でも結局は「3-1」の敗戦。「ほんの小さなところの差・・」にやられてしまった・・。でも世界は、この「ほんの小さなところ」でのせめぎ合いで勝負が決まってしまうから、それこそが「世界との最後の僅差」の本質ということになるというわけです。ちょっとした気の緩みからの「安易なアタック」でマークを外されてしまったり・・瞬間的なボールウォッチングを狙われて、マークすべき相手が「消えて」しまったり・・相手の「やる気のないキープ」という雰囲気に自分も一瞬気が弛んで間合いを空けてしまったり、安易なアタック動作の逆を突かれて間合いが空いてしまっところをドカン!とシュートを打たれたり・・もちろん、相手の素晴らしいフェイク動作に振り回されるというシーンもあります・・。
とにかく「世界との最後の僅差」は多岐にわたるし、状況・状態は千差万別だから、それらを言葉で表現するのは本当に難しい作業なのですよ。やはり、ビデオを編集することで、「僅差シーン」をピックアップし、それを材料にして選手たちとの地道なイメージトレーニングを重ねていくしかないということです。本当に、世界との最後の僅差を詰めていく作業は大変だ・・でもだからこそやり甲斐がある・・というわけです。
ということで、たしかに縮まってきてはいるけれど、やはり、攻守にわたる戦術的な発想レベルの僅差は体感させられました。もちろん個人能力の差は、まだまだいかんともし難いレベルにありますけれどネ。
まあ、ブラジル選手たちは、若いし、ヨーロッパのほとんどの有力クラブのスカウトが集結しているということで、気合が入っていたということでしょう。それに、以前とは違い、攻守にわたる組織的なプレー(ボールがないところでのプレー)がうまく機能しなければ自分たちの売り物も披露できないという「メカニズム」をよく理解するようになってきているということで(?!)、全体的には、組織プレーと個人勝負プレーが、まあまあのバランスを保っていたと感じました。もちろん彼らも、攻守にわたるボールがないところでのプレーも、スカウトたちの重要な評価対象だということをよく理解していますしね。それもこれも、世界的な情報化の為せるワザっちゅうわけです。
ちょっとハナシが逸れました。さてゲーム内容ですが、お互いに「シャモのつつき合い」という最初の20分間を過ぎたあたりから、徐々に全体的な「ゲームの流れの構図」が見えてくるようになりました。しっかりとボールを動かしながら、個人勝負を仕掛けていけるポイントを探るブラジル。それに対し、あくまでも組織パスプレーを前面に押し出す日本代表。日本の場合は、その組織プレー基調があるからこそ、兵藤や苔口、はたまたカレン・ロバートたちが魅せる「唐突な」ドリブル勝負が活きてくるというわけです。
でもまず守備から。日本代表は、守備ブロック全体を押し上げながら、とにかく高い位置でボール奪取勝負を仕掛けようとイメージしています。もちろん、互いにポジショニングバランスを基調に、早い段階でマンマークへ移行するというイメージをベースにして。そんな日本代表の組織ディフェンスがうまく機能しているからこそ、ブラジルは、バスでウラスペースを突いていけない・・だからこそ、時間が経つにつれて強引なドリブル突破にチャレンジしていくシーンが増えてくる・・逆にだからこそ、日本は、最後までしっかりと人数をかけた攻撃を展開しつづけることができた・・。
それにしても日本のディフェンス戦術は、本当によく機能していました。サスガに大熊監督。とはいっても、決して彼らはロボットではない。戦術的な有機連鎖プレーを意識しながらも、そこに常に、臨機応変な「個の判断」が絡み合っています。そんな自分主体の応用アクションこそが、実効ある「守備意識」を支えているというわけです。
それに、相手を「潰す」ところでは、しっかりと身体を預けて「止めて」いましたしね。決して安易に諦めたり「行かせたり」せず、ここは止める!という個の判断で、しっかりと相手を潰してしまうのですよ。もちろんファールになるケースが多いけれど、どのゾーンで潰れていいかという判断も含め、それも彼らにとっては、守備戦術イメージとして織り込み済みというわけです。だからこそ周りの味方も、「あそこでアイツは置き去りにはされない・・」という確信を持つことができる・・だからこそ、次の高い位置での守備プレーをイメージしつづけることができる・・。
ブラジルのディフェンスですが、マンマークへの移行(ポジショニングバランスのブレイク!)は遅めですよね。もちろんその背景が、個の勝負能力の高さに対する自信であることは言うまでもありません。そして最終勝負シーンでは、忠実に、そしてクリエイティブに、ボールのないところでの守備プレーも確実に実行していく。スピードとパワー、それに守備テクニックも上質だから、日本代表が、組織プレーによってブラジルの最終ラインを振り回すというシーンを演出することはほとんど出来ませんでした。
とはいっても、実効ある組織ディフェンスだけではなく、攻撃でも、ゲームを見終わった後でも明確に印象に残るくらいハイレベルな局面でのドリブル勝負や、素早く正確なクロスからのチャンスメイクはありました。だからこそこの試合が、日本選手にとっての自信ソースになったに違いないと確信できるのですよ。
日本代表の若武者たちは、結果とは関係なく、この試合でも、グラウンド上のギリギリの勝負シーンを自分たちの発展の糧にしてしまった・・。頼もしい限りじゃありませんか。
そしてこんな学習プロセスを経て、いつかは、世界の超一流に対して本物の互角の勝負を挑めるようになる・・。「J」が発足したここ10年間における日本サッカーの長足の進歩プロセスを反芻し、再びイメージ体感しながら、「その日」が近いことを実感していた湯浅でした。