トピックス
- 05_天皇杯準決勝・・あれだけ選手を欠いたにもかかわらず立派な戦いを展開したアルディージャ・・そして、ホンモノの成功体感を積み重ねたレッズ・・(アルディージャ対レッズ、2-4)・・(2005年12月29日、木曜日)
- さて、何から書きはじめようか。まあ、やはりオーソドックスに、2-1とリードしたレッズが試合終了間際に落ち込んだ「心理的な悪魔のサイクル」というテーマからにしよう・・何せ、イレギュラーするボールを足で扱うという不確実性が満載されたサッカーは、ホンモノの心理ゲームだからネ・・。この現象については、ギド・ブッフヴァルトも、しっかりと自覚していましたよ。たしかにリードした後に、気が緩んだプレーをした・・選手たちはナーバスになったのだろう・・スペースがあったのに、そこをうまく使えずにボールを失いつづけた・・等々。
要は、あと数分でレッズが勝利を決めるという後半42-43分あたりからのゲーム展開のことです。もちろんアルディージャは捨て身で攻め込んでくる・・それに対してレッズは、「引く」だけで、前からボールを奪いにいかない・・要は、(多すぎる)人数とポジショニングのバランスが完璧に崩れたレッズ守備ブロックの前の広大なスペースを、ガンガン攻め上がってくるアルディージャにうまく活用されてしまったということ・・またボールを奪い返しても、誰も(ボールがないところで)押し上げていかないからパスがミエミエで単調なモノになってしまい、アルディージャの「前からの積極ディフェンス」に引っかかってすぐにボールを失ってしまう・・そしてまたまた押し込まれてしまう・・。まさに心理的な悪魔のサイクル。こんなシーン、どこかで経験したことはありませんか? そうです・・ドーハの悲劇。
「桜井がケガで早々と退場してしまったし、藤本もいない・・これでは効果的なカウンターは難しい・・だから、ボールを奪い返したら、まずシンプルにつないでパス出しの起点を作り出し、森田、若林という高さを活用するために、効果的なハイボールを送り込むというイメージを選手たちに与えた・・そのハイボールを一人がアタマでつなぐことが出来れば、そのシーンに絡んでいく二人目や三人目の選手によって何かが起きるに違いないと思っていた・・」。アルディージャの三浦監督が、記者会見で、そんなニュアンスのことを言っていました。そして、まさにその言葉通りのことが起きたわけです。後半44分にアルディージャが挙げた同点ゴール。三浦監督は、まさに「してやったり」という心境だったに違いありません。
でも結局その後のゲーム内容は、本来の実力どおりのモノに収斂していく・・。本当のことを言えば、延長にはいったとき、私は、「もしかしたらレッズは、このまま立ち直れないかもしれない・・」なんて不安にかられたものでした。何せ、アルディージャ選手たちの確信レベルが、同点ゴールによって格段にアップしたことを体感していたし、逆に、同じような状況でしっかりと立ち直れず、何度も期待を裏切ってくれちゃったリーグでのレッズのイメージが脳裏に浮かび上がってきましたからね。それでもギド・ブッフヴァルト監督が言うように、レッズ選手たちの心理的な充実度は着実にアップしていたようです。まあこれも、リーグにおいて、繰り返しサポーターから浴びせられた「怒りのスピリチュアルエネルギー」の賜なんでしょうね。それこそが、体感ベースの発展を支えるエネルギー源(モティベーション)になったということです。
もちろんこの試合で(このゲーム展開を通して)レッズ選手たちのイメージに刻み込まれた「成功体感」は、エスパルスとの決勝でもポジティブに作用するはずです。何せ、あと1-2分頑張れば勝利というタイミングで、押し込まれた末に同点ゴールをブチ込まれたにもかかわらず、そんな心理的な逆境を跳ね返し、本来の実力を発揮して勝ち切ったんですからね。この「2-2」となる同点ゴールについては、それが、決して「交通事故」なんかではなく、アルディージャの意図と強烈な意志の結実だったということが大事なポイントです。要は、レッズにとって、完璧に「やられた」ショックの失点だったということです。でも、そんな「奈落のショック」からすぐに気持ちを切り替え、延長では、全員での汗かきディフェンスからゲームを立て直していった・・。だからこそこの試合プロセスが、彼らにとって、ホンモノの実が詰まった成功体感になったに違いないと思うのです。
