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オリンピック代表・・まあ壮行マッチとしては良い内容になりました・・(日本対ベネズエラ、4-0)・・(2004年7月30日、金曜日)

今野と松井が復帰したけれど、我らがオリンピック日本代表は、どうも先日のオーストラリア戦の後遺症で、ちょっと自信レベルを減退させてしまったのかもしれない・・。立ち上がり数分間の日本代表の攻勢の後、徐々に攻めあぐんでいくプロセスを見ながら、そんなことを思っていました。

 オーストラリア戦では、結果だけじゃなく、内容でも「実質的な差」を体感させられてしまいましたからね。そのことは、グラウンド上の選手たちが一番切実に感じているはず。やはり世界トップはまだまだ遠い存在だ・・それも、フッボールネーションの代表チームではなく、オーストラリアのオリンピック代表に体感させられてしまった・・ってな具合だったのかもしれません。

 立ち上がりの日本オリンピック代表は、たしかにベネズエラを押し込みはしたけれど、結局はウラスペースを突いていくような決定的チャンスメイクはかなわず、徐々にベネズエラに押し返されてしまうのです。とはいっても、このベネズエラ代表は、フル代表とは全く別物チーム。サッカーのレベルが、日本代表よりも一回りは低級なのですよ。守備でも、攻撃でも。そんなベネズエラでしたが、日本代表の実力を「感じ」ながら、徐々にペースアップできていったのは、逆に日本チームの足が止まり気味になったからでした。

 それにしても日本の攻撃は、どうしてベネズエラの貧相な守備ブロックを崩していけないのか・・。この日本代表チームもまた、仕掛けの基調は組織パスプレーなのですよ。もちろん、組織パスプレーによる仕掛けを効果的なものに出来るかどうかは、ボールがないところでのプレーの質と量に掛かっている。それが、うまく活性化してこないというわけです。足許パスをいくらつないでも・・また単発のフリーランニングを仕掛けても・・相手守備ブロックを崩していけるはずがない・・。

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 昨日、同じ国立競技場でおこなわれたジェフ対レアル・マドリー戦では、結局マドリーが実力差を魅せつけました。たしかに局面でのエスプリテクニックは世界最高峰だったけれど、ジェフとの「実質的な差」の本質的なところは、やはりボールがないところでの仕掛けプレーの量と質にあったとするのが正論でしょう(多分オシムさんも同感のハズ・・彼は試合後の記者会見で、レベルが上がれば上がるほどプレーはシンプルになるものだ・・なんて述べていた!)。

 ところで、レアルの同点ゴールを決めたマドリーのイケメン、グティー。そのゴールを決める前にも、何度もボールがないところでの忠実でクレバーな全力ダッシュや爆発パス&ムーブで、レアルのチャンスをお膳立てしていましたよ。

 ここで何が言いたいのかって!? それは、世界全体のサッカー動向を俯瞰して観察すれば明らかなことなのですが(今回のヨーロッパ選手権やアジアカップも含めて・・)、各国の実力差がどんどん縮まっているということです。もちろんその背景には、世界的な情報化の波が不可逆的に進行しているという事実がある・・だからこそ、世界中で共通したイメージトレーニング素材が普及する・・。

 たしにか「個の才能レベル差」はまだまだ大きいとはいえ、戦術的な発想のレベルは、世界中で「高次平準化」してきていると感じるのです。だからこそ、勝負はボールがないところで決まるとか、ボールがないところでのアクションの質と量が勝負を決めるといった普遍的コンセプトに対する理解の深さと、それをベースにした高質な(ボールなしの)プレーコンテンツが、世界中のサッカーシーンで問われるようになってきているというわけです。

 この「事実」は、選手たちのレベルが高くなればなる程、より深く実感されるはずです。何せレアルに対しては、すべてのチームが全力で向かってくるわけですからネ。だからこそ、人とボールがよく動くサッカーを、より発展させなければならない・・だからこそヤツらのボールなしのプレーが、よりダイナミックに、よりハイレベルに進化させなければならない・・というわけです。もちろんそれは、個の実力差を、チームの総合的な実力差として表現できるためにね・・。

 まあこの試合では、立ち上がりの数分で、ジェフのマルキーニョスがキャノンフリーキックを決めて先制したという背景もありました。だからこそ、レアル選手たちが繰りひろげるボールなしプレーの量と質がどんどんと高揚していった・・だからこそ、世界の才能が繰りひろげるボール絡みのプレーが格段に活かされつづけた・・というわけです。

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 ちょっと脱線し過ぎですが、とにかくオリンピック日本代表のプレーに、組織パスプレーで「肝」になるボールなしプレーへの意識が十分に高揚していないと不満タラタラの湯浅だったのですよ。やはり日本代表チームにとっては、自分が主体になった「ボールがないところでの全力ダッシュ」の量と質こそが成功のキーポイントなのです。

 そんなフラストレーションがつのってはいたのですが、ゲーム自体は、徐々にチーム力の差が明確に現れるようになっていきます。日本チームが、ベネズエラ守備ブロックのウラを突いていける雰囲気を演出できるようになっていったのです。そして前半36分。見事な先制ゴールが決まります。

 中盤でボールをもったトゥーリオが、スパッとトラップして振り向き、すぐさま最前線へタテパス(ワンのパス)を出したのです。もちろん自身は、そのまま、パス&ムーブの全力ダッシュを仕掛けていく。それがよかった。そのトゥーリオの「爆発ダッシュ」がベネズエラ守備陣の視線と意識を引きつけたのです。だからこそ、同時にタテへ全力ダッシュを仕掛けた大久保がまったくフリーで決定的スペースへ走り抜けられたというわけです。それにしても松井の落ち着いたラストロビングパスは見事の一言でした。トゥーリオからの強いタテパスをピタリと止めて振り向き、一瞬で状況を把握してのラストパスですからね。拍手!!

 とはいっても、それからは、後半の立ち上がりも含めて、またまたカッタるい展開になってしまう。これは何らかの刺激が必要だ・・。山本監督が動きます。大久保に代え、オリンピックチームの突撃隊長、田中達也をグラウンドに送りだしたのです。達也が展開するメリハリの効いたリスクチャレンジプレーによる刺激は、もう抜群。彼が交代出場した3分後には、達也のダイレクトミドルシュートで得たコーナーキックから追加ゴールが生まれるのです(平山のヘディングゴール・・平山のヘディングは、どんどんと進化をつづけている・・意識することこそが進歩の絶対的なバックボーン!)。

 そして後半31分には、達也の「突撃ドリブル」からの見事なラストクロスが高松のヘッドに合い(三点目)、その13分後には、田中達也自らが、豪快なミドルシュートを決めてしまうのです(四点目)。とにかく田中達也は、完全に「危険な男」としてチーム内で認知されていると感じます。だからこそ、彼の存在自体がチームに勇気を与えられるというわけです。彼が良いカタチでボールを持ったときの周りの動き出しも活発になると感じるのですよ。何か、レッズでの岡野のような刺激プレーヤーになっていると感じます。とにかく、本大会での彼の活躍が今から楽しみです。

 



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