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オリンピック代表・・発展をつづけ、逞しさも目立つようになってきた・・また本気でゲームに臨んでくれた強いトルコ選抜チームに感謝!・・(日本対トルコ選抜、1-1)・・(2004年5月26日、水曜日)

試合後に所用があったため、レポートを書きはじめたのは深夜を過ぎてからということになってしまいました。ということで、ポイントを絞り込んで簡単にまとめることにします。

 とはいっても、まずは全体的な流れに対する印象から入ることにしましょう。それは、こんな感じでしょうかネ・・:ゲームがはじまってすぐに、今回来日したトルコB代表が「強く」、全力で勝ちに来ていることを実感する・・高い個人能力をベースに、組織的な仕掛けでも、組織的ディフェンスでもハイレベルなサッカーを展開することでゲームペースを握っているのだ・・

 ・・グラウンド上の選手たちも、その事実をヒシヒシと体感しているはず・・見かけでは互角の立ち上がりだったけれど、仕掛けの内容では、明らかにトルコの方が上というゲーム展開がつづく・・日本がまったくシュートまでいけないのに対し、トルコは、サイドチェンジやスルーパスを駆使して何度も日本代表ディフェンスラインのウラスペースを突いてしまう・・振り回され気味の日本代表ディフェンスブロック・・そして徐々に日本代表の攻め勢いも減退していく・・

 ・・日本は、単独ドリブルでトルコ守備ブロックを崩せるはずがないから、しっかりと人数をかけたパスコンビネーションを基盤に仕掛けていかなければならないのに、サポートアクションの勢いが低落してしまうのだ・・心理的な悪魔のサイクルに落ち込んでいるわけではないけれど、どうも「次のディフェンス」のことを意識しすぎ、押し上げに勢いがのらない・・後ろ髪を引かれる攻撃・・これではトルコ守備ブロックに簡単に仕掛けを抑えられてしまうのも道理・・

 ・・ただ後半になってから、徐々に日本にも勢いが戻ってくる・・それは、立ち上がりの8分に先制ゴールを奪われただけではなく、その後の数分間に、二度もつづけて決定的なカタチを作り出されたことがあった・・そんなピンチの連続に、選手たちが刺激を受け、覚醒したのかもしれない・・徐々に、人数をかけた攻めに勢いが乗るようになっていく・・その勢いのリソースは、もちろん組織プレー・・人数をかけて攻め込んだ後のディフェンスも、攻守の切り換えがスムーズだから、前半のようにバランスを崩すことがない・・なかでも後半11分に交代出場した坂田のダイナミックな積極プレーが目立つ・・また、坂田とともに交代出場した平山も(ヘディングにまだまだ課題があるにせよ)高いポテンシャルを感じさせるプレーを魅せていた・・そして2分というタイミングでの、コーナーキックからの今野のヘディングゴール・・ファーサイドで待ち構えていた今野は、トルコ守備ブロックのマーキングミスで、まったくフリーになっていた・・その後は互いに攻め合うというエキサイティングな展開になるも、結局そのままタイムアップ・・ってなところですかネ。

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 「あのような強いチームが、本気で勝ちにきてくれた・・この時期としては、まさに理想的なトレーニングマッチになった・・その意味でも、マッチメイクに尽力してくれた方々、またトルコチームに対して感謝したい・・」

 試合後の記者会見で、山本監督がそんなことを言っていました。まさにその通り。私も、試合を観ながら、ある種の感動や感謝に似た気持ちになったものです。こんなに意義深いトレーニングマッチを観るのは久しぶりだ・・。

 また、そんな強いトルコチームに対し、日本チームが、徐々にペースをアップし、特に後半は、彼ら本来の吹っ切れた積極サッカーを展開できるようなったことも特筆です。だからこそ彼らにとって素晴らしい学習機会になった・・いや、彼ら自らが、このゲームを、有意義な学習機会にしてしまったといった方が正しい表現でしょう。

 「選手たちには、オーバーエイジ枠を使うかどうかも含めて、常にサバイバル精神を強くもってプレーするようにと意識付けしている・・」。山本監督は、そんなことも言っていました。

