もちろんそれには、周りのチームメイトたちがしっかりと動いていないということもあったけれど、普段の中田だったら、そんな寸詰まりの状況でも、止まっている味方の足許へ(特にタテ方向へ)ビシッという鋭いパスを「まず」通し、自ら爆発パス&ムーブで再びパスを受けて状況を活性化させるはずですからネ。それこそが、中田らしい、自らがコアになった「仕掛けの流れの演出」っちゅうわけです。でも立ち上がりの彼のプレーからは、そんな「ダイナミックなプレーイメージ」が感じられない。だからものすごく心配になったというわけです。あまりにも実戦から遠ざかってしまったことで、プレー感覚が、リカバーがままならないところまで落ち込んでしまったのだろうか・・。
新任のディーノ・ゾフ監督は、「しっかりと中盤でつなぐサッカーを」という明確な意志を示している・・そして「シンプルプレーの天才」中田英寿をミッドフィールドのコアと考えているらしい・・なんていう情報も入ってきていたから、逆に中田がそんな監督の方針を意識し過ぎているのかもしれないなんてことも考えていました。
でも結局「それ」は杞憂にしか過ぎなかった・・。15分を過ぎたあたりから、攻守にわたる中田のプレーに本来のキレが戻ってきたのです。やはりそのベースは、運動量と高い守備意識。ゾフ監督は、中田の基本的なポジションイメージを「やや下がり気味に」と考えているとか。大正解。これまで何度も危機を迎えた中田は、その都度ダイナミックな復調ドラマを誇示したわけですが、そこでのキッカケは、例外なく「実効ディフェンス」にありましたからネ。効果的な中盤ディフェンスが機能してはじめて、チームへの貢献度に対する自信と確信が(自己主張の心理ベースが)整い、次の攻撃に対する意識も活性化するモノ。これもまた、(マラドーナやジーコなどの大天才を除く!)誰にでも当てはまる普遍的なメカニズムなのです。
そして中田を中心にボールが動きはじめたことで、フィオレンチーナの攻撃が鋭さを増していくのです。シンプルにタテ方向への仕掛けの流れを演出したり、中盤でドリブル突破にトライしたり「タメ」を演出したりと、フィオの攻撃に効果的な変化を演出しつづける中田英寿。もちろん守備でも「ココゾ!」の鋭さを魅せます。
中田の守備センスは本当にいい。表現としては、「読みベース」のクレバーなボール奪取プレーが上手い・・ということになるでしょう。言い換えたら、ボール奪取へ向けての準備アクション(追い込み・・ゾーンの抑制など)から全力ダッシュ勝負アクションへの移行プロセスにおけるメリハリが一流だ・・なんていうことになりますかネ。とにかく、インターセプトへの入り方も含め、彼のボール奪取プロセスに対する感覚は特別レベルに入ると思いますよ。だから私のイメージのなかでは、彼の究極的な理想タスクは「本物のボランチ(攻守にわたる中盤のコントローラー)」ということになるわけです。いつも書いているようにネ・・。
日本代表だったら、稲本潤一、小野伸二と組んで、柔軟に、臨機応変に、中盤の底としてのタスクを受けわたせばいい。そんなポイントも、これからの日本代表に対する楽しみでもあるというわけです。
そんなふうに調子を上げていった中田だったけれど、後半に入ってからは、今度は徐々にプレーのダイナミズムを(最前線へ絡んでいくエネルギーを?!)失っていってしまいました。たしかに二本だけ、後方から攻め上がったシュートシーンはあったけれど、全体としてはネ・・。ちょっと残念。単なるパスデバイダー(ボールの供給役)になってしまった感のある中田英寿。どちらかといったら「ボールのこねくり回し」と責められても仕方ないシーンもあったりなど、そのプレーは、仕掛けアイデアのジェネレーターとか仕掛けの流れのコアといったイメージとはかけ離れたものになってしまっていました。
まだまだ本調子ではないということなのだろうけれど、まあとはいっても、基本的なプレーイメージはかなりよいレベルに復調してきていますからね・・。これからが楽しみというのは確かなことだから、ちょっと安心していた湯浅でした。
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さて次は中村俊輔。中田英寿と同じように故障から復帰しつつあるという状況ですが、プレーコンテンツはなかなかの好調を維持していますよ。試合がはじまった当初は、ちょっと足を止めた様子見プレーが目立ちすぎてはいましたが、数分もしたら、右サイドで最後尾まで戻ってボールを奪い返すといった本物の自己主張プレーも出てきましたしね。やっぱりディフェンスだよ、ディフェンス・・。「それ」が全ての基本だし、「それ」からゲームに入っていくという意識がもっとも大事なんだよ・・。
