トピックス


オリンピック代表・・前へチャレンジする闘う姿勢が順調に発展していると感じさせてくれたゲームでした・・(日本対ロシア、1対1)・・(2004年2月11日、水曜日)

この試合のテーマは、ゲームの流れの「実質的なコントロール」ということになるのかな・・。ゲームの立ち上がり、そんなことを考えていました。

 全体的には、ボールをより多く支配しているように「見える」日本代表。それに対し、実質的な流れの掌握という視点では、明らかにゲームを牛耳り、カウンター気味の危険な攻撃を仕掛けてくるロシア。

 日本代表は、ボールを動かしているように見えて、そこでのチャレンジマインドが希薄だから(安全パスばかりだし、タテスペースを効果的に突けていないから)、ロシア守備ブロックにとっては、まったくといっていいほど怖くない。特にロシア最終ラインには、大ベテランのオノプコがいますからネ。まさに「ヤツらの攻めだったら、先の先までお見通しだぜ・・」ってな具合なのでしょう。そして、ボールを奪い返したら、急激なスピードアップカウンターや、高さを活かすセットプレー、はたまたバックパスからのロングシュートなど、多彩に攻めてくる・・。まさに試合巧者じゃありませんか。

 そして10分も過ぎたあたりから、全体的な流れが、完全にロシアに牛耳られるようになっていったというわけです。さて、若き日本代表は、強い相手と相対するこの試合を有意義な学習機会にすることができるのか・・。

 全体的に「ジリ貧」方向へ傾きかけていた日本代表、だからこそ誰かが、何らかの刺激をチームに与えなければならない・・。もちろん以前のような「体質的な不活性サッカー」とは状況が大きく異なり、全体的なチームの雰囲気がポジティブ方向へ振れていることは誰もが認識していることです。だからこそ、ちょっとした刺激さえあれば・・と歯がゆく思っていたというわけです。

 もちろんペースアップのキッカケは中盤守備の活性化しかありません。誰かがイニシアチブを握り、「フザケルナ! もっとマークを厳しくしろ!! もっと当たりを厳しくしろ!! もっと前から、前から!!!」等々、自らも率先して効果的なアクションをつづけながらチームメイト達を鼓舞するのですよ。そこで守備がアクティブになれば、次の攻撃の流れも確実にポジティブに回りはじめるものです。そこでは、一人の例外もない全員のディフェンスアクションに「エネルギーの放散」が感じられなければなりません。一人でも、本当に一人でも、斜に構えた(受け身で消極的な)ディフェンス姿勢になったら全体的なベースを上げることなどできやしない。「鈴木啓太! 松井大輔! もっと、もっと味方に刺激を与えろ!! この厳しい時間帯こそ、キミたちにとって大いなる機会なんだぞ!!」なんて心のなかで叫んでいました。

 そして日本代表のプレー姿勢が、徐々に、セキュリティー方向(安全志向の受け身プレー姿勢)からチャレンジ方向へと動きはじめたのです。私の叫びが聞こえた?! そんなこと、あるわきゃない! それは、私たちが待ち望んでいた、自分たち主体のペースアッププロセスだったと感じていた湯浅でした。そこでは、鈴木の忠実&ダイナミック守備もそうですが、特に前線の三人(高松、坂田、松井)の積極守備参加も(仲間たちに対する)効果的な刺激エネルギーを放っていたと感じました。そして、そんなペースアップ基調を背景に、攻撃の雰囲気も大きく好転していくのです。

 特に松井のリスクチャレンジ姿勢が素晴らしい。それって、山瀬効果?! まあ、そんな面もあるでしょう。ライバルもまた、発展のための大いなるリソース(エネルギー源)なのですよ。

 また松井の積極仕掛けプレーに刺激を受けたのか、右サイドでは田中隼磨や徳永悠平が、また左サイドからは(例によって!)根本が、ドリブル突破にチャレンジするようにもなります。選手達のマインドも、「やれるぞ・・」というポジティブなモノに変容している・・、そんなことを感じていた前半20分過ぎの時間帯でした。

