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UEFAカップ決勝・・バレンシアの完璧なサッカーにテーマを見出していた湯浅です・・(バレンシア対マルセイユ、2-0)(2004年5月20日、木曜日)

試合をライブで観戦してからベッドにもぐり込んだのですが、どうも寝付けない・・。ということで、1-2時間ほど横になってからゴソゴソと起きだし、鉄は熱いうちに打て・・と、ポイントを絞ったレポートを書くことにしました。本当は、レポートするかどうか迷っていたのですが、「そこ」に、いま私が抱えているテーマにつながるコノテーションがあったものだから・・。試合の結果や現象的プロセスについては、UEFAのホームページなどを参照してくださいネ。

 それにしても、今シーズンのリーガエスパニョーラのチャンピオンでもあるバレンシアは見事な試合はこびを魅せてくれました。堅実&クリエイティブな守備・・具体的なディフェンスプレーにおいて個々の守備イメージが見事な有機連鎖を魅せる・・例によっての鋭いカウンター・・人とボールがよく動く組み立てから仕掛けへの流れ・・また、数的に有利な状況での選手たちの高質な覚醒レベルと、それを基盤にしたクレバー&効果的なサッカー内容・・等々、ほれぼれさせられました。

 今シーズンのリーガエスパニョーラでは、試合内容に「浮き沈み」が激しく、結局最後はディフェンスブロックが機能不全に陥ってしまったことで沈没したレアル・マドリーと比べ、バレンシアは、チーム戦術的に、また選手タイプでもうまくバランスしていました。まあ、中盤ディフェンスブロックの差・・ということでしょうね。そこの機能性こそがチームの心臓ということです。いつも書いているように・・。

 でもこのレポートでは、守備にまでハナシを拡散させるのではなく、両チームの攻撃アイデアにポイントを絞り込みたいと思います。それも、カウンター状況ではなく、組み立てをベースにした仕掛けという「流れ」のプロセスにスポットを当てようと思うのです。そう・・流れ・・。

 要は、バレンシアの攻撃には、本当の意味での「クリエイティブな流れ」があり、マルセイユにはなかったという事実にスポットを当てるということです。

 人とボールが活発に動きつづけることで、フリーでボールを持つ味方(=仕掛けの起点)の演出など、常にスペースの有効活用を明確にイメージするバレンシア・・それに対し、あくまでも「個の勝負能力」を前面に押し出す攻撃をイメージするマルセイユ・・だから彼らの攻撃では、ボールは足許へしか動かないし、人とボールの動きが連鎖するのも、ワンツーやスルーパスなどの最終勝負シーンだけということになってしまう・・これだったら、強力なバレンシア守備ブロックをこじ開けることなど叶うはずがない・・。

 バレンシアは、組み立て段階から、本当によく選手たちが動きつづけます。しっかりとトラップし、素早く展開パスを回して次のスペースへ「パスレシーブのダッシュ」をつづける・・マルセイユの守備ブロックはマークを堅実&クレバーに受けわたすけれど、バレンシアの人の動きが活発すぎるから、どうしても最前線や二列目で「フリーな相手」が出てきてしまう・・バレンシアは、すかさず「そこ」へボールを動かしてしまう・・この瞬間、マルセイユ守備ブロックは「後手」に対処せざるを得なくなる・・要は、一人がボールを持つ相手へのチェックへ行かざるを得ないから、どうしても守備ブロックの、人数とポジショニングがアンバランス気味になってしまう・・そして出来た「穴」を、動きまわっている別のバレンシア選手が活用してしまう・・というわけです。そんな、人とボールがよく動くバレンシアの「組み立てから仕掛けへの流れ」を観ていて、前半の10分くらいで既に、「これはサッカーの質が違う・・」なんて実感させられていた湯浅だったのです。

 マルセイユの絶対的ストライカーであるドログバは、たしかに素晴らしい選手だけれど、結局そこが、選手たちの仕掛けイメージにおいて「両刃の剣」になってしまったということなんでしょうね。ドログバに代表される「個のチカラ」を活かすこと、それを前面に押し出して仕掛けていくことを意識し過ぎるマルセイユ・・だから足が止まり気味になるだけではなく、ボールを持っても、どうしてもこねくり回し気味になってしまう・・バレンシア守備ブロックにとっては、マルセイユの攻撃が個の勝負プレーのツギハギだし、ボールが足許から足許へしか動かないから、守りやすいことこの上なかったに違いない・・もちろん局面のドリブル勝負で置き去りにされてしまったら、その状況を狙っていた周りのマルセイユ選手たちの動きが瞬間的に倍加することでピンチになるけれど、それにしても、バレンシア守備陣はしっかりとイメージして常に効果的なカバーリング陣形を構築していたから・・。

 組織プレーイメージと個人勝負プレーイメージの高質なバランス・・。バレンシアのサッカーを観ながら、そのテーマの背景ファクターとメカニズムに思いを巡らせていた湯浅でした。まあそこには、組み立てから仕掛けにかけた「流れ」の意味というテーマもありましたけれどネ。

 それにしてもバレンシアは強かった。自分たちのコンセプトを貫きとおすという視点で、本当に良くトレーニングされたチームでした。そのことは、特に、数的に優位になった後半のゲーム内容に如実に現れていたと思います。

 彼らのチーム戦術的な目標イメージは、攻守にわたって常に数的に優位な状況を作り出す・・というものでしょう。そんな原則的プレーイメージが強固に浸透しているからこそ、人数が一人多くなった後半においても、それに甘えて活動パワーが落ちるのではなく、逆にそのことで、彼らの活動性が増幅したと思うのですよ。こうなったら、グラウンド全体に、もっともっと数的に優位な状況を演出しつづけてやる・・なんていう選手たちの意志が見えてくる・・だから、ラファエル・ベニテス監督の確かなウデも見えてくる・・。

 両チームの攻撃イメージ(攻撃のチーム戦術)に大きな違いがあったことで、楽しく観戦できた湯浅でした。




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