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ジーコジャパン(52)・・後半は良かったジーコジャパン・・でもまず「レアル・マドリーという現象」から・・(日本vsシリア、3-0)・・(2005年2月2日、水曜日)

どうも皆さん。シリア戦のレポートに入る前に、「レアルという現象」について一言だけ・・。もちろん新加入のグラヴェセンについてですよ。「アイツはいいよ・・やっとこれでレアルのバランスがとれてきたからな・・」。先日のヨーロッパ出張では、チャンピオンズリーグも追いかけているドイツ人ジャーナリストと、その話題でも盛り上がりました。

 「ところでバランス・・そのコノテーション(暗示的な意味・・言外に含蓄される意味)は深いよな・・」。彼の発言でボタンを押された湯浅は、どんどんと「バランスという現象」の深みにはまってしまうのですよ。選手タイプのバランス・・チーム内タスクのバランス・・攻撃と守備のバランス・・創造性プレーと汗かき泥臭プレーとのバランス・・等など。とにかく全てのテーマは、この「バランス」という一言に集約されるといっても過言ではない。そのドイツ人ジャーナリスト氏も、相づちを打ちながら、バランスというテーマに入り込んでいく。それは、ブンデスリーガのマインツ対シュツットガルト戦のハーフタイムだったのですが、ディベートが盛り上がり過ぎて、ハッと気付いたら既に後半がキックオフされていたほどでした。

 とにかく我々は、グラヴェセン以前のレアルでは、選手タイプと攻守のバランスがうまく取れていなかったということで意見が一致したのです。そして今、マケレレの放出によってチーム内に生じた(クラブマネージメントたちにとっては?!)予想だにしなかったアンバランスが、グラヴェセンの加入で改善される傾向にある・・。

 今節のスペインリーグ、ヌマンシア対レアル戦で、ウワサのグラヴェセンのプレーを久しぶりに観ることができたわけですが、相変わらずの優れたバランサーぶりでしたよ。昨年のヨーロッパ選手権でもデンマーク代表を攻守にわたってリードしたグラヴェセン。地味だけれど、たしかにチームのバランスにとってこの上もない実効パフォーマンス。もちろん「本物のボランチ」としてネ。

 まず率先して、相手ボールホルダー(次のパスレシーバー)へのチェイス&チェックアクションを仕掛ける・・もちろんそのメインイメージは、周りの味方の次のボール奪取アタックを支援するディフェンスの起点プレー・・また彼自身も、次のパスに対する鋭い感覚を駆使して、インターセプトや相手のトラップの瞬間を狙ったタイミングの良いアタックで次々とボールを奪い返す・・その高い守備意識をベースにしたボール奪取勝負感覚の鋭さは、相手ボールホルダーが次のパスを出す動作に入る前から、相手パスレシーバーへのアタックへ向けてスタートを切っているといったプレーに如実に現れている・・彼の場合、そんな創造性ディフェンスシーンを探すのに苦労しないのだから観ていて楽しいこと・・いや、素晴らしい・・。

 様々な意味を包含する「アンバランス現象の背景ファクター」。それをハダで感じていたからこそ(その原因を明確に知っていたからこそ)、レアルが誇る世界の天才たちも、グラヴェセンの価値を敏感に感じ取り、すぐに救世主としてレスペクトしはじめたというわけです。そして、グラヴェセンにボールが集まり、そこからシンプルなパスでゲームが組み立てられる。自分自身の能力をしっかりと把握しているからこそ、シンプルなパスプレーが冴えわたるグラヴェセン。だからこそ、周りの天才たちも、分かりやすいタイミングで「次のパス」を受けることができる。ホントにいいよ、グラヴェセンは・・。

 ということで、このシリア戦では、日本代表のディフェンスにスポットを当てて観戦使用なんて瞬間的に思ったのだけれど、すぐに「アッ・・相手はシリアだった・・」と落胆してしまった湯浅だったのです。フ〜〜ッ!

