トピックス


「J2」と、ナビスコカップ・・フロンターレの強さの背景が見えてくる(フロンターレ対ヴェガルタ, 4-1)・・レッズの解放サッカーがチーム全体に波及している・・(トリニータ対レッズ、0-3)・・(2004年5月29日、土曜日)

ではまず「J2」から。

 実をいうと、ナビスコカップ戦にするか、それとも「J2」か・・なんて、最後まで迷っていたのですよ。でも最後は、やはり数少ない観戦機会は逃すべきではない・・と、フロンターレ対ヴェガルタ戦へ馳せ参じることにした次第。でも彼らのゲームは、たまにテレビ観戦するくらいだから、グラウンド上の現象を深堀りしていくのはちょっと危険。ということで、グラウンド上の現象を、あくまでもサッカーの普遍的なテーマに絞り込んで観察し評価することにした次第。もちろん、現在ダントツトップで突っ走るフロンターレの秘密に迫るという視点で・・。

 そんなことに思いを馳せながら、キックオフまでの時間、ひとしきり「イメージトレーニング」に没頭していた湯浅でした。この試合でのヴェガルタは、「調子を上げている」挑戦者といったところでしょうか、彼らは立ち上がりからガンガン攻め上がっていきました。とはいっても、そんな「概観」に少し目をやるだけで、「これは、ディフェンスのレベルが違う・・」なんていう事実が明確に見えてしまって・・。ボールがないところでの守備イメージの徹底度や実効度に大きな差があるのですよ。

 現象的には、フロンターレの方が、より頻繁に、そしてより効果的に、フリーでボールを持つ選手(=仕掛けの起点!)を演出できているということですが、逆にディフェンスの視点からすれば、ヴェガルタ守備陣のボールがないところでの様々な守備プレーが甘いということになるというわけです。 それに対してフロンターレの守備は、堅い、堅い・・。

 でもヴェガルタを率いるのは「あの」ベルデニックだし、一見では、マンマークがうまく機能しているようにも見えていたのですよ。ところが、よく観察してみると、肝心なところでボールウォッチャーになってマークを外れさてしまうなど、勝負所での状況把握、判断・決断が甘いというケースも目立っていたというわけです。要は、次の勝負シーンをしっかりとイメージできていない・・自ら次を予測し、勝負イメージを描写しようとするのではなく、単に、マークする相手とボールを観察するだけという受け身ディフェンスになってしまっている・・ということです。

 例えば、フロンターレ攻撃の絶対的コアであるジュニーニョに対する守備にしても、どちらかといえば稚拙だとするしかなかった・・。「アタックへいく・・または一度止まってウェイティング・・」という、臨機応変に組み合わせなければならない「ボール絡み」のディフェンスアクションですが、ジュニーニョのような才能と対峙するときは、そのメリハリを極端に意識しなければいけないのですよ。中途半端なタイミングで、ジュニーニョがトラップする瞬間を狙ってアタックを仕掛けようものなら、「あのように」スッと入れ替わられて置き去りにされてしまうのがオチだということです。何度、アリャリャ・・なんていうため息が出たことか。

 それに対しフロンターレの守備は、中盤ブロックと最終ラインともに、なかなかの機能性を魅せつづけていました。判断・決断・実行のフローがスムーズだし、そのプロセスが、限りなく自分主体で積極的なのですよ。その象徴は、何といっても、今シーズンにアントラーズから移籍してきた相馬直樹。これまで左サイドバック専業だった彼が、守備的ハーフにコンバートされたのです。それも、昨年までアントラーズでコーチを務めていた関塚監督の「目」の為せるところだったに違いありません。「相馬は、確実に中盤守備ブロックのリーダーとして機能してくれる・・」。この試合で相馬が魅せた、実効ある中盤ディフェンスは見所満載でした。それがバックボーンにあったからこそ、最終ラインの予測・読みディフェンスも冴えたということです。目立たない汗かきディフェンス。そんな「守備の起点プレー」があったからこそ、周りのチームメイトたちの、次のパスやボール奪取ポイントに対するイメージングプロセスが活性化したというわけです。

 また相馬のパートナーである中村憲剛も、相馬のリーダーシップのもと(?!)攻守にわたって、吹っ切れた活躍を魅せつづけていました。中村は、実質的には、第9節のパープルサンガ戦からフル出場するようになったということですが、メンバー構成や選手タイプのバランスなどの判断も含めて、関塚監督の「目」は確かなようです。

 攻撃ですが、これはもう、ジュニーニョの独壇場。彼が仕掛けイメージのスクリプトを書き、彼自身が仕掛けの起点になり、突貫プレーを敢行し、シュートまで決めてしまう・・なんていう雰囲気なのですよ。もちろんトップで安定したチカラを発揮する我那覇の得点力も素晴らしいものがありますけれどネ・・。我那覇のポストプレーが安定しているからこそ、ジュニーニョの突破力も活きてくる・・ということでしょう。

