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ナビスコカップ準決勝・・解放サッカーの真骨頂・・(グランパス対レッズ、1-4)・・(2004年10月11日、月曜日)

いま、試合終了後に大急ぎで到着した羽田空港で書いています。ここから関空とドバイを経由してオマーンのマスカットへ・・。あまり時間がないから、とにかく大急ぎでレポートをまとめることにします。

 この試合は、ネルシーニョという優れたプロコーチに率いられ、優れたサッカーを展開しているグランパスが相手だから、そこでのゲーム内容こそが、今のレッズの強さを測るための評価基準になると思っていました。そんな視点で観戦していたのですが、そこでもレッズがホンモノの強さを発揮しました。ホンモノの強さ。それは、守備ブロックが揺らぐことなく、攻撃における自分たちの「強みと良さ」を存分に発揮できたという意味です。

 試合は、中盤ディフェンスのせめぎ合いという展開で立ち上がりました。最初は、「それ」で圧倒したレッズが攻め込み、次にはグランパスが押し返すといった変化あるゲーム展開。ただ、しっかりとチャンスを作り出したレッズに対し、どうもグランパスは攻めきれない(チャンスの質でレッズに軍配!)。レッズ守備ブロックの強さばかりが際立ちます。そして、ダイナミックな拮抗状態を切り裂くようにレッズが先制ゴールを決めたこともあって(前半26分)、徐々にレッズがゲームのイニシアチブを握るといった展開になっていきます。まあ、レッズが、カウンター気味の攻めを仕掛けやすくなったということです。

 この試合でも、二列目の「自由人」山田暢久が、与えられた自由を、チームに対してフェアに、謳歌していました。とにかく、前線からの守備の起点プレーは見所満載。とはいっても、このゲームが、強いグランパス相手の一発勝負ということもあって、自ら下がって酒井や鈴木を前へ送り出すなど、前後のポジションチェンジを演出するまでには至らない。まあこの試合では、全員が注意深くプレーしていたということです。

 それにしても先制ゴールシーンでの永井雄一郎のドリブル勝負はレベルを超えていたじゃありませんか。まさに後ろ髪を引かれない吹っ切れたドリブル突破。ギド・ブッフヴァルト監督は、両サイドプレイヤーたちを、守備意識が「特に高い」ウイング・・なんていうふうに定義しているのかもしれない。もちろんそこでは、永井雄一郎と鈴木啓太が魅せつづけた「あうんの呼吸」が高揚しているというポイントにも目を向けなければなりません。要は、永井雄一郎の後ろ髪を引かれないオーバーラップ勝負の「演出家」としても抜群の機能性を発揮していた鈴木啓太・・ということです。サッカーは本物のチームゲーム・・。

 それにしても、最前線も含め、レッズ選手たちが魅せつづける守備意識は素晴らしいレベルにある。守備の起点プレーとしてのチェイス&チェック・・ボールのないところでのマーキングやインターセプト狙いのクレバーなポジショニング・・協力プレスをイメージした全力ダッシュ・・等々。特に、最前線から田中達也が展開した全力ディフェンスは、チーム全体の「効果的な刺激ファクター」としても機能していたと思います。

 そんな田中達也のディフェンスですが、後半17分に魅せたチェイス&チェックプレーは特筆でした。レッズのセットプレーからボールを奪い返したグランパスが仕掛けるカウンターシーン。そこで、既に2ゴールを挙げていた田中達也が、まさに全力のスパートで追いかけ、センターサークル付近で必死のタックルを仕掛けたのです。残念ながら、相手の足を引っかけてイエローをもらってしまったけれど、とにかく気合が乗った、チーム全体の闘う雰囲気を鼓舞する「刺激プレー」でしたよ。

 ちょっとハナシは変わるけれど、このシーンを見ていて、ふと、以前にデータをまとめていた頃に発見した「ある事実」を思い出しました。要は、ゴールを決めた選手が、その後に、守備のファールでイエローをもらう「確率」が比較的高いということです。あくまでも比較的・・ですが、一度、この視点でデータを確かめてみてください。ホントに、ゴールを挙げ、気分が高揚したことで、ディフェンスでも全力のアグレッシブプレーを仕掛けていく傾向が強いということが分かりますよ。だから、結果として(前線の選手が多く、守備アタックはそんなに上手くないから!)イエローになるようなファールが多くなるというわけです。フムフム・・。

 ところで、チームの雰囲気に対する「刺激プレー」という視点では、ギドも、目立ったパフォーマンスを発揮しました。それは後半39分あたりのこと。一点を返されて、ちょっとチームの闘う雰囲気が落ち込んでいたタイミングで、ギドが、ベンチから鬼の形相で「誰か」にカツを入れたのです。さて、誰に対して、何を・・?? それはよく分からなかったけれど、でもその直後から、攻守にわたって選手たちのプレー姿勢が何倍にも活性化されたと感じました。そしてそれが、(その直後の)田中達也のハットトリックにつながった・・。それにしてもギドの鬼の形相。これはテレビでしか確認できないけれど、なかなかの迫力でしたよ。いや、頼もしい・・。

 山瀬や長谷部が戦線離脱したにもかかわらず、自分たちがやりたいサッカーを継続できているレッズ。ここまできたら、エメルソン抜きのレッズも観てみたくなります。エメがいなくなれば、田中や永井の「勝負意識」も格段に高揚するだろう・・以前のような「自信喪失」には決してなることはない・・それこそが、解放サッカーの真骨頂なのだ・・なんてネ。

 さて、これからオマーンのマスカットへ・・。ジーコジャパンに対しては、とにかくクレバーに(クールに)吹っ切れて欲しいと願って止まない湯浅です。この表現は、いまこの時点で思いついたモノですが、まあ、バランスの取れたマインドで、極限の闘う姿勢を志向し(極限の自己主張で互いに刺激し合いながら)試合に臨んで欲しいといったところかな・・。言葉に直すとどうもうまくいかない。まあ、実際に試合を観た後には、もっと活き活きした表現が出てくるとは思いますが・・。

 



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