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ヨーロッパの日本人・・05年最初のレポートは、プレーイメージを発展させつづける中村俊輔・・(2005年1月6日、木曜日)

木曜日という変なウイークデイの05年スタート(カップゲームなどの他のスケジュールとの兼ね合い?!・・スミマセン、調べてないから分かりません・・)。でもその変なスケジュールのおかげで、ヨーロッパ出張前に「日本代表ナカナカコンビ」のプレーが見られると喜んだモノでした。でも結局、中田英寿は背中の故障が癒えずに出場できず・・。残念だけれど、躍進著しい中村俊輔のプレーだけでもとことん楽しんでから出張にでかけようとゲームを観はじめた次第。

 そしてゲーム立ち上がりの前半6分に飛び出した中村俊輔の「ゴッツァン・ゴール」。クロスに合わせてゴール前スペースに走り込んでいたからこその美味しいゴール。要は、相手GKが低い「トラバース・クロス」を押さえることができず、ファーポストサイドへこぼれたところに中村俊輔が走り抜けていたというわけですですが、その走り方が、ニアポストサイドへの走り込みから急激ターンしてファーポストサイドのスペースへ動きつづけたというものだったのですよ。だからこそ、「You deserved it!」。

 この試合での中村は、インフルエンザ明けで体調は万全ではないとのこと。フム・・。とはいっても、特にボールのないところで率先して仕事を探そうとする姿勢には、このところの好調を支えている「鋭い意志」が込められていると感じます。実際には結果を出すところまでいけないにしても、そのクリエイティブなプレーに、中村の積極的な意志(勝負イメージを描写しつづける姿勢)が感じられるというわけです。

 その意志は、もちろん積極的な守備プレーとしても現出します。たしかにボール絡みやボールがないところの守備でフィフティーに競り合ったらフィジカル的に勝てないことの方が多いけれど、クレバーな「漁夫の利」狙いのプレーでは存在感を発揮していましたよ(もちろん忠実なチェイス&チェックアクションも活発だけれど・・)。要は、味方が競り合っている状況にタイミング良く参加してボールを奪い取ってしまう(かすめ取ってしまう)守備プレーが上手いということです。それも、競り合いシーンに参加するために20-30メートルは平気で戻ってくるのですからね。以前のプレー姿勢から比べれば、考えられないほどのイメチェンっちゅうわけです。

 攻守にわたるボールがないところでのプレー姿勢(≒勝負イメージの描写姿勢≒考えつづける姿勢)が大きく発展したということなんですが、とにかく攻守にわたってスッ、スッと効果的に勝負シーンに絡んでいく(自らが勝負シーンを演出する)プレーは小気味よいことこの上ありません。後方からボナッツォーリのアタマ目がけてロングボールが飛ぶ・・そのボールが蹴られた次の瞬間には「勝負意志が詰め込まれた全力ダッシュ」をスタートしている中村俊輔・・そこでヘディングパスが通らず相手にボールを奪われたら、すぐにターンしてボールを持つ相手をチェイスしていく・・。いやホント、小気味よい。

 とにかく、中村俊輔のプレー姿勢の「ヘンシ〜〜ン現象」には、インテリジェンス・ボールゲームであるサッカーの大事な普遍的コンテンツが包含されていると思っている湯浅なのです。彼が呈示しつづけている意識の活性化は、彼の「考える能力の高さ」を如実に証明しているわけですが、何がそのキッカケになったのか・・何が原動力だったのか・・。「これだけ出来る」のに何故以前から「やらなかった」のかという視点も含めて、ポジティブな発展を遂げた中村俊輔の「内容」を把握することには意義がある・・。

 ここで再び中村のプレーコンテンツに戻りましょう。彼のボール絡みのプレーも、例によって才能の宝庫。見ていて楽しい限りです。もちろんクリエイティブプレーの実効レベルが着実に上がってきているのも、ボールがないところでのプレーの質が向上しているからに他なりません。中村自身が、そんな組織チームプレー(汗かきプレー)の実効レベル向上を自覚しているからこそ、より思い切ってドリブル勝負(リスクチャレンジ)にも入っていけるし、より吹っ切れた伸び伸びプレーが出来るというわけです。最終的にミスになったとしても、チームメイトの誰も「斜に構える」雰囲気がない・・。心理的な善循環のリソースは、やはり攻守にわたる組織チームプレーしかないということです。

 また中村のセットプレー。どんどん危険度を増していると感じます。いくつものパターンを持っているし、そのイメージが周りの味方とピタリと一致する。例えばコーナーキック。ピンポイントでボナッツォーリたちのアタマに合わせるだけではなく、ニアポスト勝負とか「一山越えた勝負」とか、中央で待ち構える味方が「動きつづける」パターンもあるわけですが、特に動きのなかで勝負を仕掛けていくパターンでは中村に対する信頼を感じます。一度などは、ボナッツォーリともう一人がニアポストへ爆発ダッシュしたことで空いた中央スペースへ、後方からもう一人の味方(たぶんテデスコ)が飛び込んでくるという決定機を作り出しました。オトリと実質フィニッシャーが動きつづけ、その動きにピタリと合うボールが供給される。素晴らしいよネ。

 後半40分に交代するまで存在感を発揮した病み上がりの中村。なかには、勝負なのに「行かない」という気抜けシーンもあったし、足が止まってしまった時間帯もあったけれど、全体的なプレーコンテンツに対する印象は上記したとおりのポジティブなものでした。彼自身も、自分のプレーに自信を深めているに違いありません。だからこそ心理的な善循環がまわりつづけている。このまま善循環サイクルを拡大させていけば、本当に「世界の上澄み」へのブレイクスルーを果たせるかもしれない・・。

 



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