サスガに大熊さん、中盤守備、人とボールの動きなど、よくトレーニングされた(ハイレベルに意識作りされた)チームだ。コンセプトが明快だから、選手たちもやりやすい(全力でプレーしやすい)に違いない。それでも、ちょっとステレオタイプという印象が・・。このことについては、試合後の監督会見で、大熊さん自身が、「前半は、よいペースのように見えて、実際は、突き通す意志のチカラとか、心理・精神的なパワーが足りなかったから、韓国の守備を崩しきることができるという雰囲気は感じられなかった・・」と述べていました。まあ、そういうことだ・・。
ボールの動きにしても、ある程度フリーでボールを持つ(=スペースの活用!)という攻撃での「目標」と、シュートを打つという「最終目的」を達成するための明確なプロセスになっている・・とは感じられない。要は、目標・目的イメージがちょっと脆弱だということです。だから、ボールを軽快に動かすことが目標・・なんていうふうに感じられてしまったりする。彼らは、もっと、攻撃における「本当の目標と本当の目的」をしっかりと意識することで、チャンスを逃さず勝負のパスが出るような(パスレシーバーも、チャンスを逃さず積極的にスペースへ飛び出すような!)メリハリのある攻撃を仕掛けていかにむけばならなかったということです。
とはいっても、とにかく中盤ディフェンスが素晴らしく機能しているから、ゲーム支配という視点では韓国にまったく後れをとることがない。でも、どうも仕掛けプロセスがネ・・。そして結局、カレン・ロバートの超速ドリブルに頼ったり、ちょっと「放り込み」気味のクロスを放り込むことに頼ったり・・。それにしても、前半23分に苔口卓也(セレッソ)がチャレンジした左からの勝負ドリブルは素晴らしかった。彼の場合は、その後も、何度もドリブル突破チャレンジが機能してましたよ。この前半23分のシーンでは、苔口へ鋭いタテパスを出した水本裕貴(ジェフ)のプレーも特筆でした(彼の安定したディフェンス、ヘディングの強さも特筆!)。そのパスが正確で強かったからこそ、苔口もタイミングよくドリブル勝負に入ることが出来た・・。このパスシーンを見ながら、やはり「足許パス」は、できる限り強く(もちろん正確に・グラウンダーで!)というのが大原則だということを反芻していた湯浅でした。
それにしても、韓国の前半のメンバーはテストという意味合いが強かった?! 何せ、17歳の選手が5人、16歳が1人。19歳の選手は、すべてベンチスタートだったのですからね。まあ後半勝負ということなんだろうな・・。
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そして後半の立ち上がり、来た来た、韓国が・・。彼ら独特の、スピリチュアルエネルギーを相手にぶつけるような勢いで仕掛けてきたのです。この「現象」を言葉で表現するのは難しいのですが、とにかく、全員が、リスクチャレンジのチャンスを狙っていると表現しておきましょう。そして、チャンスを見つけた者は、例外なく「全力ダッシュ」で仕掛けていく。攻撃においても、守備においても・・。もちろんその代表的な現象は、ボールがないところでのアクションに現れてくる・・。常に、オレがボールを奪ってやる・・とか、オレが決定的パスを受けてやる・・とか、オレがシュートまでいってやる・・とか、オレがボールを奪い返してやる・・とか、とにかく全力で、そして自分主体で仕事を探しつづける韓国選手たちなのですよ。こんな韓国だから、チーム全体のダイナミズムが何倍にも増大するのも当然の成り行きというわけです。
それに対し、日本チームは、相手の急激なダイナミズムのパワーアップについてゆけず、どうしても無為な様子見というシーンが増えてしまう。要は、「アッ、行かれてしまった・・」といったシーンが連続することで、攻撃や守備での勝負シーンで、常に「数的に優位な状況」を演出されてしまうのですよ。韓国が「行き」はじめたら、彼らの方が多く感じられる・・っちゅうわけです。
そうか、韓国の「気合エネルギーの乗った攻勢リズム」については、こんな表現がいいですかネ・・全力ダッシュを主体に、運動量が何倍にもふくれ上がり、攻守の勝負シーンで常に数的優位状況を作り出すから、選手たちも、観ている方も、韓国選手の方が数人多く感じてしまう・・なんてネ・・。
また、韓国選手たちは、見て考えるのと同時にアクションを起こしているなんていう表現もできる。それも、「攻勢リズム」に入ったときは、攻守にわたって、彼らの勝負アクションのほんどが全力ダッシュなのです。
