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2006_オシム日本代表(その8)・・イビツァ・オシムという「刺激」・・(インド対日本、0-3)・・(2006年10月11日、水曜日)

たしかに、こんな悪いピッチじゃ、リズムの変化(要はタメ)とか素早いダイレクトコンビネーションを駆使して決定的スペースを攻略するなんていうスマートな組織プレーは無理だよな・・

 ・・だからこそ、組み立て段階では、もっと積極的に、ドカン!っちゅうタテへのロングボールを巻(我那覇)へ飛ばしてもよかった・・それこそが、攻撃の「変化」ということだからね・・もちろん後半は、少しはロングパスがあったけれど、どうも、パス出しと受け手の仕掛けのイメージがしっかりとシンクロしていなかったから実効レベルは低かった・・まあ、良いピッチのときのイメージから抜け切れず、しっかりとショート&中距離パスをつなごうとして、逆にインドに展開イメージを読まれて潰されてしまうことの繰り返しだったということですかね・・フ〜〜ッ。

 このレポートですが、試合当時の真夜中に出発するフライトを予約してあったもので、とにかく速攻で「まとめ」ようとキーボードを叩きはじめた次第。私のホテルは(インターネットを駆使して調べた)スタジアムから歩いて5分のところにある「ラマナシュリー」。記者会見が終わってからすぐにホテルでレポートを書き終え、そのままワイヤレスLANでアップしたという次第です(今の時点では、もちろんアップするつもりというニュアンスでっせ!・・汗をかきかき、爆発的なフリータイピング!)。

 この試合でのポイントは、悪いピッチコンディションという以外に、鈴木啓太という効果的な(中盤での)守備の起点プレイヤーが、後半にリベロに入ったことで、中盤ディフェンスが甘くなったということもあると思っている湯浅です。

 要は、「マケレレ啓太」が最終ラインに下がったことで中盤での「守備の起点」がうまく演出できなくなった・・だから、高い位置でのボール奪取がうまく機能しなくなった・・だから、よいカタチで仕掛けられなくなった・・ということです。

 オシムさんも言っていたように、たしかに後半の立ち上がりは、サッカーが何倍にもダイナミックに変身したと感じました。だから、ものすごく期待した。でも、その勢いを高みで維持することが出来なかった・・その原因は、やはりピッチコンディションと、中盤ディフェンスがうまく機能しなくなったということ・・。

 中盤の底の選手がダイナミックにチェイス&チェックを仕掛けることで守備の起点を作り出すことには本当に重要な意味があります。それがあるからこそ、中盤でのボール奪取勝負をうまく機能させられる・・それがあるからこそ、周りの味方がボール奪取を「予感」して、早めのタイミングで動き出すことができる(ボールがないところでの動き!)・・だからこそ攻撃に勢いを乗せられる・・そんな中盤守備のダイナミズムが、ちょっと落ちた後半の日本代表・・それが、立ち上がりの勢いを維持できなくなってしまた大きな要因だった・・マケレレの抜けたレアル・マドリーのように・・。

 後半に登場した長谷部は(攻撃では)素晴らしいアクセントのある効果的プレーを展開した・・忠実なディフェンスや鋭いインターセプト・・そして、自らボールを奪い返してからの超迫力の突破ドリブル・・それでも、やはり汗かきチェイス&チェックの内容では、鈴木啓太に及ばない・・

 ・・また、前半から良いプレーをつづけていた中村憲剛・・彼にしても、鈴木啓太がいるからこそクリエイティブなプレーを光り輝かせられたとも言える・・前半では、憲剛と啓太のダイナミックなポジションチェンジが光っていたことは確かな事実(啓太は、頻繁に左サイドの最前線スペースへ飛び出していた!)・・でも、その中村にしても、「全力ダッシュで追いかけ、追い詰める」というチェイス&チェックの内容では、啓太には及ばない・・もちろん中村憲剛の運動の量と質は良くなっているし、着実に代表チームでの存在感をアップさせている・・

 とにかく、全力ダッシュで追いかけ、追い詰めるというチェイス&チェックこそが、ボール奪取勝負のエッセンスであり、次の攻撃の最高のエネルギー源なのだ・・ってなことが言いたかった湯浅なのでした・・。

 ハナシ変わって、山岸智というテーマ。部分的には彼本来の(攻守わたる)レベルを超えた才能を披露したし、ここぞのポイントではしっかりと「爆発」していた・・でも、どうもサイドに張り付きすぎだし、全体的な仕事の量と質では満足できない・・前半は、左サイドに張り付き過ぎ・・どうして、クリエイティブなルール破りという発想がないのか・・

 ・・播戸が右で山岸が左というスリートップイメージなのだから、播戸のように、センターへどんどんロービングしてもいいし、山岸がリードして、播戸とポジションチェンジをしてもいい・・彼が左サイドに張り付き過ぎていたから、アレックスのタテへの抜け出しのスペースを潰していたという側面もある・・山岸は、守備にも秀でたチカラがあるのだから、アレックスをタテへ送り出すくらいのイメージがなければならない・・山岸が主導するタテのポジションチェンジ!!・・相手がインドなのだから、そんな「ポリバレント」なプレーへのチャレンジも見たかった・・それこそが、クリエイティブなルール破りということ・・それに対しては、イビツァさんは絶対に文句を言わない・・ちょっと手厳しいけれど、とにかく山岸の能力は、こんなものじゃない・・もっと、もっと出来る!!・・

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 こんなところかな。最後に、イビツァさんの発言で「こんなの」があったから、取り上げないわけにはいかない。「中村俊輔、中村憲剛、遠藤保仁といったエレガントなタイプの選手は、並列では使えない・・それでは(中盤守備が!?)うまく機能しない・・」。フムフム、面白い。

 まあ現状は、そう表現できないことはないかもしれないネ。だから、長谷部がもっとダイナミックに「汗かきディフェンス」をやらなければならなかった?! あま・・ね・・。

 でも私は、このイビツァさんの発言を、クリエイティブな挑発だと捉えます。まさに、イビツァ・オシムさんだからこその挑発。要は、「エレガントなタイプの選手」に対する挑戦であり、明確な課題の提示なのですよ。まあ名指しされた彼らが、本当の意味でエレガントかどうかというポイントでは(まあ、エレガントという表現も定義しなければならないわけだけれど・・)異論は百出だろうけれどネ。

 とにかく、イビツァ・オシムというプロコーチが放散しつづける「刺激」は、ものすごいパワーを秘めている。何か、日本サッカーが良い方向へ大きく変わる気にさせられているのは私だけじゃないでしょ。これまでの「経済主導」という日本サッカーのベクトルを「現場主導」の方向へ揺り戻したことも含めてネ。

 確かに、ちょっとは「一般的なノイズレベル」は下がるけれど、それも一つの「本格的な」発展プロセスなのですよ。もちろんプロビジネスにとって「一般ノイズ」は大事だし、イビツァさんも、そのことについては良いバランス感覚(経験コンテンツ)を持っているに違いないから、ここからの彼の手腕に期待しましょう。

 アッ・・時間がなくなってきた・・それでは、これで・・。
 



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