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05_ヨーロッパの日本人・・今週は、中田英寿と、久しぶりの小野伸二・・(2005年9月25日、日曜日)

まず、プレミアでの初先発&フル出場を果たした中田英寿。徐々に状況は改善されていると思います。何が改善されているかって? まあそれについては、チームメイトたちとのコンビネーション(プレーやイメージの有機的な連鎖の状態)なんていう表現が妥当ですかね。とはいっても、実情は、まだまだ。いまの彼は、チーム内における「ポジショニング」をアップさせることで、自身が描く勝負イメージが、チーム内でのイニシアチブを握るというテーマへのチャレンジをつづけているということです。その「組織内ポジショニング」ですが、もちろんその基盤は、チームメイトからのより大きな敬意と信頼です。

 攻守にわたってよく走り、積極的に勝負所へ「入り込んで」いく中田。それでも、彼が考える程には、うまく勝負シーンでの実効レベルを上げることができない。守備では、チェイス&チェック、インターセプト狙い、協力プレスへのタイミングよい参加、そして(ケースバイケースでの!)ボールがないところの忠実マーク等々、まあまあ機能していた(結果がついてきた)と思います。そんな忠実ディフェンスプレーで中田が魅せつづけた心理・精神的な強靱さにはアタマが下がる思いでしたよ。

 ただ攻撃では、彼がイメージする「良いカタチ」でボールを持つことがままならないし、ボールを持っても、周りとのコンビネーションが理想的に機能していたというわけでもない。それこそが、組織内(ヒエラルキー)ポジショニングのアップというテーマと直接的にリンクするグラウンド上の現象というわけです。

 この試合でも、何度か良いシーンがありました。例えば、オコチャとの素早いパス交換から中盤センターゾーンを抜け出し、左サイドでフリーになったディビーズへ最終勝負のパスを通したりとか、ワンツーの「壁」になって、ヒールで決定的スルーパスを通したり、何度か最終勝負のキッカケになるスルーパスを通したとか、はたまた彼自身の惜しいシュートシーンがあったり等々、グラウンドの至る所で存在感を発揮していたけれど、全体的な運動量の多さと、彼のアタマに描写された意図からすれば、結果として達成できたグラウンド上の現象レベルはまだまだ低調だったに違いない・・。まあ、その意味でも中田はフラストレーションがたまっただろうな・・なんて感じていた湯浅だったのです。

 一度ボールを離したら、パスを受けたチームメイトがゴリ押しの個人勝負を仕掛けていき過ぎることで、もう二度とボールが戻ってこない・・パフォーマンスが確実に減退しているオコチャは、自分が主体になって、ゆっくりとした仕掛けペースをリードしようとするし、守備でもアリバイプレーが目立つ(そのことで、周りの守備負担が大きくなる!)・・逆に中田は、自分が主体の、テンポの速いコンビネーションをリードしようとするけれど、うまく回らない(何度、彼が仕掛けたパスを呼び込むフリーランニングが無為なムダ走りに終わってしまったことか・・それでも決して腐ることなく、クリエイティブなムダ走りをつづけた!)・・もちろんオコチャは、そんな素早いコンビネーションテンポに付いていけない・・この、中田とオコチャのプレーコンビネーション(プレーイメージ)のギャップはこれからも開くばかり!?・・今は、まだ中田が、オコチャの才能を有効に活用しようとはしているけれど、さていつまで・・

 とにかく中田英寿は、自分がプレーを楽しむために、これからも組織内ポジションを着実にアップさせることを意識した様々なチャレンジをつづけていくことでしょう。もちろん、攻守にわたる忠実な汗かきプレーを基盤にしてね・・。それこそ、これまでの経験を通し、「そのプロセスにおける楽しみと喜び」を心底体感している中田の真骨頂じゃありませんか。

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 前節、4ヶ月弱の治療期間を経て復帰した小野伸二。フェイエノールトが0-1とリードされたタイミングの交代出場で、その後チームは大逆転を達成! そこでの小野伸二は、ゲームの流れを変えたと地元メディアから大変に高い評価を得たとか。私は観ていなかったけれど、ボール絡みの実効あるクリエイティブプレーでチームを引っ張ったということでした。でも、先発から出場したこの試合では、高い評価を得た前節の残像は薄く・・。

 たぶん前節では、小野にボールが集まったんでしょうね。もちろん小野も、交代出場ということで、またホームゲームなのにリードを許しているということで、最初からフルパワーで動きつづけたに違いない。だからこそボールが集まった!? でもこの試合では、どうも動きの量と質が「ぬるい」。先発ということで、試合全体を通したペース配分を考えてしまったのか・・。ボールが集まるのは、マラドーナのような世紀の例外を除き、何といってもボールがないところでのアクションの量と質に拠るのですよ。そしてそのアクションは、攻守にわたる汗かきプレーによって活性化する・・。足が止まったら、味方ボールホルダーが瞬間的に描く「次のプレーイメージ」に入ってこないということです。

 それにしても、後半22分に魅せた魅惑的なボールキープと、タテの決定的スペースへ走り抜けたカステレンへの、流れるようなアクションで出したスーパータイミングのスルーパスを見ていたら、彼のボールタッチ頻度の低さが(また悪い体勢でのパスレシーブが)残念で仕方ありませんでしたよ。良いカタチでボールを持ったら、こんな素晴らしいプレーを魅せられるのに・・。まあこの試合では、フェイエノールトが2点をリードしたという「パワー減退要因」はあったけれどネ・・。

 小野は、心理・精神的にも物理的にも、まだまだトップフォームには至っていないようです。そんな状態だからこそ、とにかくまずディフェンスからゲームに入っていくことが肝要。それこそが全てのスタートラインであり、そのプレー姿勢があってはじめて、自信を深め、自分自身のプレーペースを着実に見出していけるものなのです。まあ、小野自身もそんなメカニズムは熟知しているでしょう。彼にとっても、この復活プロセスは貴重な学習機会ということです。彼もまたそのプロセスを楽しむことができる・・!? 注目しましょう。

 それにしてもフェイエノールトはツキに恵まれた。トゥエンテの決定力が「普通」だったら、逆転されてしてもおかしくない試合展開でしたからね。

 



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