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ヨーロッパの日本人・・本物のブレイクスルー間近の高原直泰・・幻の「ナカナカ対決」・・ほろ苦いデビューの中田浩二・・(2005年3月7日、月曜日)

いいネ〜〜、高原直泰。そのプレーぶりからは、自信&確信オーラが目に見えるじゃありませんか。守備でも、攻撃でも・・。ボールがないところでの大きく効果的なアクションこそが、ボール絡みの実効プレーを支える絶対的バックボーン・・っちゅうわけです。ところで、このゲームを、放送予定を変更してまでも放送してくれた「J Sports」に対して感謝・・なのです。

 それにしてもハンブルクの「AOLアレーナ」のピッチは相変わらず荒れている。今年1月にアレーナを訪問したときも芝の荒れが目立っていたのですが、そのときこんなことを思ったものです。「これは、スタジアムの設計ミスだよ・・日光が十分に入ってこないじゃないか・・これでは芝がうまく育たないのも当たり前だよな・・」。もちろん私は専門家じゃないから、もしかしたら的はずれなことを言っているのかもしれないけれど、とにかくAOLアレーナのグラウンドは常に「緩い」し、芝が均一に育っていない(部分的に枯れている?!)ことは確かな事実だから・・。

 ちょっと蛇足だったけれど、ホームスタジアムの芝はクラブの顔ともいえますからね、ちょっと苦言を呈したくなってしまった湯浅なのです。もし「AOLアレーナ」の設計について詳しくご存じの方はご連絡を請う・・なんてネ。

 さて、高原。継続的な好調プレーのベースは、やはり最前線からの積極ディフェンスとボールなし状況での高質な積極アクションコンテンツにありそうです。守備では、前半38分にこんなシーンがありました。左サイドでボールを持ったレーバークーゼンのプラセンテ(アルゼンチン代表)・・その瞬間、高原が猛然とチェイスを仕掛ける・・切り返されても、まったくその勢いが衰えることがない・・ねばり強い全力ダッシュとアグレッシブな競り合い・・そして最後はプラセンテからボールを奪い返してしまう(ボールを奪われたプラセンテが必死のタックルでタッチラインにボールを蹴り出した!)・・。素晴らしく頼もしいダイナミックディフェンスでした。そのアピール効果は絶大だったに違いありません。

 そして、当たり前だよ・・といった普通の「勝負顔」で次の攻撃ポジションへ移動していく高原。本格感・・?! まさにソレだね。いい顔しているよ。ホントに逞しい。ボールを奪い返した後の攻めでも、自信と確信にあふれる勝負プレーを展開できるのも道理といったところ。ボールをもったときには、もちろん勝負プレーだけではなく、冷静な安定シンプルパスを回すシーンも多いけれど、それにしても、以前のような「逃げの雰囲気」とはまったく違う。安全な展開パスを出すにしても、常に「次の勝負シーン」をイメージしつづけているから、その準備プレーだと確信させてくれるのですよ。

 攻守にわたって全力ダッシュのオンパレードという、強烈な意図が込められた主体プレーを魅せつづける高原。間近に迫った彼のブレイクスルーを「予感」させてくれるじゃありませんか。高原については、前節のヘルタ・ベルリン戦をベースに「スポナビ」でもコラムをアップしましたので、そちらも参照してください。

 また、ここまで高原のパフォーマンスがアップしてきた背景に、ハンブルガーSV監督トーマス・ドルの優れた心理マネージメントがあったことについてはもう何度も書いた通りですが、それについては、彼との「The 対談コラム」をお読みいただければ幸いです。

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 さてフィオレンチーナ対レッジーナ。「ナカナカ対決」を期待していたけれど、先発したのは中村だけ。中田英寿はベンチスタートということになりました。

 試合は、力任せにガンガン押し上げてくるホームのフィオレンチーナに対し、その前への勢いをクレバーに、そして着実に受け止め、例によってのスマートな組織プレーで蜂の一刺しを狙うレッジーナといった構図でしょうか。そんなゲームコンテンツで目立つのは、何といっても、フィオレンチーナ前線の天才ミッコリがくり返すゴリ押し個人勝負と、そんな力任せの仕掛けをカッチリと受け止めるフィオレンチーナの優れた組織ディフェンスといったところなのです。

 中村については、押し込まれていることで、うまくボールに触ることができないという状況がつづいていたのですが、後半の立ち上がり早々にフィオレンチーナが先制ゴールを入れてから状況が変わりはじめます。それまで戦術プレーに徹していたレッジーナが、ようやく前への勢いをリリースさせはじめたのですよ。そして人とボールがスムーズに動きはじめるなかで中村もうまく機能するようになっていく。でもね、さてここから中村が活躍する・・なんて思っていたそのタイミングで交代させられてしまったのです。この中村の交代については、ちょっとビックリさせられました。中村は組織パスプレーのなかでチカラを発揮するタイプのテクニカル系選手ですからね、先制ゴールを奪われたことでやっと攻撃にも人数が出てくるようになったことで、組織プレーにも勢いを載せられるようになってきたのに・・。まあ仕方ない。

 ところでフィオレンチーナのチャンスメイク。結局、そのほとんどすべてが組織パスプレーを基盤にしたものということになりました。ゴリ押しの力任せ個人勝負ではラチがあかなかったということです。やはり攻撃コンセプトでもっとも大事なモノは「変化」。個人勝負が主体になってもいいけれど、そこにタイミングよく組織パスプレーもミックスさせていくことで(それによる変化を選手たちがイメージできて!)はじめて攻撃の実効レベルを本当の意味で高揚させることができるというわけです。もちろん基本は、個人プレーをミックスしていくことで変化を演出するという発想ですがネ。

