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ジーコジャパン(58)・・あ〜ビックリした・・小笠原がブレイクスルーを果たしてしまった・・また中田英寿も、意地の(?!)スーパーパフォーマンスを魅せた・・(バーレーンvs日本、0-1)・・(2005年6月4日、土曜日)

その瞬間、自分の目を疑っていましたよ。何せ「あの」小笠原が、守備に入ったと思ったら、ワンツーで抜け出そうとした相手選手を「上手く体をつかって」ブッとばして止めてしまったんですからね。もちろん、目立たないように肘を使ってネ・・。それだけじゃなく、ボールがないところで忠実なマークをつづけたり、しっかりとボールへ詰めたり(チェイス&チェック)、はたまた、ワンツーで抜け出そうとする相手を、しつこく最後までマークしたりと、前線からのディフェンスで大車輪の活躍なのです。

 たぶん後ろに鬼軍曹(中田英寿)がいるし、そこから常に声がかかっていたこともあったに違いない?! とにかく、その実効あるパフォーマンスにビックリしていた湯浅だったのです。サッカーの絶対的なベースは守備。そこからゲームに入っていくことが、自身のプレーのペースアップにとって絶対的に重要なファクターになるわけですが、この試合での小笠原のプレーでは、その大前提メカニズムが(ビックリするくらい)うまく機能していたのですよ。だからこそ攻撃でも実効あるプレーができた・・そしてそれが、「あのスーパーゴール」に結びついた・・。感動でしたよ。そして思ったものです。これでやっとヤツの才能が解放され発展ベクトル上に乗った・・やっとヤツは、本物のブレイクスルーのキッカケを掴んだ・・。

 天賦の才にあふれる小笠原。これまで私は、彼のことをクサしてばかり。そして最近では、ほとんど諦めかけていたものです。何せ、おざなり守備に、リスクチャレンジ回避プレーのオンパレードでしたからネ。要は、動きの量と質が低級で、安全(消極)プレーばかりが目立ちすぎ(ミスになるかもしれないリスクチャレンジを避けすぎ)、確実にチャンスになる場面でしかチャレンジしていかないという(実質サボリの!)後ろ向きプレー姿勢だったということです。でもこの試合でのイメチェンぶりは・・。

 やはり、肉を切らせて骨を断つというギリギリの勝負こそが、選手たちの才能を解放し、それを発展させる・・ということなのでしょうね。ギリギリの実戦に優る「学習機会」はないということです。これで小笠原は、2003年コンフェデレーションズカップ、対フランス戦での中村俊輔のように、本物のブレイクスルーにつながるベクトル上に乗れるのか・・。これからの小笠原のパフォーマンスに対する評価基準は、もちろんこのバーレーン戦でのプレーコンテンツということになります。ということは、これからも小笠原に対するキビシイ評価がつづくことになるのか?! さて・・。とにかく期待しましょう。これでアントラーズのゲームを観るモティベーションが何倍にもアップしましたよ。

 ということで、テーマは「ギリギリの勝負だからこその発展」ということになります。この普遍的な概念は、この試合でスーパーパフォーマンスを魅せた中田英寿にも当てはまると思います。クラブチームではまったく出場機会に恵まれず、代表チームにもどってきたら、ジーコの厚い信頼をベースに常にレギュラー・・。まあ、日本人の「形式的な感覚」では、ちょっとネガティブ方向へ振れる現象なんだろうな・・。でも、前回のイラン戦やバーレーン戦でのパフォーマンスにしても、そこにはヒデらしい高質な実効コンテンツが満載されていました。

 この試合での中田英寿のパフォーマンスには、誰もが感謝したに違いありませんが、その決定的パフォーマンスを引き出したジーコに対しても、やはり感謝すべきでしょう。中村俊輔にしても小笠原にしても、はたまた中田英寿にしても、選手の能力・潜在力に対する自らの感覚ベースの信念を貫き、そして結果を出したジーコ。ジーコのキャッチフレーズは、我慢強さ・・ってなことなんでしょう。たしかに我慢強さもまた、良いコーチの前提条件ではあります。