 前半30分。中盤の低い位置でボールを持った松井が、吹っ切れた直線ドリブルから、左サイドの根本へのタテパスを通します。絶対的なカウンターチャンスの演出。そしてその3分後に、トゥーリオの「前でのディフェンス勝負」と、吹っ切れたドリブル勝負によって先制ゴールが生まれるのです。結局トゥーリオは潰されてしまいましたが、そのこぼれ球を高松が押し込んだという次第。全体的なペースの盛り上がりを考えれば、まさに順当に勝ち取った先制ゴールといったところ。

 さてこれで、このゲームが、チーム全体にとっての本物の学習機会になるゾ・・なんて思っていた前半39分、ペースアップしたロシアが、日本代表の一瞬のスキを突いて同点ゴールをぶち込んでしまいます。それは、一瞬のミス(集中切れ)。あそこでイージーなパスミスが出なければ・・あそこで那須が、事前の読みをベースに正確なマークポジションに入っていたら・・。自分たち主体のペースアップと先制ゴールが素晴らしいゲームの流れを形づくっていたから、そのロシアの同点ゴールが残念でたまらず、自然とタラレバになってしまう湯浅だったのです。

 その後も、同点に追いついたロシアに押し込まれ、決定的スルーパスを通されるなど、ピンチの連続という悪い流れに逆戻りしてしまった日本代表。そこでも、那須のミスパスとマークミスが目立っていました。那須は非常に優秀な選手です。でもその時点での彼は、まだ同点ゴールシーンでのミスがアタマにこびりついていることでプレーペースを「自ら」乱していたということなのかもしれません。そんな「心理的な悪魔のサイクル」を、なるべく早く断ち切れることも、肉を切らせて骨を断つというギリギリ闘いを勝ち抜くための絶対条件なのです。もちろん本当のところは分かりませんが、もし私の指摘に少しでも的を射るところがあったのならば、そのことを明確に反芻し、イメージトレーニングを積まなければなりません。そんなプロセスがあってはじめて、失敗を本物の経験として蓄積し、「イメージ瞬発力」として活用できるものなのです。

 とにかく前半39分に同点ゴールを入れられてからの数分間、日本代表の守備ブロックがバタついていたのは確かな事実。相手ボールホルダー(次のパスレシーバー)へのチェックが甘いことで、次のパスへの読みディフェンスも甘くなる・・だからロシアの攻めに対する抑えが効かない・・だから守備ブロック全体が受け身になってしまう・・。とはいっても、そこで追加ゴールを奪われなかったという幸運もあって、再び日本代表のサッカーに落ち着きが戻ってきました。良かった・・。

 そんなことを書いていたら、もう前半終了。様々なコンテンツの変化があったから、時間の経つのが早かったこと・・。この試合は、相手が強いからこそ、日本代表にとってこれ以上ないほど素晴らしい学習機会になるかもしれない・・。

----------------------

 後半。一進一退のなかで、最初にゴールにつながってもおかしくない実効チャンスを作り出したのは、やはりロシア。最前線へパスをつけ、それを落としたところをドカン!というパターンが目立ちます(前後のイメージシンクロプレー)。また後半28分には、日本のミスパス(多分、森崎和幸に代わって出場した青木のミス?!)を奪い、見事なカウンターを決めそうになります(GK黒河がギリギリのセービングで防ぐ・・バー直撃シュート!)。

 最後の時間帯になって、ここが勝負所という勢いで攻め込んでくるロシア。後半25分過ぎ、ちょいとダイナミズムレベルが落ち気味だった高松と坂田の代わりに田中達也と平山相太が投入されたことで期待が高まったわけですが、実際の試合の流れは、完全にロシアへ傾いていったというわけです。

 要は、中盤のせめぎ合いで、日本がロシアの勢いに呑み込まれそうになっていたということです。それでも、35分あたりから、再び日本も攻め返していったのだから大したものです。

 そして38分。最前線での平山のガンバリキープ(=ポストプレー)をベースに攻め上がった日本代表が、森崎のクロス(そこでのこぼれ球)から惜しいシュートを放ちます。シューターは、平山相太・・。とにかくスゴイね平山は。シュートとなったら、そのほとんどを相手ゴールの枠に飛ばしてしまうのだから・・。

