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05_ヨーロッパの日本人・・素晴らしいデビューを果たしてポジティブベクトルに乗った中田英寿・・(2005年9月16日、金曜日)

「ヨ〜〜シッ!!」。そのときガッツポーズがでましたよ。立ち上がりの1分23秒。中田のファーストタッチが、目の覚めるようなインターセプトだったのですからネ。

 それが起きたゾーンは、ハーフウェイライン上の左サイド。スッ、スッとポジションを修正しながらパスコースへ寄っていく中田。そして相手がタテパスを出す直前のタイミングで、ズバッとパスコースへスライディングをかけたのです。そして見事なインターセプト。その直後には、タテへ仕掛けていった味方の攻めの流れに乗って、またまた相手からボールを奪ってしまいましたよ。「まず」ディフェンスからゲームに入っていく・・それこそが攻守にわたるプレーのリズムを高揚させ、味方の信頼もアップさせる・・。そんな実効メカニズムを着実に踏襲する中田のプレー姿勢に対して、自然とガッツポーズが出ていた湯浅だったというわけです。

 そして今度は攻撃。3分に自らコーナーキックを蹴った後、こぼれ球が再び中田へ回されてきます。それを、例によって背筋をピンと立てた状態で一発コントロール(完璧ルックアップ状態・・相手は簡単には飛び込んでこない!)。そして次の素早い切り返し動作でスパッと左へ運び、間髪を入れずにファーポストゾーンへ最終勝負クロスを入れるのですよ。それがまたすばらしいクロスになる。最後は、CKの流れで最前線に残っていたブルーノ・ヌゴッティにぴたりと合いました。爽快な一連の「起点プレー」じゃありませんか。特に前述のクロスボールがよかった。それも左足で送り込んだんですからネ・・。

 とはいっても、そんな、期待レベルが盛り上がる派手な立ち上がりにしては、その後は、思ったほどに彼が目立つシーンの頻度が高まってこない。もちろん攻守にわたる「ボールがないところでのアクションの量と質」については言うことないのですが、どうも味方が、その効果的な動きをイメージできていないと感じるのです。

 中田の中盤パートナーであるオコチャや、最前線のターゲットマンとして機能するデュフにしても、どうもボールをこねくり回し過ぎる傾向がある。ということで、うまく中田がイメージするテンポでの組織プレーが機能しないのです。もちろんオコチャにしてもディウフにしても、秀でた天賦の才に恵まれているわけで、たまに、誰にも真似できない素晴らしい局面プレーは披露してくれるけれど、攻守の本当の目的を達成するための「全体的な効果レベル」という視点では、疑問符の方が先行するというわけです。そんな流れを観ながら、「もっと中田に仕掛けリズムを作らせたらいいのに・・」なんて思っていた湯浅だったけれど、まあ、中田も、チームの全員がすぐに彼をパスターゲットとして捜すようになるまでには、まだまだ紆余曲折があることを十分にわかっているでしょうからね。だからこそ、ムダ走りの「パーセンテージ」が上がり過ぎても、決してフラストレーションを溜めず、クールにクリエイティブな組織プレーをつづけるのですよ。いつかオレがイニシアチブを握ってやる・・これまでもそうだったように・・なんてネ・・。やはり彼は百戦錬磨の強者・・。

 日本代表でもそうだけれど、中田のプレー姿勢には、ゲームの流れの「演出家」という趣があります。先日のホンジュラス戦でも、立ち上がりの時間帯で日本代表のディフェンス姿勢に問題ありと感じた彼は、自分の判断で守備的ハーフの位置まで戻って中盤守備を立て直そうとしたそうな(中田のHPコラム)。そして、まさに「本物のボランチ」として機能する・・。私はその現象を、「中田も中村も積極的に中盤ディフェンスに参加してきていることも、中盤守備の機能向上に資するところが大きかった・・」なんていう書き方をしたけれど、あの流れは、中田が率先して意図した結果だったということらしい。たしかに、そう見えないこともない・・。とはいっても、中田が中盤の低い位置までもどって守備でも実効ある貢献をすることは当たり前になってしまっているからネ・・。

 この試合でも、中田のディフェンスでの貢献度は大きかったですよ。(味方に次のボール奪取勝負を狙わせる)チェイス&チェックだけではなく、冒頭のインターセプト狙いや、ボールがないところでの汗かきマーキング等々。それにしても、中田のボール奪取テクニックは相変わらず高みで安定している。まあ彼の場合、ボールを奪い返すための勝負マインドの方が先行するから(彼から仕掛けていくシーンが多いから)、ボールを持つ相手に「振られて」しまうシーンもあるけれど、このところは、そんな守備アクションの逆をとられてしまうシーンの頻度もかなり低下してきていると感じますよ。

 それには、日本代表での勝負マッチ(W杯の最終予選)において体感したプレーコンテンツが大きく寄与している!? 何せ、フィオレンティーナではレギュラーで出ていない中田を、それも守備的ハーフで使うなんて・・という雰囲気の大きな逆風のなかでジーコが勝負していた(中田に対する信頼に賭けた)状況だったからね。彼にとっても、これ以上ないほどのモティベーションになったことでしょう。だからこそ素晴らしい学習機会になった・・。常にチャレンジマインドを忘れないシンプルプレーの天才、中田英寿の面目躍如といったところでした。

 あっと・・そんな中田だから、プレーコンテンツがよりオールラウンドに発展していると感じていた湯浅だったわけだけれど、後半20分すぎにオコチャが交代してからは、どんどんと彼のプレーパフォーマンスが(ボールに絡んだ実効レベルが)高揚してきましたよ。もちろんそれに伴って、こちらのフラストレーションレベルも下がりつづける。そして最後は、まさに「背中にも目がある」スリップヘッド(見事なアシスト)での決勝ゴールですからね、堪えられない。

 たしかに全体的には不満も残る内容だったけれど、試合のなかで徐々に実効(結果としての)パフォーマンスを上げ、最後には「最高の結果」も伴ったことを考えれば、まあ満足できるデビュー戦だったのではありませんか。さてこれで中田もポジティブベクトルに乗った。

 



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