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女子日本代表・・素晴らしいサッカーコンテンツを魅せてくれた女子日本代表・・(日本対ベトナム、7-0)・・(2004年4月18日、日曜日)

まず、理想的な内容と結果で勝負トーナメントに入っていった日本女子代表についてショートコメント。

 本当によくトレーニングされたチームだ・・。相手(ベトナム)との実力差があったとはいえ、その組織ディフェンスの底流にある発想ベースはハイレベルだし、攻撃でも、ボールがないところでの爆発アクションなど、仕掛けのイメージが高質にシンクロした最終勝負は見所豊富でした。また、組織パスプレーと個のドリブル勝負も、高質なバランスを魅せていましたよ。上田栄治監督は、本当によい仕事をしている・・。

 立ち上がりの組織ディフェンスでは、積極プレーのオンパレード。相手ボールホルダー(次のパスレシーバー)に対するタイトなチェック(守備の起点)をベースに、周りのアクションが有機的に連鎖しつづけるのです。まあ試合後に上田監督が「中盤からのプレス守備がまだまだ・・」と述べていましたが、たしかに緊張感は、試合の経過とともにちょっと低落傾向にありましたね。とはいっても、立ち上がりの時間帯では、彼女たちの優れたディフェンスイメージと、それを実行していこうとする積極姿勢がアリアリと見えていたのです。そんなところに頼もしさを感じたものです。あれほどの意識の高さと意志の強さを見せつけられたわけですからね、その後、どんどんゲームに惹き込まれていくのも当然の成りゆきでした。相手が実力の劣るベトナムとはいえ、攻守にわたる高質な日本選手たちのプレーイメージは心地良いし、わたし自身にとっても素晴らしい学習機会になる・・。

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 オリンピック地域予選というギリギリの勝負だから、もちろんセットプレーも重要な「勝負ファクター」です。前半2分に陥れた日本の先制ゴールの場面に、上田栄治監督の、「現実的」な仕事内容を感じていました。それは、コーナーキックからのゴール。ニアポストスペースへ入り込んだ味方選手へピタリと合わされる鋭いボールが飛び、そこで、ピンッ!と「流された」ボールを、宮本選手が、確実なキックモーションで、ダイレクトシュートを決めたという先制ゴールでしたが、そこでの一連のプレーは、そのトレーニングを(高い意識で!)何度も繰り返した結果だったに違いありません。とにかく素晴らしい先制ゴールでした。

 自らの闘う姿勢をもって素晴らしいリーダーシップを発揮するキャプテンの澤穂希、実効ある中盤での汗かきプレーに徹する守備的ハーフコンビの酒井與惠と宮本ともみ、右サイドから、まさにカフーというオーバーラップ&ドリブルチャレンジを魅せつづける突貫レディー川上直子、その逆サイドでテクニカルな勝負プレーを披露する山本絵美、ところ狭しと動きまわりながら勝負所ではスッとタイミングよく顔を出す忍者プレーの大谷未央、センタートップのターゲットレディー荒川恵理子などなど、とにかく全員が、持てるチカラを存分に発揮していました(守備ブロックもセキュアなプレーを展開していました・・24日におこなわれる本物の勝負マッチでは、彼らも自分のイメージを超越したプレーを魅せて欲しい!)。彼ら以外にも、後半から出場した、最前線を切り裂く孤高のドリブラー丸山桂里奈や、中盤の底からのドリブル仕掛け人、小林弥生も、素晴らしい選手たちです。

 彼女たちが、持てるチカラを存分に発揮できた背景には、もちろん、前半2分という早いタイミングに奪った先制ゴールがありました(心理・精神的に解放された!)。だからこそ、セットプレーの実効レベルを、選手たちの自信と確信のレベルを増幅させられるまでに高めておくことが大事なのです。非定型のサッカーでは、セットプレーは、唯一「計画できる」プレー。だから逆に、流れのなかでのゴールには、ある意味「みずもの」という意味合い付いて回るのです(誤解を恐れずに書けばのハナシですが・・)。

 セットプレーで確実にゴールへ近づいていけるという確信を選手たちがもっていることが重要なファクターになる・・そしてそれが、攻守にわたるリスクチャレンジプレーの原動力としての選手たちの心理・精神パワーを引き上げる・・。このチームは、その視点でも、理想と現実がうまくバランスしている・・。

 とはいっても、そこは何が起きるか分からない本物の心理ゲームであるサッカー。24日の「決戦」の相手は、強豪の北朝鮮になりそうだということですが(残念ながら、そのとき私は既にヨーロッパ。本当に残念・・)、そこで彼女たちが、この試合のように解放されたサッカーを展開し、持てる実力を100パーセント以上発揮できるかどうかは誰にも確信は持てない・・。

 その勝負マッチを決めるファクターの大きな部分は、心理・精神的なもので占められるでしょう。そこでは、澤穂希キャプテンの存在が決定的に重要な意味を持つに違いありません。肉を切らせて骨を断つという本物の勝負では、彼女の「肉食の文化」でプロを張っていたという経験が存分に活かされるに違いないと思うのです。とはいっても、その他の選手たちの文化背景は日本という社会・・。だから心配。

 まあ、この試合での彼女たちの吹っ切れたプレー内容を見ていたら、相手に押し込まれるような苦境に陥っても、そこで心理的な悪魔のサイクルに陥ることなく、中盤でのギリギリの厳しいディフェンスを基盤に、ペースを盛り返せるとは思うのですが・・。

 とにかく女子日本代表は、今から、その決戦へ向けた「メンタルトレーニング」だけは欠かさないことが肝心です。その勝負では、日本的な感性(高質な思いやりマインド等々)は、確実にブレーキ要素の方が大きくなりますからね・・。

 とにかく後悔のない闘いを展開して欲しいと願って止まない湯浅なのです。ガンバレ、日本女子代表!!

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 これから所用があるため、またヨーロッパで活躍する日本人選手のゲームを観なければならないため、先ほどスタジアム観戦したジェフ対アルビレックス戦と、ビデオに録画しておいたレッズ対トリニータ戦のレポートは明日ということになります。悪しからず・・




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