 最後の時間帯は、両チームが攻め合うというエキサイティングな展開になりましたよ。ロシアも決定的チャンスを作り出し、日本も、トゥーリオが惜しいロングシュートを放ったりします。日本選手達にとって、大いなる自信ソースになったことでしょう。何せ相手は、ロシアのフル代表ですからネ(国内選手だけの選抜チーム・・またシーズン再開前という制限つきにしても・・ネ)。肉を切らせて骨を断つというオリンピック予選に臨む日本にとって素晴らしい学習機会になったということです。

-------------------

 先ほど、約2時間をかけて東京にたどり着いたのですが、それからこの原稿を仕上げているという次第。もう朝の3時をまわろうとしている時間ですから、どうも頭がモウロウとしてきました。でも「この」テーマだけは、書き残しておかなければ。そのテーマは何かって?? それは、前回のイラン戦レポートでも書いた「危急ゲーム戦術」。要は、平山という類い希なる武器の「活用」のことです。オリンピック地域予選において、残り10分でどうしてもゴールを挙げなければならないという状況に陥ることも、高い確率で起こり得るだろうから・・。

 山本監督は、「厳しいゲームだったからこそ勝ちに対するこだわりが芽生えた・・それは、最終予選につながるよい経験になった・・とはいっても、(チャンスはあったのに)勝ち切れなかったことに課題がある・・」と述べていました。もちろん、田中達也と平山相太を交代出場させたのは、チャンスをものにして勝ち切ることでした。でも、この二人が入ったことで彼らの仕掛け内容に大きな変化が生まれたというわけではありませんでした。だからこそ、観ていてちょっと歯がゆかった・・。

 もちろん人とボールを活発に動かすなかでのコンビネーションや、サイド攻略からのクロス攻撃も有効でしょうし、それを否定するわけではありません。でも、平山が入ったのだから、もう一工夫合ってもよかったのでは・・なんてことも思うのです。例えば、クロスばかりではなく、後方からの一発ロングパス狙いとか・・。要は、仕掛けのオプションを広げるということです。もちろんバランスよく・・ネ。基本的な仕掛けイメージを崩すことなく、それに、後方からのロングボールや、アーリークロスも「バランスよく」ミックスしていくのですよ。そうすれば、相手も面食らうような仕掛けの変化になる。だからこそ、平山が出てきたら、そんな「ミックス・バランス」について、チーム全員が、すぐに共通認識を持てるように意識付けしておく作業が大事な意味をもってくると思うのです。

 1998年フランスワールドカップへ向けた、イランとの決定戦(ジョホール・バル)。そこで岡田監督が、岡野をグラウンドに送りだしたとき、チーム全員が、岡野の前のスペースへのタテパスを共通して意識したといいます。だからこそ中田英寿が、センターサークル付近でタメキープを演出することで岡野の前にスペースを作り出し、最後の瞬間にベストコースとタイミングのタテパスを通したのですよ。タメているときの中田英寿が、2-3人のイラン選手達の意識とアクションを釘付けにしてしまったのだから大したものでした。たしかに、同じパターンで中田英寿が演出した二回の決定的チャンス(岡野がドリブルで抜け出し、相手GKとほぼ1対1になった!)は、二度とも失敗してしまったけれど、それは、(最後は中田英寿の独壇場だったとはいえ!)岡野が登場した瞬間にチーム全体が一つの仕掛けイメージで統一されたことで作り出された決定機だったのです。

 だからこそオリンピック代表も、そんな「オプション」を用意しておくのも一考だと思うのですよ。選手達全員の仕掛けイメージが、ある瞬間にピタリと「シンクロ」するようなオプションをネ・・。

 たぶん誤字・脱字オンパレードの乱文でしょう。でも、言いたいことは通じるでしょうからこのまま掲載することにします。では、お休みなさい。

----------------------

 あっと、もう一つだけ。自宅にたどり着いたら、日本サッカー協会からのファックスが入っていました。

 内容は、「日本代表対イラク戦について、安全に観戦していただくため、手荷物検査と、金属探知器による検査を実施させていただくことになりました。つきましては、ファン・サポーターのみなさまには、入場に時間が掛かるので、なるべく早めにご来場いただくことをお願い申し上げます・・」とのこと。

 ということで皆さん、なるべく早めにスタジアムへ行くようにしましょうネ。




[ トップページ ] [ Jワンポイント ] [湯浅健二です。 ]
[ Jデータベース ] [トピックス(New)] [ 海外情報 ]