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オリンピック代表・・このチームは、日本ラウンドでの最初の二試合でギリギリの闘う雰囲気を醸成させなければならない!・・(UAE対日本、0対2)・・(2004年3月5日、金曜日)

大変ご無沙汰してしまいました。昨日の木曜日に帰国したのですが、出張先では、カゼでダウンしていたこともあって・・とはいっても約束してあった会談&ミーティングをすっぽかすわけにもいかないからクルマで移動しなければならず・・先週以降はまったくコラムをアップできない状態に陥っておりました。またそんな状況ですから、オリンピック代表の試合も、結果だけを後から確かめるといった体たらく。

 そんなボ〜ッ!とした雰囲気のなかで、日本オリンピック代表が初戦のバーレーンに引き分けてしまったと知りました。まあ二つ目のレバノン戦には大勝をおさめたわけですが、オリンピック日本代表にとっては、UAEラウンドの最終戦が大勝負ということになってしまいました。

 もちろんこのUAE戦に引き分けても(日本ラウンドでバーレーン、レバノンに連勝することが大前提ですが・・)日本で彼らに勝てばいいわけですが、このオリンピック代表に、守備をきっちりとこなしながら人数をかけた「組織プレー」で仕掛けていくような可能性の大きなサッカーを要求するのは酷・・。彼らに、そんなダイナミックな勝ち切りプロセスを期待するのは難しいということです。逆に、絶対に勝たなければならないという心理プレッシャーにに押し潰されてしまう?! だからこそこのゲームで何とかクレバーに勝ち切ってくれればいいのですが・・。

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 ゲームは膠着状態・・。とはいっても、深層では、中盤ディフェンスの活性度、仕掛けの内容でUAEに流れがあると感じます。たしかに最初の20分間は、どちらかといえば日本の方がボールを長くキープしてはいます。それでも、相手の守備ブロックを崩す(守備ラインのウラを突く)というところまでいけない・・。逆にUAEの仕掛けは、徹底しているから、その危険度は明らかに日本を上回っているのですよ。

 中盤からの徹底的な積極ディフェンスを全てのスタートラインとして、(安全確実なパスをつなぎながら)ある程度フリーでボールをもった選手は、とにかく中盤からでもどんどんとドリブルで突っかけていく・・脇目を振らずに、全速力で突っかけていく・・だから日本代表の守備ブロックも勝負の競り合い(ディフェンスアタック)を仕掛けていかざる得ない・・ただそれが、急激なテンポアップを基調にした局所的なドリブル勝負だから、他のディフェンダーがサポートに駆けつけられるタイミングでもない・・だから一度そこで振り切られたら、完璧フリーの相手ドリブラーがどんどん日本ゴールへ迫ってしまうというピンチの流れに陥ってしまう・・。

 そんなUAEに対し、イメージシンクロ・コンビネーション(仕掛けのカタチ)のキッカケになるようなスタンダードシチュエーション=基準シーン=を作り出すための明確な組織プレーリズムを演出できない日本代表。仕掛けに十分な人数をかけることができないから(後ろ髪を引かれているからサポートの動きが遅くなってしまっている!)、ボールがないところでの動き(パスレシーバーの、スペースを作り出す動きや実際にパスを受ける動きなど)が活性化しない・・だからどうしても組織的にボールを動かすことがままならない・・これではUAE守備ブロックを振り回せるはずがない・・というわけです。それでは「個の勝負」はといっても、ドリブル突破チャレンジもままならないし、ドリブル突破アクションに入る状況があまりにも明らかだから、相手守備ブロックに簡単に集中されてしまって(協力プレスを掛けられて)前方のスペースを潰されてしまう・・。

 「これは、勝ち切るのは難しいな・・」、そんなことを思いはじめていた前半25分過ぎからは、ゲームの実質的な流れが、完全にUAEペースへと変容していくのですよ。クロスボールをヘディングで流したところをハリル(11番)に持ち込まれて決定的シュートを打たれてしまう・・UAE中盤の汗かき選手ムバラクに、セットプレーから、ファーサイドでの完璧フリーのヘディングシュートを放たれてしまったり、流れのなかでのクロスからギリギリのヘディングシュートを放たれてしまったり・・。フ〜〜ッ!

 そんなUAEに対し、日本の攻撃は、もう完全に単発状態。日本はどちらかといえば「個よりも組織」ですからね。しっかりとボールを動かして組み立てながら、直線的に相手ゴールへ迫ったり、サイドでカタチを作り出して正確なクロスを上げる(もちろんゴール前で待ち構える選手も、常にスペースを狙って動きつづける!)という組織的な仕掛けをより強くイメージしなければならないということです(まあ意識はしているのだろうけれど・・)。そのために、とにかく素早く・広くボールを動かすという「リズム」を安定させなければならないのです。それがあってはじめて、ボールのないところでのアクションも活性化する。だからこそ、中盤でのリーダーシップが欠かせないのですが・・。フム、難しい・・。

 前半の日本代表は、特に最後の20分間は、完全に心理的な悪魔のサイクルに落ち込み、そこから這い上がることができずにいたのです。これまでの数週間、「融合」によってチームが大きく強化され発展していたという印象を持っていたわけですが、やはり本物の勝負の場は違った・・。肉を切らせなければ、決して相手の骨を断つことはできないのですよ。その「肉を切らせる」というギリギリのプレーの意味を深く浸透させるための緊張感がまだまだ十分ではない・・?!