 たぶんこれでジーコは、自らが標ぼうする「優れた(攻撃的で美しい)サッカー」へと、チーム戦術の舵を切っていく(チーム戦術的な方向を転換する!)ことになるでしょう。もちろんそれは、ドイツ的なダイナミックなリスクチャレンジ満載のサッカーではなく、より「バランス」を重んじるクリエイティブサッカーということです。まあ「表現」については、これから開発することにしますが、とにかくジーコは、あくまでも(様々な意味を内包する)バランスという要素の正確なマネージメントを前提にしたサッカーを目指すはずです。それは、ドイツ的な、リスクにチャレンジしつづける(瞬間的にバランスが崩れる)サッカーとは別物。そこでは、常に崩れたバランスを調整するための守備意識と「本物のバランス感覚」が重要な意味をもってくるというわけです。とにかく、この視点でも、今月ドイツで行われるコンフェデレーションズカップにおける「ジーコジャパンの変化の胎動」を体感することが、いまから楽しみで仕方ありません。

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 ちょっと最後に、もう一度中田英寿について触れたい・・。テーマは「ヒデの意地」。意地なんていう表現にしたら、その響きがカッコ良いモノじゃないから彼はものすごく嫌うだろうけれど、試合前の彼に関するネガティブノイズを考えたら、それによって中田がものすごくモティベートされていたと思うのですよ。ネガティブなノイズが大きければ大きいほど、フザケルナよ!という憤り(人間心理のダークサイドパワー!)など、やり甲斐&チャレンジモティベーションが高揚するという心理メカニズムが、これ以上ないほど効果的に機能した・・?! まあ自然発生的にツボにはまったということなんだろうね。だからこそジーコの「意地」も高く評価していた湯浅なのです。

 次の北朝鮮戦では、アレックスと中田英寿が出場停止だとか。良い機会じゃありませんか!! もちろん稲本潤一が復活するための機会のことですよ。最後の10分間しか出場しなかったけれど、福西とコンビを組めば、確実に存在感を示してくれるはず。私は、ものすごく期待します。(PS:その後、中村俊輔も出場停止になったことを知りました・・これは様々な意味でチャレンジの機会だ!)

 さて、最後の最後のテーマ。それは、コンディショニング。やはりこれだけの気候条件の変化に対応するためには(効果的なアクリマティゼーション=気候順応=を達成するためには)、今回の日本代表が取ったスケジュールくらいの余裕を持たなければいけません。一次予選シンガポール戦での失敗(危機)は、二度とくり返してはいけないのてすよ。その意味でも、また選手たちの意識と意志、そして気合レベルの高さに対しても、試合がはじまる前から何となく安心していた湯浅でした。

 ちなみに、試合当日の真っ昼間に出演したラジオ文化放送の番組では、見所と結果の予想を聞かれた湯浅は、こんなことをくっちゃべっていました。「たしかにバーレーンは個人的なチカラはあるけれど、基本的なチーム総合力では、確実に日本の方が一回り上・・普通だったら日本が順当な勝利をおさめるだろうけれど、そこはW杯予選だしサッカーだから何が起きるか分からない・・この試合での見所? それは、まず何といっても日本チームの守備だけれど、次には小笠原・・彼の攻守にわたるプレーの内容が結果を大きく左右する・・たしかに彼は才能にあふれた選手だけれど、これまでの彼の実質的なパフォーマンスでは不安だらけ・・全力で闘えない選手は使うべきではない・・だからジーコが彼を起用したことにはアグリーできない・・でも中田ヒデがいるから、そこからの強烈な刺激で小笠原が怒り、人間心理のダークサイドパワーによって素晴らしい闘いを披露してくれるかもしれないという期待もある・・何せあのレベルの才能だから・・とにかくこの試合では小笠原がキーポイントになる・・エッ?!結果の予想?・・それはもう0-1で日本の勝利ですよ・・」、なんてネ。

 



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