 とはいっても、仕掛けていくメンツが固定しすぎていることで、組織的な変化の演出がままならないというネガティブな側面も否めません。まあ、とにかくまず守備をしっかりと組織し、チームメイトたちが明確にイメージを共有しているカタチで(逆の視点では、仕掛けのカタチを限定して?!)ボール奪取からのシンプルな仕掛けで相手ゴールへ迫るという、「J2」で成功するための現実的なチーム戦術を徹底しているという段階なのでしょう。これから余裕が出てきたところで、内容的にどこまで発展するのか注目したいと思います。

------------------

 さて次は、テレビ観戦したナビスコカップ戦、大分トリニータ対浦和レッズ。

 レッズの完勝といっても過言ではないゲーム内容でした。もちろん部分的には様々な課題も見えていたにしても・・です。チームの調子がいいときには・・要は、出場した選手たちが良いサッカーを展開し、結果もついてきているときには、そこからの好影響がチーム「全体」に深く波及していくということでしょう。もちろんその背景に、全員のプレーイメージを深くシンクロさせるような優れたトレーニングがあることは言うまでもありません。だから、通常の先発組が欠けても、サッカーが大くずれしない。そこには、攻守にわたる優れたプレーイメージの善循環があると感じます。ギド・ブッフヴァルトとゲルト・エンゲルスの優れた仕事コンテンツが見えてくるようです。

 その善循環コンテンツのなかで、もっとも重要なものは、何といっても、選手全員に深く浸透している守備意識。忠実でダイナミックなチェイス&チェックで守備の起点を演出する・・そこをベースに、ボールがないところでのマーキング、相手のボールの動きが停滞したときの協力プレス、そして次のパスに狙いを定めたボール奪取アタック(インターセプトや、相手トラップの瞬間を狙ったアタックなど)を仕掛けていくのです。選手たち一人ひとりの守備意識が高いからこそ、それらのプレーが、実効あるカタチで有機的に連鎖し、美しいハーモニーを奏でるというわけです。互いに「使い・使われるメカニズム」をベースに、一人の例外もなく、積極的に「仕事を探しつづける」レッズ選手たち。プレーしている彼らも、楽しくて仕方ないに違いありません。

 高い位置でのダイナミック守備。それは大分のキャッチフレーズでもあるわけですが、この試合では完全にレッズにお株を奪われていました。まあレッズは、自分たちのホームで大分にやられてしまいましたから、意地もあったんでしょうね。

 それにしても、鈴木啓太と酒井の守備的ハーフコンビは素晴らしい。この二人が、レッズサッカーの発展を「深いところ」で支えているのは疑いのない事実なのですよ。この二人については、互いに、クリエイティブ守備コンテンツで競い合っている?! そんなことを感じるほど、自分主体でダイナミックな守備を展開しているのです。それも、常に次の攻撃参加をイメージしながらですからね。とことん楽しんでいると感じますよ。もちろん、中盤ディフェンスの重心がピシリと決まっていることで、トゥーリオを中心とした最終ラインも、落ち着いて読みディフェンスを展開できる・・。まさに、守備イメージの「クリエイティブな善循環」といったところです。

 そんなダイナミックなディフェンスがバックボーンにあるからこそ、彼らの仕掛けも冴えわたるというわけです。特に、組織プレーと個の勝負プレーが素晴らしいバランスを魅せていましたよ。長谷部、酒井、そしてゴールを決めた山瀬が絡んだ素晴らしいコンビネーション(先制ゴール)。相手守備ブロックをズタズタにしてしまった永井の勝負ドリブル(二点目)。酒井のインターセプトからのドリブルシュート(三点目)。そこでの酒井は、組織的なディフェンスが機能していたからこそ明確に次のパスを予測できたのです。

 その後も、しっかりと守りながら、ボール奪取した後は、チャンスがある者は例外なく仕掛けの最終シーンまで絡んでいくという活きの良いハイレベルサッカーを披露しつづけるレッズ。平川や山田が、山瀬が、長谷部や永井が、はたまた酒井や鈴木啓太が、常にシュートを意識した吹っ切れた仕掛けプレーを魅せつづけます。

 そんな積極的な攻め上がりこそ、高い守備意識を基盤にして生み出されるプレー姿勢。実効ある守備プレーこそ、選手たちに、本当の意味での自信を与え、確信レベルを高揚させ、積極的なリスクチャレンジなど、プレーの幅を広げるのです。




[ トップページ ] [ Jワンポイント ] [湯浅健二です。 ]
[ Jデータベース ] [トピックス(New)] [ 海外情報 ]