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05_ヨーロッパの日本人・・中田英寿・・中盤のリーディングパワーを支えるモノ・・(2005年11月8日、火曜日)

さて、ボルトン対スパーズ戦で、1-0とボルトンがリードしている後半20分あたりから登場した中田英寿。このコラムでは、彼の「ゲームへの入り方と、中盤でのリーダーシップ」に焦点を当てようと思います。

 途中から、それも一点を争う緊迫した状況でグラウンドに放り込まれた場合、とにかくまずゲームの流れに乗るというテーマに集中しなければならない・・そこでは、もちろん、まず守備からゲームに入っていくという姿勢が絶対的なベース・・ただ、ディフェンスを「相手の攻撃プレーに対処」するようにこなしているだけじゃ、激しく揺動するゲームの荒波に呑み込まれてしまうのがオチ・・だからこそ、自分が主体になったボール奪取勝負の流れを「演出する」という意志を強烈に「主張」しなければならない・・。

 この「主張」の「見え方」が大事なのですよ。中田はその心理メカニズムを熟知しています。そして繰り出す、爆発チェイス&チェック。最初は右サイドにポジショニングし、大声を出してディウフも巻き込みながら、自ら「ボール奪取勝負フロー」を演出し、そして実際にボールを奪い返してしまう。そんな実効ディフェンスを基盤に、どんどんとプレーベースを高揚させていく中田英寿。中盤で、「読み」を主体に、相手の次のパスレシーバーへタイミングよく寄っていく・・そして最後の瞬間の全力ダッシュでの迫力アタック・・もちろんボールを奪い返せないシーンも多いけれど、クリエイティブな意図が凝縮されたボール奪取勝負プロセスに対する強烈な意志こそが、中盤のリーダーたる所以・・ってな具合。もちろん攻撃となったら、例によってのシンプルプレーを基調に仕掛けをリードする。まず最前線をイメージする・・次は逆サイド・・一瞬の判断の後に鋭いショートパスを出したり、スペースでうまくパスを受けたときには、すかさず個の勝負を仕掛けていったり・・。

 それにしても、中田のチェイス&チェックアクションの迫力たるや、まさに「ボックス・To・ボックス」というイングリッシュ・フットボールにおける代表的キーワードの体現じゃありませんか。相手のカウンターシーンじゃ、そりゃもう何十メートルもの全力ダッシュで味方ディフェンダーをサポートしちゃうんだからね。後半23分の相手カウンターシーンでは、70メートルは全力ダッシュで戻り、右のコーナーフラッグ付近でアタックを外された味方ディフェンダーをサポートするように相手ボールホルダーに詰めたから、相手はバックパスをせざるを得なくなった。フ〜ッ! あっと・・試合時間が残り3分というタイミングで飛び出した、ボールがないところでの忠実マーキングと素晴らしいボール奪取シーンも書き添えておかなければ・・。中盤で、右サイドへボールを展開し、パス&ムーブで全力ダッシュするスパーズのブラウン。その彼を、これまた全力ダッシュで最後の最後まで「追いつめ」てボールを奪い返してしまったシーンです。まあ、その後、滑ってしまったために、クリアボールを相手に直接わたしてしまったのは残念だったけれどネ(そこから危険なクロスまで上げられてしまった・・サッカーって、ある意味、本当に理不尽なボールゲームだよな・・)。

 とにかく、ボルトンを魅せた「ある程度余裕のある逃げ切りプロセス」に対して、物理的&心理的にしっかりと貢献していた中田英寿に拍手を送っていた湯浅でした。日本代表に目を移してみても、ホンジュラス戦での中盤ディフェンスのリーディングぶりとかも含め、中田英寿が発揮する攻守にわたるリーダーシップを頼もしく感じるのですよ。サッカーでは、選手たちの「守備意識」こそが、次の攻撃でのクリエイティビティーの本質的な(絶対的な)基盤ですからね。リーダーが、そのメカニズムを理解し「率先して実践」することこそが、もっとも重要なチーム発展のキーポイントになるというわけです。




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