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05_天皇杯とヨーロッパの日本人・・まず「イビチャ・オシムの功績」・・そして稲本潤一・・(2005年11月10日、木曜日)

昨日は天皇杯4回戦の残り試合を観戦しました。ジェフ対ヴァンフォーレ。そして、この一週間前に行われたレッズ対モンテディオも含め、改めて「J2」のレベルアップを体感させられた次第。「J2」については、今シーズンはまだいくつかの試合しかスタジアム観戦できていないけれど、とにかく、攻守にわたって「しっかり」としたサッカーを展開しているチームが増えていると感じるのですよ。以前のように、守って、守って、ワンチャンスのカウンターで挙げた虎の子を守り切る(要は、守りの安全志向)なんていう後ろ向きのサッカー志向ではなく、守備でも、攻撃でも、とにかく自分主体で、「前向き&アグレッシブ」に攻守の本当の目的(ボール奪取とシュートを打つこと)を達成しようと、後ろ髪を引かれることなくリスクにチャレンジをつづけているように思うのです。もちろん、そんなサッカーをするためには必然的に運動の量と質は増加する・・そして観ている方にも魅力的な、全力チャレンジサッカーが展開される・・。

 「我々は、ジェフのサッカーを目指して頑張ってきた・・そしてある程度の成果を出せるようになったと思う・・」。試合後、ジェフとヴァンフォーレの指揮官が、グラウンド上で握手を交わしたとき、とにかく立派な、素晴らしいプレーを展開したヴァンフォーレの大木監督が、そんなことをイビチャさんに言ったとか(試合後の記者会見で、真摯に、エネルギッシュに、そしてインテレクチュアルに私の質問に答えてくれました)。ここで言いたかったことは、イビチャ・オシムさんが、日本サッカーに対して為した目に見えない成果のことです(もちろん他にも、サッカー発展のために重要な前向きコンセプトを実践し、素晴らしいスピリチュアルエネルギーを放散している指揮官もいるけれど、ここでは、イビチャさんに彼らを代表してもらいます)。イメージ資産とでもいいますかネ。ジェフ市原のサッカーを観て、普通の神経と理解力を持ったサッカー人だったら、「ジェフ選手たちは特別なレベルにあるわけじゃない、それでもあんな魅力的で力強いサッカーでできる・・それだったら俺たちに出来ないハズがない・・オシムさんも言っているように、とにかくリスクチャレンジのないところに進歩・発展はない・・」なんてことを思うに違いない。私は、イビチャ・オシムのフィロソフィーが、日本サッカー全体に広く浸透しはじめていると感じているのです。「まあまあの結果だから、それでいいじゃない・・」とか「とにかく負けないサッカーをすることが大事・・」なんていう、自己実現ではなく保身をイメージした考え方。そんな、まさに典型的なアマチュアの斜に構えた雰囲気こそが、進歩・発展へのマインドを潰しつづけていた・・。発展をつづけるためには、リスクへの飽くなきチャレンジ精神こそがもっとも重要なベースなのです。

 ということで、稲本潤一。彼もまた、中盤の守備的ハーフの位置において、徹底した(ボールがないところでの)汗かき守備プレーのなかにも、常にリスクチャレンジマインドの火を燃え上がらせています。二試合つづけて先発フル出場を果たした稲本潤一。その根拠は、十分にあるということです。

 守備・・例によっての、忠実なチェイス&チェックアクションをベースにした守備の起点プレー・・常に相手ボールホルダー(次のパスレシーバー)へのチェックアクションに備えている覚醒マインドが目に見える・・勝負所でのボールがないところでのマーキングも忠実&効果的・・ボール奪取勝負に備えるポジショニングの微調整(パスレシーバーとの間合い調整)と、インターセプトや相手トラップ瞬間のアタックに対するイメージの絞り込み・・そんな守備での基本アクションをベースに爆発アタックで何度もボールを奪い返してしまう・・なかなか効果的なボール奪取勝負を展開する稲本・・ただ、まだまだ見過ぎ(要は、決断できずに勝負の流れに取り残されてしまう・・勝負イメージの混乱!)といったシーンも多いし、安易なアタックアクションを仕掛けたことで相手に抜きさられてしまうシーンもある・・とはいっても、守備的ハーフとして徹底するマインドが基盤になっているからこその(タイミングの良いリスクチャレンジに対する確信マインドも含む!)安定プレー内容であります・・

 攻撃・・これまた、守備的ハーフとしての徹底マインドが基盤になっているからこそ光輝く、チャンスでの実効プレーってな具合・・中盤の高い位置でボールを奪い返せた次の瞬間での「上がりの鋭さ」に、常に彼のなかでリスクチャレンジマインドの火が燃えつづけていることを感じる・・安定した守備プレーを基盤にしているからこその確信とでもいいましょうかネ・・1-0とリードされてからの押せ押せムードでも、舞い上がらず、常に冷静に「次のディフェンス」に備えている・・それでもリスクチャレンジマインドが衰えることはない・・それこそが「守備的ハーフとして、バランスの取れた(controlled な)プレー姿勢だということ・・いまの稲本には、ホンモノのボランチ(またはホンモノのバランサー)なんていう表現が適当かもしれない・・

 ここにきて、ウエスト・ブロムウィッチ・アルビオンでも先発出場する機会が格段に増えている稲本。それは、彼自身の不断の努力が実りつつあるという現象に他なりません。だからこそ「レスペクト!」。だからこそ、頼りになる。来週のアンゴラ戦で稲本が魅せてくれるに違いない、リスクチャレンジの炎を内に秘めた、冷静で徹底した本物ボランチ&バランサー(または日本の場合は中盤の底!?)のプレーを堪能しましょう。




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