例えば、目の前でこんなシーンを見せつけられました。攻めつづける韓国チーム・・でもある選手がミスパスをしてボールを日本に奪い返されてしまう・・すかさずタテパスをつなぐ日本チーム・・ただこの韓国選手は、瞬間的に反転し、全力ダッシュで、そのタテパスを受けた日本選手へ大迫力のプレッシャーをかけるのですよ・・あわててバックパスをする日本選手・・同時に、再び反転し、そのバックパスに対し、全力ダッシュで守備アクションに入る「同じ韓国選手」・・。そんな迫力プレーのオンパレードなのです。もちろん日本選手たちも、全力ダッシュはするけれど、その頻度にはかなり差があると感じる。いや、頻度というか、効果的な「集中度」といった方がいいかもしれません。とにかく韓国の選手たちは、ここが勝負所となったら、嵩(かさ)にかかってガンガン全力ダッシュを(勝負のリスクチャレンジプレーを)繰り出してきますからネ。
もう何度も書いているように、全力ダッシュこそ、自分自身の「確信レベル」の現出なのです。単純に言えば、韓国選手たちの方が、攻守の目的を達成するための「確信プレー」が多いということでしょうね。
そして、そんな「爆発プレー」の連続を実を結ばさせてしまうからすごい。後半10分の、このゲーム唯一のゴール・・。ゴールを挙げた韓国選手の、バックアップのダッシュの勢いには、確実にスピリチュアルパワーがあった。
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そしてその後、やっと日本代表に本物の勢いが乗ってくるのです。そこには、我々のアイデンティティーを強化してくれるほどの立派なコンテンツが詰め込まれていました。私は、「アイデンティティー」を、何か、誇りに思えるモノをもっていること・・なんていうふうに定義していますので・・。
「あの、後半30分のサッカーを90分間つづけられることが我々の目標ということでしょう・・」。大熊監督も、そのコンテンツには手応えを感じていたようです。まさにその通り(まあ一点をリードする韓国が、少し守りに入ったこともあったけれどネ・・)。そこでの日本の若武者たちは、ボール絡みでも(勝負ドリブルや、タメキープなど)、ボールがないところでも、吹っ切れたリスクチャレンジプレーを繰りひろげました。だからこそ、韓国の守備ブロックを振り回すこともできたし、少なくとも4-5本の、決定的ゴールチャンスも作り出せたのです。それにしても、カレン・ロバート(ジュビロ)や平山相太、はたまた水本(ヘディング)や苔口のシュートシーンは、決まらない方が不思議というほどの絶対的チャンスばかりでしたよ。ホント、信じられない・・。
まあ、引き分けが順当だったのかもしれないけれど、そこはサッカーだから・・。それでも、この30分間に日本代表が魅せたコンテンツは、確実に彼らの自信・確信のバックボーンの一つになったに違いない・・。それほど、立派なダイナミックサッカーでした。
とはいっても、そのなかで一人だけ、私が、そのプレーをものすごく不満に感じていた選手がいました。後半10分に中山博貴(パープルサンガ)と交代して出場した梶山陽平(FC東京)。そのことを記者会見で大熊監督にぶつけました。
「梶山陽平ですが・・あの素晴らしいリズムのなかで、彼だけが仕事を探そうとしていなかった・・あれほどの才能を持っているのに、あれでは宝のもちぐされになってしまう・・もっと走って、もっと積極的に仕事を探さなければ・・その点について大熊さんは、どのように考えていますか?」。
それに対し大熊さんは、すぐに反応しました。「そのとおりだと思います。彼にも、いま会見に出る前に言ってきたところです。自分の良さを活かすためにも、もっともっと自分主体でプレーしなければ・・攻守にわたって、もっともっと自分から仕掛けていかなければ・・。とにかく彼には、これからも機会があるごとに言いつづけるしかないと思っています・・」。まあとはいっても、大熊さんは代表監督ですからね、後はクラブ監督のウデに期待するしかない・・。
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この「U19日本代表」チームは、今年の9月にマレーシアで行われる「AFC(アジアサッカー連盟)」主催のU20選手権に出場します。その後、来年(2005年6月10日から7月2日まで)には、オランダで行われるワールドユースに出場する予定(もちろんアジアU20選手権で勝ち抜けばのハナシ・・ワールドユースへのアジア枠は「4カ国」!)。そして2008年オリンピックのベースになる。
まだまだ多くの課題を抱えているとはいえ、大きな潜在力(発展キャパ)を備えたグループ。選手個々のチカラの単純総計力は、期待を持つのに十分だし、監督も、若く(もうオッサンかな??)聡明で、素晴らしいパーソナリティーの大熊清さんですからね。成長を継続的に観察するのに耐えるチームだと思いますよ。