トピックス


2006_オシム・ジャパンの3・・オシムコンセプトの浸透も含め、順調な船出ということになりました・・日本代表vsイエメン(2-0)・・(2006年8月16日、水曜日)

遠藤保仁、アレックス、鈴木啓太、阿部勇樹。そのミッドフィールド先発メンバーを見て、なるほど、縦横無尽のポジションチェンジを基盤にした、人とボールがしっかりと動きつづけるダイナミックな中盤からの仕掛けをイメージしているんだな・・誰もが、ボールがないところで最前線へ飛び出していくダイナミックサッカー・・それには次の守備に対する相互信頼が絶対的なベース・・だからこそ、守備意識の高い選手たちの先発・・ってなことを考えていた湯浅でした。でもフタを開けてみたら・・。

 前半の日本代表は、足が止まった寸詰まりプレーの方が目立つというサッカーになってしまいました。強化守備ゲーム戦術で試合に臨んできたイエメンの術中にはまってしまったということです。イエメンのゲーム戦術については初めから分かっていただろうけれど、どうも選手の、ゲームのなかでの主体的なアイデア創造と実行力が追いついていかなかったようで、全体的に押し上げたり押し込んだりすればするほど、使えるスペースを「自ら」潰してしまうという典型的な悪循環ゲーム展開になってしまっていました。

 そんな相手の強化ディフェンスに対抗するためには、粘り強いサイド攻撃、エイヤッ!のドリブル勝負やロングシュート、そしてアーリークロスを巻のアタマに合わせてセカンドボールを狙うといったシンプルな「攻撃の変化」が望まれるわけだけれど、それにしても、ボールがないところでの動きが減退しているのでは如何ともし難いからネ・・。

 そんな展開だったからこそ、流れのなかでの、三列目、最終ラインからのオーバーラップが重要な意味を持つ。実際、流れのなかでのチャンスメイクは、阿部、鈴木啓太、トゥーリオがオーバーラップした状況で生まれましたよね。加地を追い越してサイドを駆け上がった阿部の決定的クロス。最前線へ顔を出したトゥーリオのヘディング。ワンツーで上がった鈴木啓太のシュート。

 もちろん、遠藤やアレックスにしても、二列目からのシュートやコンビネーションスタートも含め、効果的に仕掛けていくシーンを作り出してはいたけれど、やはり全体的には、この二人の「動きのダイナミズムに対するリーダーシップ」が決定的に欠けていたという事実は動かせないよね。そのことは、羽生が入った後半のゲーム内容が如実に証明していたと思いますよ。実際の行動で、味方のイメージを「リード」した羽生ということです。

 攻守にわたる羽生の動きは、本当に良かった。特に、味方の最前線を追い越して決定的スペースへ抜け出したり、すぐに戻って(これまた前の味方を追い越して)後方のゾーンへ戻ってパスを受けたりといった「タテ方向の動き」が、味方にとって、抜群のイメージ刺激になっていたと感じていましたよ。

 考えているだけじゃダメだ・・まずボールがないところで動き出すことの方が大事な状況だってあるんだゾ!・・ってな具合。それがあったからこそ膠着した日本選手の仕掛けイメージが活性化したことは確かな事実でした。羽生の動きにつられるように、田中達也も下がってボールを受けるようになり、その動きで出来たスペースを羽生や遠藤が流れるように埋める。それこそが有機的なプレー連鎖じゃありませんか。とにかく羽生に登場で、ようやく、オシムさんがイメージする縦横のポジションチェンジが出てきたというわけです。

 それでも、流れのなかから何度も何度もチャンスを作り出すモノの、どうしてもゴールを奪うことができない日本代表。いやなムード・・。こんな試合展開だから、セットプレーが重要な意味を持つけれど、そこでも、何本か作り出した決定機をゴールに結びつけることができない。そしてムードがどんどん暗黒ゾーンへと引き込まれていく・・。

 そんなだったから、阿部勇樹のニアポストヘッドが決まったときは思わずガッツポーズが出ましたよ。難しい試合だったけれど、まあ産みの苦しみを味わえば味わうほど、本当の意味でのチーム力を支える実質的なコンセプトがチーム内に浸透していくものだからね。その意味で、オシム・ジャパンは順調な船出だったと言えるでしょうね。

 それにしても、トゥーリオのヘディングはすごいね。セットプレーでは、相手にとって本物の脅威になるということを(日本全国に)強烈にアピールしました。そんな彼がいるからこそ、周りの味方にもチャンスが出てくる。やはり、相手に危機意識を植え付けられる選手ほど貴重な存在はいないということです。組織プレー主体の日本だからこそ、チームのなかでの仕掛けイメージをしっかりとシンクロさせることで優れた「個の能力」を存分に活用し切らなければいけないということです。

 とはいっても、日本の場合、やはり個の能力は、あくまでも『組織プレーの機能性を高揚させる個人プレー』というのが基本イメージだよね。要は、コレクティブ(組織的)サッカー。まあ、世界のなかには、『効果的な個人勝負の状況を作り出すための組織プレー』といったタイプのサッカーを展開するチームもいるけれど、やはり日本の場合は、あくまでも組織サッカーが主体ということです。だからこそボールがないところでのプレーイメージが決定的に重要な意味を持つ。
 



[ トップページ ] [ Jワンポイント ] [湯浅健二です。 ]
[ Jデータベース ] [トピックス(New)] [ 海外情報 ]