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私も卒業したドイツのプロコーチ養成コース・・今年は「50回目」という記念すべきコースになりました・・(2005年1月18日、火曜日)

どうも皆さん。今回は、私が卒業したドイツ最高峰のコーチングスクールの開講式が行われるということで(2005年1月17日の月曜日)、そのことを軽く紹介しておくことにしました。それは、プロリーグ(ブンデスリーガ)の監督に就任できるというライセンスを取得するためのスクールです。

 このトップコーチングスクールの正式名称は「Fussball-Lehrer-Lehrgang」というのですが、まあ日本語では「サッカー教師(師範)養成コース」なんて訳せますかネ(日本ではS級ライセンスなんて呼んでいるとか・・)。通常は年間に一コース開催され、6ヶ月の履修の後に、1-2週間をかけた「国家試験」を受けることになります。私もこの国家試験に合格したから、ドイツサッカー協会からの卒業証書の他に、ドイツ(ノルドラインヴェストファーレン州)文部省からも正式な卒業証明書を受け取りました。またライセンスは、3年ごとに更新しなければいけません。

 このトップコーチングスクールに参加するのは大変なことです。まず子供を教えるライセンスを取得し、その後にコーチの実績を積んで「B級ライセンスコース」への参加資格を得ます。そこを卒業して、これまたコーチの実績を積み重ねて「A級ライセンスコース」を受ける資格を得るわけです。そして、同じようなプロセスを経て「トップコーチングスクール」への参加資格を準備する。でも、いくら参加資格が十分にそろったとしても、実際に参加の許可を得るのは本当に難しいのですよ。そんなわけで、「そこ」に参加してくる連中は、目に見える実績を積み重ねただけではなく、運にも恵まれた強者たちというわけです。

 もちろん毎回、往年のプロスター選手たちも参加します。今回は、皆さんもよくご存じの「アンディー・メラー」や、ドルトムントで活躍した「ハイコ・ヘルリッヒ」といったところが目玉でしょうかね。彼らはドルトムントでトヨタカップにも来日したし、ドイツ代表でも活躍したから日本にもファンが多いですよね。掲載した写真のなかに彼らがいるのだけれど、分かりますかネ? まあとにかく、ドイツのトップコーチ養成コースだし、彼らのような元のスター選手も参加していることで、メディアも取材にやってきます。開講式だったこの日の取材陣は、テレビとラジオ、雑誌や新聞が数社といったところでしょうか。

 それでも、写真でご覧になれるように、開講式の雰囲気は、あくまでも質素。とにかく質素。まさに質実剛健のドイツらしさがにじみ出ている?! 場所は、私の母校でもあるケルン体育大学の、ゲスト用レストランの一角です。このトップコーチングスクールは、ドイツサッカー協会がケルン体育大学の施設を借りて開催しているというわけです。

 開講式がはじまる前、写真のように受講生たちがたむろしている輪のなかに入っていきました。何せ私は、彼らの「先輩」ですからネ。もちろん先輩風を吹かせたわけじゃないけれど、何か、なつかしい雰囲気に引きつけられたというわけです。「オレは今から25年前にココを卒業したんだよ・・いまは日本でジャーナリストをやっている・・記事にしたいからちょっと写真を撮らせてもらってもいいかな?」なんてネ。

 話している内容は、もちろんサッカーのこと。それも、既に戦術的に深い、深いテーマにまで及んでいるグループもある。そんな雰囲気をハダで感じながらハッと思い出しました。「そうだ・・そうだ・・この行間のディスカッションこそが、トップコーチングスクールでのもっとも重要な学習機会だったっけ・・」。私のときもそうでした。とにかく授業の合間に仲間がたむろして話す内容の重要なこと・・。「そうだ、この行間ディスカッションこそが大事なんだよな・・」。そんな私の問いかけに、隣にいた受講生が、間髪いれずに「そうさ、それが大事なんだよネ・・」と相づちを打つ。そして私は、それも、議論が好きなドイツ人の「立ち話ディスカッション文化」が為せるワザということなんだろうな・・なんてことを思っていた次第。

 このトップコーチングスクールを仕切るのは、ドイツコーチ養成コースの総責任者エーリッヒ・ルーテメラー。私のコラムにも頻繁に登場する古くからの友人です。写真のなかで彼と一緒に写っているのは、これまた古くからの友人である事務局長のギュンター・シュタインケンパー氏。今回のトップコーチングスクールは、ドイツサッカー(コーチ)の育ての親、ゼップ・ヘルベルガーがはじめてからちょうど50回目にあたるということで、彼らから「絶対にオマエも顔を見せろヨ・・」と言われていたわけです。

 よく通る声で、ユーモアを交えながら開講式を仕切るエーリッヒ・ルーテメラー。彼は最後に、写真を撮るために会場内を動きまわっていた私のことも受講生に紹介してくれました。「あの日本人は、オレたちの良き友人で、ケンジというんだ。ヤツは、1981年に国家試験に合格したオレたちのコーチ仲間だよ」。そんな紹介を聞いていた受講生たちが、一瞬私を注視して静まりかえったものです。そう、1981年といえば、今から25年以上も前のことですからネ。それにしては私は若く見える・・と、いぶかしく思ったらしい(後で一人の受講生がそう言っていました)。私は、そんな一瞬の静寂を突くように、すかさずジョークを飛ばしてやりましたよ。それは、この地域のサッカー協会会長の挨拶のなかに登場した日本人を誉めたハナシに引っかけたもの(会長さんは、私が来ることを知らなかったハズだから、日本人が登場するハナシはまさに偶然!)。そのハナシの内容は、ボート競技(エイト)でドイツが日本に惨敗した・・日本人ははじめから一人が舵を握り、残りの7人がオールを漕いだけれど、ドイツチームは、7人が指示を出す役にまわり、実際にオールを漕いだのは一人だった・・そこで反省したドイツチームは、舵を握るのは一人にしたけれど、オール漕ぎの部長を一人置き、課長を二人置き、主任を一人置き、実際のワーカーは三人だけ・・そして今度も、前回よりも大差で日本に負けてしまった・・その示唆する意味をしっかりと把握して欲しい・・という教訓話でした。そこで私が、「その日本チームで舵を握っていたのはオレだったんだゼ!」なんていうジョークを飛ばしたというわけです。会場、爆笑・・。

 まあとにかく、笑いは人を健康的に、また創造的にするし、それによって開講式の雰囲気を和ませたという意味でも友人たちに貢献できたに違いないことで、ちょっと幸せだった湯浅でした。

 さて明日は、高原直泰が所属するハンブルガーSVの監督、トーマス・ドルとの独占対談です。人間的にも魅力溢れ、限りないポジティブシンキングのトーマス・・。いまから楽しみで仕方ありません。

 



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