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ここからは「個」について、短くコメントしましょう。まずアレックスについて。このところ彼については厳しいクリティックがつづていたけれど、このゲームに限っては、全体的な出来は良かったと思います。まあ、守備での気抜けシーン(ボールがないとろでの忠実ディフェンス・・どうせパスなんて来ないと、ポジショニングを緩くするなど)はまだまだ目立つけれど、攻撃におけるサイドからのリスクチャレンジでは、(いつものような中途半端なプレーやアリバイ勝負ではなく)抜群の存在感を発揮していたと思うのですよ。特に後半の勝ち越しゴールのシーンでは、素晴らしくクレバーなボールの「運び」と「相手の身体をすり抜けるクロス」が素晴らしかった。それがあったからこそ、長谷部の勝ち越しゴールにつながったということです。もちろん、だからといって、まだまだ目立つ「気抜けプレー」は容認できません。とにかく、あれだけの才能に恵まれているのに、攻守にわたって全力でプレーしないことで(攻守にわたって限界まで仕事を探しつづけないことで!)、その才能を腐らせている「部分」もあるという事実が残念で仕方ないのです。
さて長谷部。ギド・ブッフヴァルト監督は、常日頃から、「私にとって長谷部は、既に日本代表の中核プレイヤーだ・・」と言い続けていました。「マラドーナ・ゴール」も含め、この試合で長谷部が魅せつづけた攻守にわたる大活躍については書くまでもありません。ということで、ここでは、日本代表へチャレンジする長谷部に対する「期待コンテンツ」を短く述べておくことにします。
私は、彼が守備的ハーフからキャリアスタートしたことで、ホンモノのボランチにまで成長できたと思っています。ボール奪取シーンにも、ゲームメイクやチャンスメイクにも、はたまた攻撃の最終勝負シーンにも、常に実効あるカタチで絡んでいけるホンモノのボランチ。ドイツのマテウス・・ブルガリアのレチコフ・・ブラジルのドゥンガや、現代表ではエメルソン・・フランス現代表のビエラ・・等々。私は、日本代表での長谷部にも「そんなプレイコンテンツ」を期待します。私は、ジーコジャパンにとって、長谷部は、ホンモノのポジティブ刺激になると確信しているのですよ。中田英寿が言うように、W杯において「サッカー内容と結果においてバランスの取れた成果」を挙げるためには、とにかく意識を高めなければなりません。その「意識」の本質こそが「守備意識」にあるのです。インテリジェンスがベースの「ホンモノの守備意識」こそが、発展のための「唯一のリソース」だということです。とにかく、日本代表でもガンバレ、長谷部誠!
その他にも、前線からの守備の効果レベルや、攻撃におけるここぞの勝負コンテンツが発展している山田暢久・・素晴らしいジャンプ力と落ち着いたディフェンスで存在感を発揮しつづける細貝・・相変わらずの「優れたボックスプレイヤーぶり」を誇示するマリッチ・・等々、採り上げたい選手たちは多いけれど、まあ今日のところはここまでにしておきます。
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決勝の相手は、素晴らしい組織的ディフェンスと「蜂の一刺し攻撃」でセレッソを退けたエスパルス。彼らは、セレッソの攻撃を本当によく研究し、限りなくクレバーに対処しました。要は、西澤、森島、古橋というセレッソの最前線トリオが、縦横無尽のポジションチェンジをベースに展開する「トライアングル・コンビネーション」を完璧に封じ込みながら、チェ・テウクとチョ・ジェジンが中心となったねばり強い仕掛けで勝ち切ったということです。私にとってのセレッソ戦でのMOMは、何といっても伊東輝悦。フォーバックの前にポジションする前気味リベロとして鬼神の働きを魅せてくれました。この「前気味リベロ」という概念については、先日アップしたコラム(雑誌、サッカー批評で発表したコラム)を参照してください。
決勝は、面白いゲームになること請け合い。湯浅が保証しますよ。W杯イヤーを、こんなエキサイティングマッチでスタートできるんだから堪えられない。例によって湯浅は、ラジオ文化放送(JOQR__1134kHz)で解説します。相方は、これまた例によって、ラジオ文化放送の長谷川アナウンサー、そしてゲストは、先日フロンターレで引退した相馬直樹さんです。いまから、彼との会話が楽しみです。でも湯浅は、試合の後、すぐに所用で遠出しなければなりません。ということで、マッチレポート(湯浅視点のポイント分析)は、1月2日にアップする予定です。悪しからず・・
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