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2006_クラブW杯・・アハリの同点ゴールは、インテルにとって「恵みの刺激」でした・・(インテルvsアハリ、2-1)・・(2006年12月13日、水曜日)

さて、南米チャンピオンのインテルナショナルと、アフリカのダントツチャンピオンであるアル・アハリとの対戦。結局は、目に見えるチーム総合力の「僅差」に則った結果に落ち着いたわけだけれど、そこには、神様ドラマのニオイも少しはありましたよ。

 わたしは、ゲームの立ち上がりを観ながら、こんなことを考えていました。この試合も含め、これまでの三試合の展開は、同じ構図だ・・守備を固めるチーム総合力で劣るチーム・・その強化守備ブロックを崩そうとトライしつづける強い方のチーム・・

 ・・とはいっても、インテルの強さは、やはりレベルが違う・・彼らは、守備が抜群に強いし、攻撃では、ボールがないところで「も」勝負を決められるという本物の戦術イメージング力を持ち合わせている・・「似非」のチームでは、ボールしか動かないが(足許パスや横パスのオンパレード!)、インテルは、忠実なパス&ムーブや勝負シーンでの三人目の動きなど、ボールだけではなく、人もしっかりと動く・・だからこそ効果的にスペースを活用できる・・出来ては消え、消えては出来るスペース・・インテルは、そのスペースを主体的にマネージしているっちゅうことか・・。

 そんなことを考えてはいたけれど、アハリのガチガチに固めた守備はやはり堅い。強いインテルとはいっても、そう簡単には相手守備ブロックを崩し切る(ウラの決定的スペースを突いていく)っちゅうところまでは行けないのですよ。もちろんチャンスメイクの流れには、それまでにはなかった「本格感」があったけれどね。そんな、動的な均衡状態のなかで、唐突に先制ゴールが生まれます。演出家は、天才フェルナンドン。

 ハーフウェイを少し越えたあたりでボールを持ったフェルナンドン。顔の向きも含め、ちょっと右方向へ展開するような仕草をみせるのですよ。でも次の瞬間には、ズバッという鋭いタテパスを、最前線のパトにピタリと合わせるのです。

 このときパトは、アハリの二人のディフェンダーに挟まれていたけれど、フェルナンドンが「仕掛け」た顔の向きと仕草に、二人とも視線と意識を引きつけられてしまいます。「あっ、フェルナンドンは、右サイドへ展開するつもりだな・・」と、一瞬イメージがフリーズしてしまう二人のディフェンダー。そして次の瞬間、そんな彼らの意識(勝負イメージ)の空白を突くようなタテパスが、ピタリと、パトの足許に合わされました。

 一度はシュートモーションを止められたけれど、そのこぼれ球に全力で迫ったインテルのアレックスが、中盤からのもどってきたアハリ選手と交錯し、そこでこぼれたボールが、再びパトの眼前スペースにコロコロと転がってきたというわけです。素晴らしいシュートでした。若いパトにとっては、大切な「体感ゴール」だったに違いありません。

 そしてゲームが逆流していく。徐々にアハリが、人数を掛けて攻め上がるようになっていったのです。

 両チーム実力の「微妙な僅差」は、グラウンド上でプレーしている選手たちがもっとも敏感に感じているはず。インテル選手たちは、アハリの攻撃を、こんなふうに感じていたに違いない。「ヤツらの攻撃だったら怖くない・・ウラを取られることなんて決してない・・」。インテル選手たちのイージーなプレー姿勢からは、そんな軽いマインドが見え隠れしていたモノです。安易なタイミングでボール奪取勝負を仕掛けて置き去りにされてしまったり、最終勝負なのに、ボールがないところでのマークが甘かったり、最後の競り合いでも、間合いが空きすぎている・・等々。

 そんな傾向は、後半に入っても変わりませんでした。だから、アハリの同点ゴールは、イージーなプレー姿勢のインテルが、神様から鉄槌を下されたということだったに違いない。

 でも、その同点ゴールでインテルが覚醒するのですよ。やっと本領を発揮しはじめたインテル。それは、ゲーム立ち上がり10分に魅せた優れたサッカー内容によって膨らんだ期待がよみがえってきたといったところでした。

 たしかに勝ち越しゴールはコーナーキックからだったけれど、全体的なゲームの流れは、いつかはインテルが・・といったものでした。だから逆に、アハリの同点ゴールは、インテルにとって、これ以上ないほどの「恵みの刺激」だったとも言える!? まあ、そういうことだろうね。あんな、タガの外れた締まりのないサッカーをつづけ、最後の時間帯にアハリに同点ゴールを叩き込まれていたら、本当に取り返しのつかないことになっていただろうからね。まあ・・脅威と機会は表裏一体・・。

 ところで、初戦のオークランド戦ではいいところはなかったけれど、この試合では、(期待したとおりの)活発なパフォーマンスを披露したアル・アハリ。でも結局、インテルの守備ブロックを振り回してウラを突くといったハイレベルな仕掛けを繰り出すことは叶わなかった。だから最後は、決まって、個の力業(ちからわざ)による強引なシュートばかり。やはり「僅差」は明白でしたよ。

 そのポイントについて、アハリのポルトガル人監督、マヌエル・ジョゼさんに聞いてみました。「アハリは全体的には良い内容のゲームを展開したと思う・・ただ最後は競り負けた・・その背景には、まだまだ明確に横たわる僅差があったと思う・・ジョゼさんは、その僅差の本質をどのように表現されるだろうか?」。

 それに対してジョゼ監督は、こんなことを言っていました。「後半は互角の展開だった・・我々は、アフリカとエジプトのサッカーを全世界にアピールすることができた・・決して我々が劣っていたとは思わない・・とはいっても確かに僅差はある・・ブラジルはサッカーの先進国・・エジプトサッカーと同等には比較できない・・環境の差?・・経験の内容?・・成熟度?・・勝つという意志の力?・・マリーシア(狡猾さ)?・・才能の量と質?・・まあ、そういったところが背景にあるんだろうな・・」。

 




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