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05_ヨーロッパの日本人・・今週は、中村俊輔と中田英寿・・(2005年10月24日、月曜日)

中村俊輔はフラストレーションを溜めているだろうな・・。今節のキルマーノック戦(セルティックのアウェーゲーム)を観ながら、そんな思いを強くしていました。何せ、中村俊輔に良いカタチでボールが回ってこないのですからね。イメチェンする以前は、ボールに触れないのは自業自得という面の方が強かったわけだけれど、この試合のように、効果的にディフェンスにも絡むし、ボールがないところでもしっかりと組織プレーに貢献しているのにも関わらずですからネ。

 スコットランドのプロリーグは、テクニカルというよりも、パワーの方が強調されることは周知の事実です。とはいっても、攻撃と守備の「目的」は同じですからね、それに貢献するプレーが否定されるはずがないし、攻撃の変化という視点でも中村俊輔の「魔法」は大いなる価値があるはず。またそのことは、グラウンド上の仲間が一番よく体感しているはず。でもうまくボールが回されてこない。ちょっとおかしいな・・最初の頃は、(レインジャースとのダービーマッチは別として)チームメイトが(パスターゲットとして)彼を捜すという雰囲気がプンプンしていたのに・・なんてことも考えていました。まあ、たしかにスコットランドでは、攻守の目的を達成するための「プロセスイメージ」に少し異なる部分があることも確かな事実ですからね。その意味で、まだまだ中村の魔法の価値が、そのプロセスイメージを凌駕する(中村俊輔の仕掛けイメージが、仲間のそれをリードする)というところまで到達していないということなのかもしれませんね。

 それでも、この試合の中でも時間が経つにつれて、徐々に中村の機能性が着実にアップしていったのも確かなことです。難しい判断だけれど、この試合では、中村の方が「セルティックのプロセスイメージへ近づいた」という見方の方がより正確かもしれません。いずれは中村が、仕掛けイメージの大きなところをリードするまでに成長しなければならないわけだけれど、その視点でも、まず既存の主流プロセスイメージを尊重するのも大事なことです。何といっても彼は、決して「マラドーナ」じゃないんですからネ。今はまだ、目標へ向かうプロセスベクトル上にある中村俊輔。これからが楽しみです。あっと・・一番楽しんでいるのは彼自身か・・。

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 さて中田英寿。スゴイね、ホントに。まさに解説の必要がないっちゅうくらいの大活躍じゃありませんか。でもまあ、数行くらいは、彼のプレーコノテーション(言外に含蓄される意味)を「言葉で表現する」ことにチャレンジしましょうかネ。

 キーワードは、やっぱりシンプルプレーの天才(このことについては拙著「サッカー監督という仕事」を参照してください)。この試合では、攻守にわたるシンプルな発想と素晴らしい「実効力」とでも表現しましょうかね。サッカーは、自由であるからこそ複雑なボールゲームだけれど、だからこそシンプルにプレーすることが一番難しいのです。それは、選手のインテリジェンスのバロメーターでもあります。それこそが中田英寿に対する評価のもっとも重要な部分なのです。ここからは、例によってのキーセンテンスを羅列します。

 攻守にわたり、中田が絡む(彼が主役の)ボールタッチシーンが連続する・・そしてそのほとんどに、攻守の目的を達成するための実効コンテンツがテンコ盛り・・まず何といってもディフェンスが素晴らしい・・そのハイレベルなボールがないところでの汗かきディフェンスとボールを奪い返す技術には目を見張らされる・・ボール奪取勝負のキースポットに素早く入り込んで仕掛けるクレバーなアタック・・相手ボールホルダーと競り合いながらのスマートなボール奪取・・特筆なのは、その守備プレーを次の攻撃の起点としてうまく機能させていること・・先、その先を明確にイメージした実効ディフェンスが目立ちつづける・・そして攻撃・・シンプルなダイレクトパスによって何度も決定的シーンを演出する中田英寿・・また自らがコアになった危険なコンビネーションもリードしつづける・・とにかく事前のイメージ準備が素晴らしい・・それだけではなく、シュートシーンを直接演出したり、自らがシュートを打ったり(ボルトン決定機のほとんどは中田絡みだった!)・・そして、自らゴールまで決めちゃう・・

 時には(本物の!)ボランチとして、時にはチャンスメイカーとして、また時には前気味リベロとして、臨機応変にプレーイメージ(プレーコンテンツのバランシングイメージ)を調整しながら、既にチームの「攻守にわたるイメージリーダー」として機能しはじめた中田英寿。そんな彼の大活躍に舌を巻いていた湯浅だったのです。




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