それほどローマの出来は散々なものでした。まさに、相手を甘く見た怠慢サッカー。そんな高慢なプレー姿勢だから、FC東京にコケにされるのも当然の帰結でした。一体、何本ありましたっけ、東京の絶対的チャンスは・・? FC東京は、ポストシュートやバー直撃シュートだけじゃなく、何度もローマ守備ブロックを振り回した決定的チャンスメイクを魅せつづけたのですよ。素晴らしく魅力的で力強いサッカー。それも、オリンピック代表と日本代表に「五人」もの選手を取られていながらですからね・・。
攻守にわたる運動量を増やさなければ、いくら個の総合力で上回っていたとしても、ゲーム内容で相手(FC東京)を凌駕できるはずがない・・。この試合は、ローマの連中にとっても、世界中のサッカーが「高次平準化」していることを体感できたという意味で良い学習機会になったことでしょう。まあ、とはいっても、新顔(若手)が多く入っていたから、攻守にわたるコンビネーション(イメージシンクロ)もままならないのも道理か・・なんていう同情も心の片隅にはありましたけれどネ。またもっと言えば、このゲームにしてもクラブマネージメントが組んだ日本遠征だったのだろうし、選手にとってはいい迷惑だったに違いない・・!?
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さあ、次だ、次だ!! とことんサッカーが好きな湯浅は、アジアカップ優勝の余韻にひたっている暇を惜しんで「次のストーリー」を探すためにまっしぐらなのです。ということで、まず気持ちを改めるという意味も含めて、プレシーズンマッチを覗きに行くことにした次第。でもこの日は二試合ある。東京対ローマ、横浜対レッジーナ。さて・・。
でもまあ、ファーストステージではFC東京をあまり観ていなかったこともあったから味の素スタジアムへ単車を飛ばすことにしました。またそこには、代表を五人抜かれたFC東京だから、彼らが抱える注目の若手が先発するに違いないという興味もありました。そしてその決断は大正解だった・・。
この試合でのターゲットは、何といってもFC東京の梶山陽平。U19大熊ジャパンでも才能を発展させつづけている若武者です。ローマを相手に、中盤の底として、どのくらいの実効プレーができるのか・・また、ローマが観光気分だったらボロボロにしてやるという攻撃的な意志を前面に押し出すような中盤でのリーダーシップを発揮できるか・・等々、興味は尽きません。
そして立ち上がりの15分・・。フムフムという納得プレーと、何故もっと行かないんだ!という不満プレーが相半ばしていました。まあ、不満プレーについては、攻守にわたって「もっとリスクにチャレンジして行けるだろう!」という期待感の裏返しだったわけだけれど、そんな不満も、前半21分に魅せた、ローマ期待の若手ディフェンダー、メクセスとやりあった「1対1の競り合い」によって吹っ飛んでしまいましたよ。とにかく見事な競り合い(最後は競り勝ってボールを奪い返した!)。その力強さは、梶山のひょうひょうとしたプレー姿勢とは別次元のモノでした。そんな、冷静さと爆発パワーのメリハリも素晴らしい! それ以降、「梶山をコアに据えた観戦」が楽しくて仕方なくなったことは言うまでもありません。やはりヤツには、群を抜く潜在能力が備わっている・・。メクセスとやり合った「刺激プレー」の直後から、急に彼のプレーが活性化したと感じましたよ。ゲームを通した自信と確信レベルの深化というわけです。
それにしても梶山の「バランシング感覚」は秀逸です。もちろんそれは、いつも書いているように、様子見が主導する、足を止めた消極プレーがメインの「パッシブなバランシングプレー」ではなく、積極的な意図が集約されたバランシングプレーのことです。そこに、次を狙いつづけるという明確な意図があるからこそ、次の全力ダッシュ(勝負プレー)が出てくるというわけです。パッシブなバランシングの場合は、「その場」で様子を見ながら対応するという低級なリアクションプレーですからネ。その視点でも梶山の「戦術的な発想レベル」は高い。
そんな優れたバラシング感覚が、ハイレベルな「読み能力」に支えられていることは言うまでもありません。それがパスカット能力の高さにつながっている。何度彼が、素晴らしい「インターセプト」を魅せたことか。その都度、「オ〜〜ッ!」という野性の叫びが口をついていましたよ。まず、自分の守備アクションを相手に「見せ」、次の瞬間、スッと身を翻してパスコースに入ってボールをカットしてしまう・・。まさにスマートを地でいったクレバープレーじゃありませんか。それも相手はローマですからね、感嘆せざるを得ない・・。
それだけではなく、攻撃参加したときも実効あるパフォーマンスを披露していましたよ。後半立ち上がりに魅せた、右サイドを駆け上がり、クロスフィニッシュを決めそうになったシーンは素晴らしかった。もちろんパス能力にも秀でている。シンプルなタイミングだけではなく、相手の視線と意識を引きつけてしまうタメからのクリエイティブな仕掛けパス(クサビのパスやサイドチェンジパスなど)でも高い能力を発揮するのです。ルーカスやケリーも、彼を信頼してバックパスを戻していると感じますよ。まあ、大したものだ。
とはいっても、まだまだ、攻守にわたって「リスクチャレンジ」を仕掛けていくパワフルな積極プレー姿勢という視点ではもの足りなさ過ぎる。まだまだ「無為な様子見シーン」が目立ち過ぎるのですよ。梶山が積極的に「行けば」、攻守にわたり、いまよりも数段上の実効プレーを展開できるはず・・だからこそ、期待感の裏返しとしての不満の方が強く残ってしまう・・というわけです。
彼は、今野泰幸から、積極プレー姿勢を学ばなければなりません。とにかく、梶山陽平の才能あふれるプレーと無為な様子見シーンのギャップを体感しながら(そのギャップにフラストレーションをつのらせながら)、例によって、才能があるからこその心配がつのっていった湯浅なのです。