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後半の立ち上がりも、前半の終盤同様にUAEがホームのスピリチュアルエネルギーをぶつけるようにゲームを支配します。もちろん、組織されたダイナミックな中盤ディフェンスを全ての基盤としてね。とはいっても、少なくとも日本代表は、前半の悪魔のサイクルだけは断ち切れていた・・。平山と交代した高松の最前線での勝負プレーがうまく回転をはじめたことで、田中のプレーにも切れが戻りはじめたのです。そうなったら後方からのサポートアクションが増幅するのも道理。そして徐々に日本代表の攻めにも勢いが乗るようになっていったというわけです。

 仕掛けの勢い・・。日本の場合それは、ボールがないところでのアクションの量と質に支えられる組織プレーのダイナミズムなどと言い表せるかもしれません。そして後半のオリンピック代表のサッカーに吹っ切れた勢いが乗りはじめる・・。そのベースは、言うまでもなく、鈴木と今野がリードする安定した中盤守備ですよね。この、中盤ディフェンスの安定こそが(それに対するチーム全体の確信レベルの高揚が!)、チーム全体の仕掛けの勢いを増幅させるバックボーンになっていたということです。

 そして、そんな日本代表の攻守にわたるダイナミズムアップに反比例するように、徐々にUAEの前への勢いが衰えていくのです(まあそれでも、必殺のカウンターは危険そのものでしたが・・)。その背景には、後半最初から交代してしまったムバラクだけではなく、後半23分にイシヤクと代わってベンチへ退いたハリルの不在が大きく影響していたと感じました(ハリルの攻守にわたる積極プレーは称賛に値する!)。

 そんなUAEに対し、徐々にペースアップしつづける日本代表では、後半18分に山瀬と交代で登場した松井のダイナミックプレーも特筆の「ポジティブ刺激」になっていました。彼が中盤の二列目にはいったことで、そこにパスを回せば、周りがわかりやすいリズムでボールをキープしたりシンプルにパスを回したりしてくれる・・だから周りも、次のボールなしの勝負アクションを明確に描写しやすくなる・・。いや、ホント、この貴重な勝利における松井の貢献度は非常に大きなものがあったと思っている湯浅なのです。

 そんな良い(明確な)リズムが、先制ゴールシーンにおける、左サイドでの松井の今野の素早いパス交換や、そこでボールが動いている段階で田中がスタートするという決定的フリーランニングとなってグラウンド上に現れた・・。そしてこぼれ球を拾った高松の先制ゴール(後半40分)。とにかく目の覚めるようなイメージシンクロコンビネーションでした。そしてその2分後の、田中達也のラッキーゴール・・。日本のフル代表と同様に、本物のツキに恵まれたオリンピック代表でした。

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 日本のフル代表同様、オリンピックチームも、「グラウンド上での」闘う雰囲気の高揚に四苦八苦していました。鈴木啓太がいる・・今野がいる・・それでも、どうもうまく気合が増幅しない時間帯がつづいてしまう・・。

 とにかくボールがないところでのリスクチャレンジマインドこそが全てなのです。もちろん常にリスキーなプレーにチャレンジしつづけろ・・と言っているわけじゃない。そこでは優れたバランス感覚が求められるのです。でも、そのバランス感覚というマジックワードを前面に押し出した瞬間、選手達は「クレバーに足を止めてしまう」というのも確かな事実なのですよ。だからこそ監督の「心理マネージャー」としてのウデが問われるというわけです。チーム内を、常に適度なテンション(緊張感)が支配させることができるようなウデがネ。まあ、永遠のテーマではありますが・・。

 さてこれで日本ラウンドが楽しみになってきた・・というよりは、オリンピックチームがホッとしているに違いないことも含め、まだまだ心配の種が尽きない・・。日本ラウンドでも、もちろん最終戦がもっとも大事な勝負マッチになってくるのですが、私は、このチームの場合、それ以前のバーレーン戦、レバノン戦でのゲーム内容の方にこそ集中すべきだと思っているのですよ。そこでは、これ以上ないという厳しいディフェンスを基調に、スマートゴールばかりではなく、泥臭いダーティーゴールも含め、容赦のないプレーで相手をコテンコテンにやっつけてしまうという「非情な闘い」をする必要があると思うのです。このオリンピックチームの場合は、まだまだ心理的に甘い、甘い。だからこそ、最終戦の準備として、最初の二試合で、「慈悲のカケラも感じない非情な闘い」をすることでチーム内にギリギリの闘う雰囲気を醸成させておくことが大事なのですよ。




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