トピックス


05/06_AFCチャンピオンズリーグ・・一つのチームの変化(成長)を集中して観察することも深い学習機会だよね・・(ヴェルディ対ウルサン、0-2)・・(2006年3月8日、水曜日)

見はじめてすぐに、「こりゃ大変だ・・」と感じました。ヴェルディの守備ブロックが浮き足立っているのです。ここでいう守備ブロックとは、柳沢、戸川、萩村、菅原で組むフォーバックと、その前に陣取る、金澤と大野のダブル守備的ハーフのグループ。ボールを奪い返すためには、彼らの守備イメージとアクションが、常に、有機的に連鎖しつづけなければならないのだけれど、そのイメージリンクがバラバラ・・。

 まず、中盤での「抑え」が効かない。チェイス&チェックアクションにしても、相手ボールホルダーとの「間合い」を空けすぎなのです。レッズのアレックスもそうですが、間合いが空きすぎている場合、チェックの効果が出てこない。何せ相手は、余裕を持ってパスを出したりクロスを送り込んだりできるのですからね。これじゃ、相手をフリーにしているのと同じっちゅうわけです。そんなイージーな「アリバイ・マーク」に対し、相手のプレーを「物理的&心理・精神的に制限」するために間合いを詰めてチェックすることは、そう簡単じゃない。絶対的な運動量が増えるだけではなく、相手に抜き去られて置き去りにされてしまう危険性が増すなど、「それ」を常に忠実に実行することには強い意志が必要だというわけです。
 ということで、中盤での「相手展開に対する抑制」が効かず、自由自在に仕掛けられてしまうことで、ヴェルディ最終ラインの対応もアタフタとしてしまう。それだけじゃなく、最終ラインの「マンマークへの移行イメージ」にも大きな課題があると感じます。ポジショニングバランスをうまく取り、動き回る相手に対するマーキングターゲット・イメージを描写しつづける・・そして最後の瞬間に「マンマーク」へ素早く移行し、ボール奪取勝負を仕掛ける・・。そんな、実効ディフェンスの「流れ」が停滞しているのですよ。

 中盤と最終ラインの「コンビネーション」がうまく機能していない・・そこでの、ポジショニングとマンマークの「入れ替え・使い分け」がスムーズにいっていない・・だからラインをスッとすり抜けられて(ウラの決定的スペースへの)スルーパスを通されてしまう・・。そのように守備ブロックが安定を欠いているのだから、次の攻撃に勢いが乗るはずもない。そして選手たちのなかにフラストレーションと疑心暗鬼ばかりがつのっていく。心理的な悪魔のサイクル・・。だから、「こりゃ大変だ・・」と感じていたわけです。

 でも、15分を過ぎたあたりから、守備ブロックが安定してきたことで、徐々にヴェルディのサッカーが活性化してきます。それには、(ヴェルディが、それまでのピンチをしのげたことで)ウルサンの攻撃が一息つきはじめたという背景ファクターもあったよね。そして、(全力のパスレシーブアクションを繰り返す斎藤の汗かきプレーも含め)9番バジーリオと10番アナイウソンを中心にしたヴェルディの仕掛けが機能しはじめるのです。なかなか効果的で素早い展開と鋭いサイドからの仕掛けじゃありませんか。

 たしかに後半には、前述した、次、その次のスペースケアーがうまく機能せず(ディフェンダーのスペース感覚レベルがまだまだ!)、結局はポールウォッチャーになってしまったり、相手の「引きつけアクション」に複数の選手が同時に反応してしまったりという守備コンビネーションのミスで失点してしまったけれど、着実な光明は見えたと感じていた湯浅でした。

 とにかく、トップクラスサッカーだけではなく、一つのチームの変化(成長)を集中して観察・分析することも、イメージトレーニングとして深い学習機会になるというサッカーの歴史が示唆する教えにのっとり、これからも「J2のヴェルディ」を追いつづけようと思っている湯浅なのですよ。ラモス監督も、なかなかしっかりとしたフィロソフィーを持っているしね。楽しみじゃありませんか。

 ラモス監督の記者会見。ちょっと心配していたのだけれど、それは、それは立派なものでしたよ。「ウチのチームじゃ誰にでもチャンスがある・・選手たちには、競争の意味をしっかりと理解して欲しいと思っている・・トレーニングの内容で調子がいい選手をどんどん使っていく(その『事実』を、選手たちが、体感として深く理解するところから本当の意味での競争環境が整備されてくる・・という意味!)・・リーグ開幕戦の立ち上がりにカチカチになった背景要因はよく分からないけれど、後半には持ち直した・・このウルサンとの試合では、着実に良くなっている・・ウルサンとの試合前には、日本のメディアは、どうせ勝てないと言っていた・・だから、そんなヤツらを見返してやれ!と選手たちに檄を飛ばした・・とにかく自信だ・・それこそがもっとも大事なキーワードだ・・この試合結果で、第二戦を諦めるかだって??・・そんなことはまったくない・・アウェーの第二戦で0-2や0-3で勝ちゃいいんでしょ・・大丈夫!!・・」ってなラモス節。最後の「大丈夫!」ですが、それは彼は言っていない。でも私には、話の勢いの流れから、そのニュアンスが込められているのがよく分かる・・ってなことです。




[ トップページ ] [ Jワンポイント ] [湯浅健二です。 ]
[ Jデータベース ] [トピックス(New)] [ 海外情報 ]