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 前段が長くなってしまいました。さてシリア戦。

 この試合については、まあ後半に限ってだけれど、カザフ戦から比べればサッカーのダイナミズム(活力)が大きく向上したという評価が妥当でしょう。大きくダイナミズムが向上した?! 要は、攻守にわたってリスクにチャレンジしていく仕掛けプレーと、勝負を意識した「安定志向プレー」のバランスが、より健全なベクトル上に乗ったということです。

 えっ? もっと分かりにくくなった?! では、こんなのではいかが? 全員が、より積極的に前から仕掛けていった・・もちろんそのスタートポイントは中盤での積極ディフェンス(より積極的なプレスとボール奪取勝負)・・それが活性化したことで、次の攻撃にも活力が乗っていった・・もちろん、ボールがないところでのアクションの活性化を基盤にした組織プレーでの仕掛け・・。

 まあ、最後までペースアップが叶わなかったカザフ戦にくらべれば、しっかりと北朝鮮との勝負への準備が進んでいるということを感じさせてくれた試合だったという評価に落ち着きそうです。

 それにしても、前半から魅せつづけた両サイドからの仕掛け(クロス)の危険度が上がってきたこと。ご覧になったとおり、先制ゴールや追加ゴールだけではなく、それ以外に何本もサイドからチャンスを演出していましたよ。もちろんそれは、全員が積極的に最前線ゾーンへ仕掛けていったことの証です。クロスでチャンスを演出するためには、それをレシーブする十分な味方も、タイミング良く上がっていなければなりませんからね。

 「ジーコさん・・アレックスのクロスが格段に良くなっているのですが・・それに対何かアドバイスはされたのですか・・?」なんていう質問をしたけれど、結局ジーコは、「アレックスだけではなく、加地も良くなっている・・両サイドからの攻めが危険なものになってきている・・その背景には、後方からの押し上げが良くなっていることもある・・いくら良いクロスが入っても、センターの人数が足りなかったり、うまくポジショニングできていなかったら元も子もない・・その意味でも、選手たちの勝負イメージがうまく重なり合ってきていると言える・・トレーニングのタマモノだ・・」と、ちょっとはぐらかされてしまった。まあ多分、例によってのジーコの「我慢強いアドヴァイス」が効きはじめているということなんでしょうね。

 我慢強いジーコ・・。選手の起用とか、戦術的な方針とか、彼の我慢強さだけは認めなければなりません。もちろんその我慢の「背景」には、しっかりとした確信だけではなく「厳しいムチ」もある。そのことを選手たちが明確に意識しはじめたところから、ジーコの言う「自由」が本当の意味で効果を発揮してきたということでしょう。選手たちの自覚は、確実に発展しているということです。

 試合後の記者会見でジーコが、「我々が先制したことで、後半にシリアが攻めてきた(守備ブロックを開きはじめた)・・だからこそ後半の我々のサッカーが活性化した・・」と述べていました。それに対して、「日本が先制したことで(シリアが攻め上がってきたことで)自然発生的にサッカーが活性化したと言ったけれど、ジーコさんは、ハーフタイムで何らかの指示やモティベーションを飛ばしたのではありませんか? もっと前へ行け!!とか・・」なんていう質問もしました。それに対しては、教科書的ではない、小さな実質ヒントはありました。「相手はワントップ・・守備ブロックの選手が余ってしまうのはムダだ・・ということは言った・・」。それ以外では、選手たちが自分たち自身で判断し行動できるようになっている・・という、例によっての自由であるが故の選手たちの成長という「成果」を強調していましたけれどね。まあ、自由であるが故に選手たちのなかで危機感がつのっていったことは確かだよネ・・。

 シリアは、予想以上にちゃんとしたサッカーをやってきました(やってくれました)。だからこそジーコジャパンが触発されたとも言える・・。この試合での成果については、シリアに感謝しなければいけません。

 最後に小笠原について。彼は、前半は、前回レポートに輪をかけた怒りがこみ上げてきたものだったけれど、後半は少しは改善されてきたわけで、ちょっと胸をなで下ろしていました。とにかく「あの才能」が腐ってしまうのならば、それは現場コーチの責任です。このことは、動かし難い事実です。才能ある選手たちが、しっかりと考え、主張するように仕向けることもコーチの重要な仕事ですからネ。あっと・・考え、主張するとは、もちろん攻守にわたって、ボールのないところでしっかりとプレーすることを意味します。そして、守備では、ボールがないところでのマーキングやインターセプトなどを意図した全力スプリントがくり返され、攻撃では、仕掛けのパスを受けるために全力フリーランニングがくり返されるというわけです。意図が込められた全力ダッシュの量と質こそが、(特に才能に恵まれた)選手たちの「良さ」を測るバロメーターというわけです。

 どうしたんだろう・・今回はうまく時差ボケから解放されない・・。またまた気が遠くなりかけてきたのですよ。まだまだ観戦メモはあるのですが、今日はこのあたりでご容赦・・。オヤスミなさい・・

 



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