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チャンピオンズリーグ・・「レアル・マドリーという現象」、その本質は?(レアル・マドリー対ユーヴェントス、1-0)・・最高のゲームコンテンツ(バルセロナ対チェルシー、2-1)・・(2005年2月25日、金曜日)

まず何といってもレアル・マドリーが魅せた美しいサッカーコンテンツから入らなければなりません。たしかにゴールは、前半31分のエルゲラの(CKからの)ヘディング一発だけだったけれど、とにかく内容では「あの」ユーヴェントスを圧倒しました。何度ゴールチャンスを作り出したことか。とにかく私は、決定的シュートチャンスを作り出すプロセスにレアル・マドリーというチームがサッカーの歴史に刻みつづける本質的な魅力があると思っているのです。組織パスプレーと魅惑的な「個人エスプリプレー」の高質なバランスをベースに人とボールが素晴らしいハーモニーで動きつづけるサッカー・・。

 ルシェンブルゴが監督に就任してからのレアルには、サッカー人としての期待がふくらみつづけています。何せ、マケレレを失い、グラヴェセンを獲得するまでのレアルのサッカーは、どんどんとバランスと輝きを失っていきましたからね。「あ〜〜あっ、これで美しいレアルが壊れてしまった・・個人的には、能力的にも、年齢的にもまだまだ行けるのに・・やっぱりサッカーは本物のチームゲームだから難しいよな・・まあ、チームのなかでもっとも重要なポジションである中盤の底の機能性が失われてしまったんだから仕方ないよな・・でも本当に残念で仕方ない・・彼らには、世界中のサッカーマンのために、もっともっとイメージトレーニング素材として機能して欲しかったのに・・」なんて落胆したモノです。それが、グラヴェセンという、インテリジェンスに溢れ、クリエイティブプレーにもある程度の能力を有する(上手すぎないことが大事!)汗かき・猟犬タイプの守備的ハーフを獲得したところからガラッとベクトルが変わっていったというわけです。

 もちろんそれには、ルシェンブルゴという優れた指揮官の存在も忘れるわけにはいきません。たぶん彼は、1982年スペインワールドカップにおいて歴史に刻み込まれた夢のチーム(ジーコを中心にしたスーパークリエイティブなブラジル代表)をイメージしているに違いない・・?! とにかく、チームが内包する能力に対する確信と、ルシェンブルゴ自身のリスクへチャレンジしていく積極マインドとの素晴らしいコラボレーション・・なんていうことを思っていた湯浅です。

 さてグラヴェセン。彼の「チームにとっての価値」については、これまで何度も書きました。でも難しいよね、万人が同じイメージ基準で彼のプレーコンテンツを評価できる・・ということは。もちろん私は、グラヴェセンが魅せつづける、攻守にわたる「組織プレー・ファンクション」を、いまの日本代表に投影しながら観察しています。「誰がグラヴェセンになるのか・・」。なかなか面白いテーマですよネ。そんな「バランス感覚」でもジーコの手腕に期待しないわけにはいかない・・。ということで、私が言う「レアル・マドリーという現象」の本質は、攻守にわたる、組織プレーイメージと個人プレーイメージの高質なバランスということになるわけです。

 さて、もう一度グラヴェセン。彼が魅せつづける「チーム価値プレー」でもっとも大事なところは、何といってもチェイス&チェックによる効果的な「守備の起点」の演出。ラウールを中心にした最前線からの積極ディフェンスをイメージ描写のベースに、次、その次と「イメージ・チェイス」しつづける・・そして実際にタイミング良くチェックがはまる・・相手攻撃イメージの抑制・・それこそが「守備の起点」・・そしてその起点をベースに、周りのジダンやベッカム、はたまたフィーゴといったミッドフィールドの仲間たちだけではなく、最終ラインの選手たちが守備の輪を狭め、効果的な「状態と位置」でボールを奪い返してしまうというわけです。

 そんな効果的なディフェンスが機能しているからこそ、次の攻撃での「イメージ描写」がより膨らみつづける・・だからこそレアル的な美しさが蘇った・・そしてそのことを実感する選手たちが自信を取り戻し、レアル的なサッカーをすることに楽しみを見出し、「それ」に没頭するという善循環が回りはじめる・・だからこそ才能たちも、次の守備にも全力で取り組み、ボールがないところでの汗かきディフェンスにも性を出せるようになる・・そんな「善循環サイクルの復調」というポジティブな現象の大きな部分をグラヴェセンが担っていることを体感しているチームメイトたちは、彼へのレスペクトとしてボールを集める・・もちろんグラヴェセンは、シンプルに展開パスを操りつづける・・それもあって、レアル的な魅惑サッカーがどんどんと輝きつづける・・もうこのあたりで止めておこう・・フ〜〜ッ、なんてネ・・。

