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05_ヨーロッパの日本人・・今週も、中村俊輔と中田英寿・・(2005年10月31日、月曜日)

私は観られなかったけれど、先週のウイークデイに行われた前節では、中村俊輔を中心に、しっかりとボールが動いたとのことでした(中村は大活躍・・ゴールも決めた・・チームも大勝した)。でもこの試合(ダンディー・ユナイテッドとのアウェーゲーム)では、彼をコアにしたボールの活発な集散という視点でちょっとフラストレーションが溜まったかもしれない。それでも、ゲームの緊張感が最高潮に達した最後の15分という時間帯になって、本来のキレが戻ってきたと感じました。中村にボールが集まる状態で素早く広くボールが動きはじめたことでチャンスが萌芽する・・中村も、より積極的にリスクにチャレンジして仕掛けていく・・ってな雰囲気になっていったのですよ。まあ、そこに至るまでには、ちょいと長めの紆余曲折はあったけれどネ。

 しっかりと、緩急のメリハリをつけた「大きな」パスレシーブの動きをつづける中村俊輔。それでも、彼に対するマークがタイト&ハードなこともあって、チームメイトたちが中村にパスを「付ける」ことをためらうという雰囲気もありました。それでもボールを持ったら質の違いを魅せつけます。シンプル展開プレーを基調にしながらも、たまに繰り出す「魔法」魅力的なこと。スパッとトラップしてボールを支配下に置き、相手のハードチェックをものともしない落ち着いたルックアップから、ズバッという50メートルのサイドチェンジパスを決める・・相手のハードアタックを身体でブロックしながら、ギリギリのところで、マロニーへの30メートルを超えるスルーパスを決めてしまう・・等々、流れのなかでの魔法は健在なのです。チームメイトたちは、中村がハードマークされていたとしても、もっと彼にパスを「付けて」もいいように思います。中村自身も、その方がやりやすい部分もあるでしょう。タイトにマークする相手に身体を預けながら、相手からスッとすり抜けたり(強烈なパワーを押しつけるようにマークしている相手だからこそ、うまくすり抜けられるという視点もある!)、ピンッ!というワンツーで相手を置き去りしてしまったり・・。

 全体的な動きの量と質は高揚しています。まあ、守備については、まだちょっと「おざなり」なところはあるけれどネ。彼は足が遅いのだから、タイミングを正確にはかった予測ディフェンス(インターセプトやトラップの瞬間を狙うアタックなど)に特化すればいいのですよ。一生懸命に追い掛けたり併走したりしても、相手ボールホルダーに置いていかれちゃったら、見え方が悪すぎるよね。そんなときは、すかさず「次の守備」へ移動しましょう。もちろんボールがないところでのマーキングについては、「そこ」でボールを奪い返し、すぐさま攻撃に移れるから、とにかく忠実にイメージしつづけなければなりません。とにかく中村の場合は、出来る限り多く「良いカタチ」でボールに触るというのが、もっとも重要なミッションなのです。

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 さて、ボルトンでも中盤のイメージリーダーになりつつある中田英寿。この試合でも、なかなかの存在感を発揮していました。まあ、とはいってもチャールトンのホームゲームだからネ、相手の積極プレッシングを考えたら、そうは簡単に自由な組織プレーを展開できるはずがないことも自明だよね。中田も我慢の人。とはいっても、我慢の「仕方」が違う。

 まず守備から入る・・それも、超ダイナミックなチェイス&チェック・・右サイドにいたと思ったら次は左サイド・・前線にいたと思ったら次のシーンでは中盤の底・・そんなふうに、ディフェンスの汗かきプレーでも存在感を発揮できることが大きい・・そんな「最初の抑えの汗かきプレー」ほど、チームメイトにアピールするプレーはないからネ・・チームメイトたちは、心中で「サンキュー・ナカタ」とつぶやいているはず・・もちろんそれだけじゃなく、チャンスでの爆発(ボール奪取勝負)も秀逸・・何度、素晴らしいタイミングの「爆発」で相手からボールを奪い返してしまったか・・だからこそ攻撃でも(中田の能力を認めているチームメイトたちに)コアとして頼りにされ、しっかりとボールも回ってくる・・もちろん中田が展開するボールがないところでのアクションのハイレベルな量と質については言及する必要などないよね・・だからこそ、たしかに頻度はそんなに高くはないけれど、ボールを持ったら、自然と周りのボールなしアクションも積極的に連動しはじめるってな具合・・フムフム・・。

 そんな中田英寿のキーワードは・・攻守にわたって自ら実効ある仕事を探し出せる能力(インテリジェンスと強固な意志)・・そのグラウンド上の現象面としての、攻守にわたる全力ダッシュの量と質(これまたインテリジェンスと強固な意志)・・ってなところかな。決勝ゴールの場面でも、ファイエが二列目でボールを持ったとき、左サイドの決定的スペースへ抜け出すフリーランニングを敢行したからこそ、ファイエのプレーに少しは余裕を与えられただけではなく、ファイエの中距離シュートからこぼれたボールに最初に触ることができ、そこからノーランへの決勝アシストを決めることができたわけですからね。
 サッカーを自由に楽しむためには「汗」が大前提だというメカニズムをよく理解し、それを徹底的に実践できるだけのインテリジェンスと強烈な意志を持ち合わせている中田英寿。(リスクチャレンジや汗かきなど)主体的に義務を果たそうともせず(自分勝手な)自由ばかりを主張する連中とは格が違う。




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