前半を見終わって思っていたこと。「あ〜あ、またまた究極のバランシング&ポゼッションサッカーがプラン通りにゲームを制してしまった・・たしかに局面プレーの美しさは見応え満点だけれど、あくまでもそれは個の才能ベース・・互いのプレーイメージが有機的に連鎖しつづけ、人とボールが流麗に動きまわるという本来のサッカービューティーからすれば、勝負至上の究極人為(戦術)ドラマということか・・まあそれも、世界的、歴史的な視野に立てば、サッカー文化の大きなところを担っているわけだし、様々な考え方があるからこそ本物のドラマが生まれてくるということなんだけれど・・」なんてネ。でも、その後のゲーム展開に眠気も吹っ飛び、テレビ画面に私のスピリット(スピリチュアル・エネルギー)が吸いこまれ釘付けになってしまった。ゲーム終了後は、疲れきって一寝入り。そして2-3時間ほどでゴソゴソと起き出し、緩慢な動作でキーボードに向かったという体たらくなのです。
それにしても前半は、見事なまでに完璧なミランのツボ展開でしたよね。セットプレーからの先制ゴール・・その後は、守備ブロックをよりソリッドに固めて必殺カウンターで追加ゴールを積み重ねていく・・。前段で、ミランのサッカーを「究極のバランシング&ポゼッションサッカー」なんて表現したけれど、具体的にはこんな感じですかネ。完璧にバランスした「ボックス守備ブロック」で相手の攻撃を追い込み、ここぞのアタックや協力プレスでボールを奪い返してしまう・・次の攻撃では、カウンターや一発勝負ロングパスが叶わなかった場合、とにかくまずしっかりとボールをキープする・・個のチカラは素晴らしいレベルにあるから、簡単にボールを失うことはない・・一般的なイメージからしたら、まさにボールの停滞とか、こねくり回しなんていうふうに見えるミランの「ポゼッション」だけれど、もちろんその背景には悪魔の勝負イメージがうごめいている・・そして最後の瞬間、最前線との勝負イメージがピタリとシンクロした一発の最終勝負パス(スルーパスや中距離タテパスなど)が飛び出す・・スロー、スロー、クイック!!・・一つのゾーンでボールをキープし、相手守備ブロックの視線と意識を引きつけ、最後の瞬間、ノールックパスが、逆サイドの決定的スペースへ、相手ディフェンダーの視線を盗んで飛び出したシェフチェンコやクレスポへ飛ぶ・・なんていう感じですかね。いや、ホント、これじゃ相手はたまったモノじゃない。もちろん、ミランのトップ選手をマークするリバプールディフェンダーは、ミランのツボである最後の勝負パスタイミングをしっかりと「イメージトレーニング」していたに違いないけれど、そのウラを突いてしまうんだからネ・・。まあ、シャッポを脱ぎますよ。そして私は、この展開じゃリバプールはどうしようもないな・・なんてベッドへ戻ろうとしていたというわけです。でも・・
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ミランの攻撃に対して、オーソドックスに組織パスと個人プレーをうまくミックスするリバプール。ミランは、組み立て段階では、まったくといっていいほど、最前線プレイヤーの足許へ付けるタテパスは使わないけれど、リバプールは、その足許タテパスと(バロシュやスミチェルの)ポストプレーやワンツーによるタテのポジションチェンジもうまく活用しながら仕掛けていく・・。とはいっても、やはり「ツボ・パワー」では、ミランよりもかなり見劣りします。もちろん、ジェラードが絡む「リバプールの仕掛け」には世界レベルのパワーは感じるけれどネ・・。
だからこそ、リバプールの同点劇に目を見張らされたというわけです。ジェラードの、まさにこれぞピンポイントというヘディングシュート・・スミチェルの起死回生の中距離シュート・・そして、バロシュが描く勝負イメージを察してジェラードが繰り出したボールなしの勝負フリーランニング(マークが遅れたガットゥーゾが引っかけてPK!)・・。リバプールサポーターが放つ歓喜の雄叫びが、これぞフットボールネーションという本格感を伴って世界中へ響きわたりました。いや、ホント、凄い迫力ですよね。
とはいっても、その後の実質的なゲームコンテンツではやはりミランが優勢。例によっての、究極の「安定オフェンス」を展開するのです。そのなかで何度か決定的ピンチを迎えたリバプール。そして徐々にサポーターたちの雄叫びパワーが、サッカーの真実と対峙するかのように落ち着いてくるのです。「あっ、そうだ・・これはサッカーだったんだ・・いまは喜んでいても、最後の数秒で奈落の悲劇が待っているかもしれないんだっけ・・」。
それにしてもリバプールは立派な、本当に立派な闘いを展開しました。もちろんそれには、守備ブロックが試合中に学習し、ミランのツボを、より効果的に抑えられるようになったこともありました。ミランの「最終勝負イメージ」を、徐々に把握できるようになってきたリバプール守備ブロック。やはりテレビ画面のイメージトレーニングと、実際のグラウンド上では、学習機会のインテンションがまったく違うということです。それでも、試合数分前のシェフチェンコの絶対的チャンスなど、ゴール決定機を演出してしまうミラン。まあヤツらも大したものではあります。
とにかく、近年まれにみるエキサイティングな決勝に、心から入り込んでいた湯浅だったのです。この試合は、戦術的に掘り下げるオブジェクトとしても大変な貴重だと思っています。