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2006_クラブW杯・・例によって、ボールがないところで勝負を決めるという組織プレー的な発想が貧困なアルアハリだったけれど・・(アルアハリvsオークランド、2-0)・・(2006年12月10日、日曜日)

いや、ホントに面白い(興味深い)ゲームだったね。何がそんなに面白かったかって? そりゃ、似非(えせ)テクニシャンと、(しっかり止めて蹴るという)基本に忠実なフィジカルサッカーの対峙という構図ですよ。

 現代サッカーでは、世界的な情報化によって、良いサッカーの本質に対する戦術的な理解が進んでいるし、情報化の旗手である映像(ビジュアル)リソースを活用した、個人戦術やチーム戦術的なプレーコンテンツを発展させるためのイメージトレーニングも効果を発揮しています。そのことは、これまでに何度も書いているとおりです。

 要は、良いプレーに対するイメージが世界中で「共有」されるようになった現代サッカーでは、以前のように、相手を軽く「いなし」てウラスペースを簡単に攻略してしまうなんていう大差がつくゲームは起こり難くなっているということです。個の能力の単純加算総計だけではなく、それら個の能力の接着剤として機能すべきチーム戦術も内包するのが、チーム総合力。テクニシャンたちも、個の能力の差を際立たせるために(個の差をチーム総合力の差として具現化するために)、攻守にわたって、しっかりとボールのないところでのアクションの量と質を上げなければならないということです。そう、バルセロナのようにね。

 たしかにアルアハリは、個の能力で確実にオークランドを上回っていた。ただし、局面での個人の勝負プレーを「切り貼り」するだけでは、決して勝負を決する決定的ファクターにはなり得ない。前半が、まさにそんな展開でした。ゲームは支配するけれど、最後の勝負シーンでは、オークランド守備ブロックの「眼前」でボールを横へ動かすばかり。そしてゴリ押しの中距離シュートでお茶を濁す・・。

 まあ、後半6分に、フラビオが放った素早い動作からのスーパー中距離シュートが決まってからは、少しリリースされたようで、ボールの動きも活発になった。でも、結局はボールの動きだけといった体たらくでした。

 確かにボール扱いは上手いよね。それでも、二人目、三人目のボールなしの動きが有機的に連鎖しないから、後半になっても、オークランド守備ブロックのウラを突けていたわけじゃない。一度だけ、フラビオが「ワンツー」を成功させてシュートまでいったけれど、ウラスペースを突くような効果的なコンビネーションといったら、それだけ。要は、パス&ムーブや、ボールがないところでの(後方からも含む)サポートアクションの量と質がインターナショナルレベルにはなかったということです。

 だからアルアハリ選手に対する形容は、冒頭にも書いたように、相手のボール奪取アタックをかわす「だけ」の似非テクニシャン(≒ボールプレイヤー)ということになってしまう。

 現代サッカーでのホンモノのテクニシャンとは、ボールがないところでもしっかりと動き、常にスペースでボールを持つことに集中できるような選手のこと。要は、ある程度フリーでボールを持つ「攻撃の起点」になることを常にイメージしているということ。彼らは、自らの能力を最大限に表現する(自己主張する)ためにも、汗かきも含む、しっかりとしたチームプレーが大前提だというメカニズムを深く理解しているということです。

 でも、次は南米チャンピオンのインテルナショナル。巨人に挑むアルアハリ選手が、チャレンジャーというマインドになったときに、そのプレー姿勢がどのように変化するのか・・。素晴らしいレベルにある潜在的な個の能力を、いかにチーム戦術的に組み合わせ、発展させられるのか・・。インテルナショナルが相手だったら、いくら素早い足許パスを積み重ねたところで、その守備ブロックに「穴」を作り出すことなんて出来るはずがない・・。そんな視点でも、ちょっと興味が湧いてきました。

 




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