守備やボールがないところでの汗かきアクティブプレーがあるからこそチームメイトに信頼される・・だからこそ彼にボールが集まる・・だからこそ中村の才能が活きるし(ボールの動きの重要なステーションとしてのエスプリプレーが、仕掛けの流れにおける重要な変化ファクターになっている!)彼の自己主張プレーも発展しつづける・・。
それにしても中村のセットプレー危険度は世界レベルだよね。もちろん「直接」だけじゃなく「動きのなかで合わせる技術」も含めてネ。レシーバーも、彼のキックに対する信頼があるから、おのずとイメージシンクロレベルも向上していくということです。
またドリブル勝負にも実効コンテンツが詰め込まれている。足が遅いのはどうしようもないけれど、やっぱりサッカーはタイミングだよね。瞬間的には相手を置き去りにできる(フリーで正面を向いてプレーできる状況に入れる)からネ。
とにかく、パスもドリブルもタメも含めて、常にリスキーなチャレンジに入っていくという中村のプレー姿勢はいい。このところ顔つきもホンモノになってきたと感じるし、頼もしいよね。
何か、またまた意識が遠のきはじめた・・。大久保については、明日にでも観てみることにしますので・・。乱筆・乱文、失礼・・。
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ということで大久保。この時点での彼がイメージしなければならないもっとも重要なテーマは、なるべく多くボールに触ること。要は、ボールがないところでの(パスレシーブのための)動きをもっと活発にしなければならないということです。たしかに、最前線に「張り出し」ながら決定的スペースへの抜け出しを狙う感覚は相変わらず鋭い。でもそんな一発勝負を決めるためには、パス出し選手との勝負イメージがしっかりとシンクロしていなければならないから、もう少し時間がかかるはず。それよりも彼の場合は、とにかくまずボールに触ることをイメージしなければならないと思うのですよ。そして、局面プレーの頻度を高め、そこでの実効レベルを上げられるようになってくれば(味方へのアピール効果が上がってくれば)、おのずと一発抜け出し勝負(一発パスレシーブ勝負)もうまくタイミングが合うようになってくるはずです。
とにかくこの試合での大久保は、最前線で「タテパスを待つ」という状況が多すぎた。それでは偶発チャンスを待つだけと批判されても仕方ない。もっと、自分から「パスを呼び込む(要求する)」動きを活発にしなければいけません。そんなボールがないところでの自己主張こそが、主体的に成功を呼び込めるようになることの大前提なのですよ。タテパスを受けたときにハードマークされていたら、もちろんシンプルに「落とし」て爆発パス&ムーブに入っていく・・そんな忠実プレーをくり返していれば、必ず意図が連鎖する組織プレーベースのチャンスが自分のところにも転がり込んでくるものです。
もちろんある程度フリーでタテパスを受けることができ、状況が許すようだったら(少しでも前にスペースがあったら!)、迷わず、大久保本来の強みであるドリブル突破にチャレンジしていかなければなりません。失敗を恐れることなく(何度失敗してもビビることなく!)、とにかくエゴイスティックに、そしてガムシャラにドリブル勝負を仕掛けていかなければならないのです。
ところでドリブル勝負。それを仕掛けていくときに持てるチカラを全て絞り出せるかどうか(時には120%のチカラを絞り出せるかどうか)については、やはり心理・精神的なファクターがモノをいいます。逆に言えば、一度でも自信をなくしたら大変。特にレベルが高いフットボールネーションで自信を失って個人勝負プレーが縮こまったら、その深みから這い上がるのはものすごく難しい作業になるのですよ。
ドリブルといった「個人アクション」で勝負を仕掛けていく場合、とにかく吹っ切れた(全力の)動作ができなければなりません。少しでも中途半端な心理が顔をのぞかせた次の瞬間には、アクションのダイナミズム(パワー)が縮こまってしまうものなのです。こうなったら、その個人アクションが成功するはずがない。そして次にも同じことをくり返すことで心理的な悪魔のサイクルに落ち込み、結局は、ボールを持っても安全プレーしかしないような逃げのプレーに終始するようになってしまうというわけです。
とにかく大久保は、なるべく多くボールに触ることで、組織的な仕掛けの流れにしっかりと乗ったり、組織的な最終勝負の起点になったりするだけではなく、そのなかでも「常に」個人ドリブル勝負の機会を狙いつづけていなければなりません。彼には才能がある。でもその才能を常に100パーセント発揮できるようにならなければ、すぐにでもサバイバル闘争に呑み込まれてしまう・・。とにかく今の大久保にとっては、「吹っ切れた勝負マインドを活性化すること」がもっとも大事なことだと思っている湯浅なのです。フットボールネーションでの勝負なのだから、守りに入ったり慎重なプレー姿勢だったら確実に呑み込まれてしまうよね・・