼のヘディングからだった。直接シュート。ヘディング競り合いからのセカンドボールを狙うアクション。またチェコ戦では、アタマだけではなく、決定的スペースへの爆発ダッシュ、ドリブル勝負などでも、チームメイトたちに「攻め手」を強烈にアピールした。そんなコアなプレーが、ツートップパートナーの実効レベルを引き上げもした。

 もちろん久保のアタマを狙った放り込みや、彼の決定的スペースへの飛び出しをイメージした一発ロングパスばかりが先行してしまっては、相手が守りやすくなってしまうから本末転倒だが、それを攻撃の変化ツールだとバランスよく意識すれば、その実効レベルが高いだけに強力な武器になる。実際オマーン戦では、久保のアタマを警戒するあまり、オマーンの守備ブロックがバランスを崩してしまったし、チェコ戦でも、周りの日本選手たちに、久保をオトリにして、組織コンビネーションやスルーパス、はたまたドリブルで仕掛けていこうとする意志が感じられた。

 W杯の地域予選は、肉を切らせて骨を断つ闘いの場。だからこそ、チーム全員が共通してイメージできる「実効ある攻め手」を、より深化させなければならない。久保竜彦という「攻め手」。それは、ワンチャンスで勝負を決めてしまえるだけの優れた武器であり、チームの確信レベルを高揚させ、リスクチャレンジマインドを活性化するモティベーション素材でもある。(了)

==============

 今週は、水曜日にマリノス対エスパルス戦があります(延期ゲーム)。もちろんしっかりとレポートするつもりです。また、私が興味をひかれている「J」の主だったゲームについては、ビデオを録ってもらっていますから、少なくとも「発展や停滞などのプロセス」だけは確認できるはずです。




[ トップページ ] [ Jワンポイント ] [湯浅健二です。 ]
[ Jデータベース ] [トピックス(New)] [ 海外情報 ]