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2006_オシム日本代表(その6)・・よく闘った・・それにしても疲れた・・また湯浅のオシムメモの一端も紹介・・(イエメン対日本、0-1)・・(2006年9月6日、水曜日)

自分自身も含めて、(安易に!?)妥協することを断固として拒否するオシムさん。とはいっても、このグラウンド状態と自然条件では(それだけじゃなく、ホームゲームなのに新潟のときと同様に守備ブロックを固めるイエメン!)、日本選手たちにとって非常に厳しい戦いになることもよく分かっているはずです。それでも、日本サッカーの将来を担う若い選手に「発展できるという体感」を積み重ねさせるために、ギリギリのパフォーマンスを要求しつづける指揮官オシム。まさに、強烈な使命感の放散。フムフム。

 まともなサッカーが出来る状態ではないピッチと、標高2300メートルという、酸素が薄い高地。だから、ボールコントロールにしてもパスにしても上手く運べない。もちろんそれは(空気の薄さも含めて)、サポートやパスレシーブの動きなど、ボールがないところでの積極的な仕掛けアクションに対する「意志」をも減退させてしまうでしょう。だからこそ、ワンチャンスをしっかりとゴールに結びつけなければならないのに、巻のヘディングや遠藤の絶対的なシュートなど、チャンスを決められない。フ〜ッ。

 だからこそ私は、オシム日本代表が、最後の最後まで諦めずに闘い、そして勝利したことに対して心から感嘆していたわけです。もちろんその闘いの主たるコンテンツは、(選手の)内面的なものだったに違いありません。だからこそ、この勝利には、かけがえのない意義があったと思っているわけです。またこの勝利には、もう一つ忘れてはならないことがあります。それは、ツキ・・。

 まあ、ツキも重要な要素だし、ご自分ではツキがない(PK戦には勝ったことがない・・でしたっけ?)と思っているらしいオシムさんでも、こんな勝利を積み重ねていくことで、そんなペシミスティックな面が好転していくかもしれないしね。指揮官にとっては、ストイック&リアリスティック&ロジックetc.といった部分と、(根拠のある)オプティミスティックな部分が「程よくミックス」している方が、多面性という視点でも、いいに決まっていますからね。

 この試合は、予測という観戦ロジックがうまく機能しなかったこともあって、ホントに疲れる観戦でした。ということで、試合レポートについてはこんなところにしましょうかね。あっと、最後にこれだけは言っておかなければ・・。

 大熊さんが大声で指示していたように(サウジ戦でもこの試合でも、久しぶりの彼のヴォイス・シュティミュレーションが本当に心地よかった!!)、あんなグラウンドコンディションだったからこそ、もっともっとシンプルなタイミングでアーリークロスを送り込んでも(放り込んでも)よかったと思っている湯浅なのです。そのことは、サウジ戦の最後の時間帯についても言える。あそこでは、アジアでは敵なしの「トゥーリオというヘディングウェポン」がいたんだから、そこをシンプルに狙わない手はなかったのに。

 どうもこのチームは、人とボールを(素早く&広く)動かす優れたコンビネーションというイメージに凝り固まりすぎている傾向があるのかもしれない。もちろん、基本的な仕掛けイメージとしては「それ」でいいですよ。チーム内のイメージを、「それ」で高次元にシンクロさせることの意義はものすごく大きい。でも状況に応じて、ガンガンと「プリミティブに放り込む」というイメージがあってもいいよね。攻撃での大事な要素は「変化」なんだからね。まあ、中盤でのリーダーがいないということなんだろうね。それについては、遠藤や阿部、また鈴木啓太に期待したいね。

 ということで、試合については、こんなところですかね。ここからは、いま私が作成しているオシムメモ(湯浅健二の仮説でありオシム語録じゃありません)の「さわり」を簡単に紹介しようと思います。

 最初は、冒頭に書いた「安易に妥協しないオシムさん」というテーマ。彼のコメントは、「満足してしまっては、そこで進歩が止まってしまう・・」という有名な言葉にあるように、常に、非常にクリティカルですよね。たまには私も、「もっと誉めてもいいんじゃありませんか・・」なんて思うこともありますよ。でもそこには、オシムさんの強烈な意志がある。私は、そんな彼のコーチング姿勢のバックボーンに、「リスクにチャレンジしていかなければミスをすることもない・・ただしリスクチャレンジのないところに進歩もない・・」というサッカーの大原則があると思っています。

 究極の、「常にアクションしつづける」サッカー。どんな状況でも、攻守の目的を達成するために「もっと」出来ることがあるという大原則を貫きとおす指揮官。オシムさんの基本コーチング姿勢は、決して満足することなく、常に課題を見つけ出そうとするということなのでしょう。

 選手は常に考えつづけなければならない・・そこでは、思考やアクションの「休み」などは認められない・・ちょっとでも、ほんのちょっとでも、思考やアクションの「無為な空白」があった場合は、それに対して厳しい姿勢で臨む(強烈な刺激を与える!)・・そこでの緊張感こそが「進歩」を促進する・・

 彼は厳しいプロコーチです。選手に対してだけではなく、サッカーに関わるすべての人々に対しても。彼は、日本人の誰もが求めていた、「本物のストロングハンド」だと確信している湯浅なのです。
 



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