 考えてみればこのチームには、オリンピック最終予選の直前になって、ワールドユース組を合流させたことでチーム力が数段アップしたという経緯がありました。またそこでは、トゥーリオという「異文化」も組み込みました。そんな融合プロセス(=大きな刺激)が、競争環境や緊張感の高揚など、チーム強化に直結したということです。そこに今また、オーバーエイジという「異文化」を融合するかもしれないことを匂わせる山本監督。選手たちの意識が高まるのも道理です。ナカナカしたたかなチームマネージメントじゃありませんか。

 厳しい最終予選を勝ち抜いたことで大きく成長したオリンピック代表。そして今また、もう一段のステップアップを目指した刺激が与えられようとしている。いやがうえにも期待が高まろうというモノじゃありませんか。

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 「あなた方トルコサッカーは、急速な発展を遂げた・・その背景にはどんな要因があったと思いますか・・?」。監督会見で、そんな質問をしてみました。本当は、もっと具体的に、元ドイツ代表監督のユップ・デアヴァルを介してはじまったドイツとのサッカー交流による好影響について聞きたかったのですが、それではちょっと恣意的に過ぎるだろうから、質問を一般的なものにした次第。それに対して監督さんは、トルコサッカー協会が様々な意味で自立したこと、各地方サッカー協会のアクティビティーが活性化しただけではなく、彼らとトルコサッカー協会の協力関係が深まったこと、トルコ全土のスカウティングシステムが向上しただけではなく、目指すサッカー、良いサッカーに対して共通理解が深まっていること等が挙げられました。まあ、一般的な質問だから、一般的な答えしか返ってこないのも当然です。

 ということで、その答えに満足できなかった私は、、公式の記者会見が終わった後、トルコ監督を廊下まで追いかけ、ドイツ語で話しかけました。彼がドイツ語に通じていることは知っていましたからネ。

 「たまには、フェネルバチェのクリストフ・ダウム監督と会うことはありますか?」「ええ、会いますよ」「私は彼の友人なのですが、ケンジからよろしくとお伝え願えますか?」「もちろんです。引き受けました」「ところで監督・・先ほどの記者会見での質問なのですが、本当は、トルコサッカーとドイツサッカーとの関係について、本当はどのような捉え方をしているのか聞きたかったのですよ。トルコは、ドイツから多大な影響を受けていますよネ?」「そうね・・そうかもしれない・・」

 そこで会話が途切れ、急に彼が、そそくさと控え室へ戻ってしまったのです。そこには、たしかにドイツのコーチ連中から(特に組織プレーについて)良い影響は受けたけれど、それを消化し、トルコの実状に合ったカタチで応用したのはオレたちだ・・という自負を感じていた湯浅でした。もちろん、そんな彼らの深層にある自負を確かめたかったというのが私の質問の本当のところだったわけです。トルコ人コーチ連中の意識については、留学当時に知り合ったトルコ人の仲間たちから聞かされていましたからね。

 とにかく、この試合でトルコセレクションチームが魅せた、組織と個が高次元でバランスしたハイレベルなサッカーはインプレッシブそのものでした。そんな高質サッカーを指揮した監督さんが、「日本チームは、本当に気に入った・・素晴らしいサッカーを展開するチームだ・・」と褒めたものだから、他の記者から「どんなところが素晴らしく、気に入ったのですか・・?」という質問が飛ぶのも当然の成りゆきでした。

 その質問に対して、監督さんが次のように答えました。「個人的なポテンシャルの高い選手たちが、組織プレーでも非常にハイレベルなプレーを展開していた・・そんな組織プレーと個人プレーのバランスが素晴らしいと思った・・この日本チームは、もっともっと発展をつづけるだろう・・」なんてネ。

 私は、そんなスマートな発言を感慨深く聞いていたものです。何せ私は、25年前のトルコサッカーを知っていますからね。それは、「個」ばかりが前面に押し出された、エゴとエゴがぶつかり合う低次元サッカー・・まったくシンクロしない個人プレーのモザイクサッカー・・。そんな彼らが、いまでは、そんな洗練されたアイデアをさらりと言ってのけるのですから・・。あっと・・そんなことを言ったら、「湯浅も生ける化石だ・・」なんて揶揄されかねませんよネ。もちろんいまでは、トルコの現状を自然に受け容れ、彼らの先進サッカーに敬意を表している湯浅なのです・・念のため・・。




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