 チャンピオンズリーグの第一報でした。後で、アーセナルに快勝したバイエルン・ミュンヘンのこととか、水曜日のゲームとかについて「書き足す」ことになるかも・・

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 ということで、バルセロナ対チェルシーについてもショート&ショートコメントを書き足すことにした次第。とにかく、テレビ画面に映し出される全てに見所満載。ボール絡みでも、ボールがないところでも。ゲームコンテンツが素晴らしすぎて、1分も観ていたら疲れてしまうというドリームマッチなのです。両チームが繰り広げる、攻守にわたる組織プレーと個人プレーの高質なバランスサッカー・・ってな具合。あくまでもシンプルに人とボールを動かしながら、最終勝負となったら、ロナウジーニョが、ドロクバが、ダフが、シャビが、デコが、ジュリが、夢のような個人エスプリ勝負をミックスしてくる。いや、ホントに素晴らしい・・。

 これは書かずにはいられない・・ということでキーボードに向かったけれど、さて・・。とにかく書きたいコンテンツが多すぎる。そこでハタと考えた湯浅は、やっぱり両チームのディフェンスに言及することにしました。何せ両チームともに、イングランドとスペインリーグを、勝ち点だけではなく、失点でもリードする首位クラブですからね。特にチェルシーの失点数は特筆。順位で二位につけている(失点数でも二位の)マンUの「16失点」に対して、チェルシーのそれは僅か「8失点」。この失点数についてはプレミアリーグの順位表を参照してください。その凄さが分かろうというものです。

 ということで、バルサが展開する攻守にわたる素晴らしい「ハーモニーサッカー」についてはこれまで何度か言及してきたから、ここはチェルシーの守備について短くコメントしようと思った次第なのです。まあ、油を扱うアブラモビッチの「金満クラブ」という視点じゃシンパシーはゼロだけれど、今シーズンから指揮を執るモウリーニョのサクセス・シークレットの一端がかいま見えるから面白い。

 彼らの守備イメージは、「4X3X2」という配列を維持するポジショニングバランス・オリンエンテッドなボール奪取システムかな?! それが、殊の外「美しく」機能しつづけるのです。もちろん中盤ディフェンスのリーダーはマケレレだけれど、そこを「後方の頂点」に、その左右をランパードとティアーゴが支援し、前気味の二人(ダフとコール)もしっかりと前後左右のポジショニングバランスを保つことで、バルセロナが展開する、人とボールがよく動くなかで繰り出す個の勝負という危険な仕掛けをうまく抑制している。まあとはいっても、何度かはバルサが仕掛けるクリエイティビティー満載の爆発オフェンスがチェルシーの堅牢守備ブロックを打ち破りかけたけれど・・(ここで言うのは、チェルシー守備ブロックが完全に振り回されるような流れのなかでのチャンスメイクのことですよ・・)。

 ボールへのチェイス&チェックアクション。その周りで展開される、集中プレスサポートアクションやパスを制限してしまうマーキングアクション、またパスカットアクションやボールがないところでの忠実マークアクション等など、それらの「ボール奪取イメージ」ファクターが、まさに有機的に連鎖しつづけるのです。要は、チェイス&チェックも含めた、相互のポジショニングバランスを「ブレイク」する勝負アクションと、次の「バランシング・アクション」とが、まさに流れるようにくり返されるというわけです。

 そんなだから、バルサも、うまくスペースを作り出したり、そこを使ったりすることができない。バルサの強みは、ロナウジーニョに代表されるクリエイティブプレイヤーたちが織りなす組織パスプレー(要は、上手い選手たちがしっかりと走りつづけることで人とボールをしっかりと動かすサッカーということ!)ですからネ。もちろん「それ」は、互いにボールのないところで勝負を決めようとする(いかに相手守備ブロックのウラスペースを、パスによって突いていくかという)仕掛けイメージのことなのだけれど、チェルシー守備ブロックは、素晴らしい先読み(ディフェンスでの読み能力)で、そのスペースを潰してしまったり、そのスペースを使おうとするボールがないところでのパスレシーブのアクションを抑えてしまったり・・。

 チェルシーが展開する「有機的に連鎖しつづけるディフェンスアクション(イメージ)」は素晴らしかったけれど、逆にそれは、バルセロナの攻撃が(彼らが擁する才能プレーが)素晴らしいポテンシャルを秘めていることを観ている方が明確に感じられたからこそ目立ったとも言えそうです。

 この試合については、サッカーコンテンツには色々な視点の楽しみ方がありまっセ・・ということが言いたかった湯浅でした。あ〜〜、面白かった。

 



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