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 さて、中田浩二。予定のキックオフ時間に強烈な雪が降ってきたことで20分ほどゲームスタートが遅れました。キックオフされたときには既にグラウンドは雪景色。試合球も赤のカラーボール。中田にとっては厳しい条件でのデビュー戦となりました。厳しい条件?? もちろん両チームの選手たち全員が同じ条件でプレーするわけだけれど、でも悪い自然条件だからこそ本物の実力が試されるという側面がある・・その視点じゃ、まだチームやフランスリーグに慣れていないし、フランス語もまったく出来ないという中田浩二にとっては、仲間たちの信頼を勝ち取るという意味でも厳しい船出になった・・という意味です。

 厳しい自然条件(グラウンドコンディション)で組織コンビネーションが出にくいからこそ、選手たちは普段以上に「個の勝負」を全面に押し出すでしょう(同じチーム内でも自己主張のせめぎ合いになる・・中田のデビュー戦なのに・・)。組織プレーイメージの方が強い中田浩二にとっては、ちょいと厳しい条件が重なった。あっと・・それに、強豪サンテティエンヌのホーム(中田のマルセイユにとってはアウェー)ゲームということもある。まあ、そんな厳しい条件だからこそ、中田浩二にとって、存在感アップの最高の機会だとも言えるけれどネ。脅威と機会は、常に背中あわせなのですよ。

 でもゲームがはじまってすぐに、こんなことを考えざるを得なくなってしまって・・。「あっ・・この厳しい条件は、中田の実力アピール機会という視点でネガティブ方向に作用している・・これは、中田浩二が、ナカタになれるまでには大変だ・・まあ逆に、そんな厳しい環境だからこそ、中田浩二にとっては、本物のブレイクスルーを達成するための理想的な試練とも言えるけれど・・」。

 フラットスリーという守備のチーム戦術において、左サイドを任された中田浩二。逆の右サイドは、シルヴァン・ンディアイエ。この布陣でサイドプレイヤーに期待されるプレーは、サイドゾーンでの堅実なディフェンスだけではなく、サイドゾーンでの積極的な仕掛けプレーです。「そんな評価対象プレー」で、中田とンディアイエでは、まさに雲泥の差になってしまって・・。

 堅実で、時にはリスキープレーにもチャレンジするという効果的なディフェンスをベースに、攻撃では常に最前線に顔を見せてボールを持ち、ドリブル突破チャレンジやタメからの決定的パス等々、大きな存在感を発揮するンディアイエ。それに対し、味方の信頼がまだ十分ではないことで、パス自体をもらえない中田。またボールを持っても、どうも逃げ腰のパスぱかりが目立ってしまう。そんな逃げパスだったら、相手に簡単に「次のパスレシーバー」を読まれてしまうのも道理。そして残るイメージが、「中田がビビッたパスを出したから、そんな逃げパスを受けた味方がトラブルになってしまった・・」なんていうことになってしまう。それに彼がボールを持っても、「あっ、アイツはパスしか狙っていない・・」という雰囲気を振りまいてしまうから相手にとって怖くも何ともないし、すぐにプレスを掛けられてバックパスで逃げるしかなくなってしまう。フムフム・・。

 またディフェンスにしても、最初の勝負シーンの内容が良くなかったことで(相手の単純なワンツーで抜き去られ決定的クロスを上げられてしまった)、どうもペースが上がってこない。もっとリスクにチャレンジしてボール奪取勝負に持ち込まなければならないのに、相手の攻撃の流れを「追いかけ」て基本的な守備ポジしションに入るばかりで、積極的なボール奪取勝負シーンはなかなか出てこない。これではアピールの機会にもならない・・。

 でも後半は、良くなってきましたよ。やはりサッカーは本物の心理ゲーム。徐々に雰囲気に慣れてきたということでしょう。全力ダッシュで戻りながらのスライディングタックルとか、ズバッとオーバーラップしながらのクロスや自らがコアになったコンビネーショントライとか、はたまた決定的スペースへのフリーランニング(決定的スルーパスのレシーブアクション)とか、攻守にわたって「意志のほとばしり」が感じられるプレーも観られはじめたのです。決定的なパスレシーブ場面では、相手GKと接触したことで文句を言われ、それに対しても「積極的な意志をほとばしらせる顔つき」を通したしネ。もちろん「まだまだ」だけれど、試合のなかで学習し、プレーコンテンツが(主体的に?!)積極的になっていったことは大きく評価できる・・。

 ちょっと厳しいコメントになってしまいました。こちらは、プロとしての意志をふり絞って書き綴っているわけです。これもまた、私が彼の実力を高く評価し、大きく期待しているからこその批評態度というわけです。この厳しい現実からいかに中田浩二が這い上がったくるのか・・。彼には、この厳しい現実を乗り切れるだけの、物理的な能力だけではなく、インテリジェンスや心理・精神的な強さも備わっているはず。フランスリーグもなかなか面白いし、これからが楽しみになってきました。フィリップ(トルシエ)も、自分が連れてきた中田浩二だから使わざるを得ないでしょうしね。とにかく中田浩二が、はやく「ナカタ」になれることを祈りつつ、「頑張れ中田浩二!」。

 



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