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2006_クラブW杯・・良いサッカーを披露するだけじゃなく、結果も(高い確率で)自力で引き寄せちゃうバルセロナ・・(バルセロナvsクラブ・アメリカ、4-0)・・(2006年12月14日、木曜日)

ホント、サッカーの楽しさを、とことん「美しく」表現してくれちゃって。記者会見でのフランク・ライカールト監督は、守備での不安定さに大きな課題が見えていたと引き締め傾向のコメントをしていたけれど、まあ、「いまの」バルセロナが、良いプレーのイメージで、世界のサッカーシーンをリードしつづけていることだけは確かな事実だからね。ホント、彼らは世界の至宝だよ。

 創造的で美しいバルサの魅惑サッカーを観ながら、まず脳裏に浮かんだのは、先日ホームで行われたチャンピオンズリーグ(予選リーグ)最終戦での、ブレーメンとの勝負マッチでした。そのゲームでバルサが誇示したサッカー内容は、まさにスーパー。「あの」ブレーメンが、まったく歯が立たなかったんだからね。チンチンにやられまくったブレーメン選手の気の勢いがどんどんと萎えていったと感じたモノです。

 その試合について、友人のドイツ人ジャーナリストと話したんだけれど、試合後のブレーメン選手は、サバサバしたものだったそうな。まあ、あれほど完璧にやられたらね・・。とにかくそのゲームは、確実に、今シーズンのバルサのベストゲームの一つだったのですよ。

 わたしがブレーメン戦のことを思い浮かべたのは、このクラブ・アメリカ戦での先発メンバーとゲーム戦術イメージが、この試合とまったく同じだったからです。フランク・ライカールト監督は、「この選手の組み合わせ」がいまのベストだと確信していた!? ということで、壇上でライカールト監督の隣に座るFIFAの記者会見コーディネイターの方と目くばせサインて交信し、次の質問の権利をもらいました。

 「選手タイプのバランスという視点で、監督は、このチームがいま最善だと考えていると思うのだが?」という質問をぶつけてみたのですが、「そんなことはないよ・・今日の試合じゃ、ブレーメン戦に出ていない選手も出たし、控えにいる選手が、先発の選手よりも劣っているとは言えない・・先発メンバーにしたって、それがベストだとは限らないしネ」なんて、軽くかわされてしまった。まあ、このテーマは次の機会に・・。

 たしかに、守備でのプロセスプレーを有機的に連鎖させてボールをダイナミックに奪い返しにいくという視点じゃ、ブレーメン戦のコンテンツに及ばなかったよね。チェイス&チェックで守備の起点ができても、次の勝負所への詰めが甘いというシーンが繰り返されたからね。ただ攻撃は、明らかにブレーメン戦に優るとも劣らないコンテンツでした。

 ところで、この試合の構図だけれど、またまた、守りを固めるチーム総合力で劣るチームと、それを崩しに掛かる強いチームということになりました。でも、実際のゲーム展開は、これまでの試合とはまったく別次元でした。

 とにかくバルサが魅せるサッカーのレベルがケタ違いなのですよ。有機的なイメージシンクロと呼ぶにふさわしい守備をベースにした(たしかに実際のディフェンス機能性でアベレージ以下というシーンもあったけれど・・)人とボールが、夢のように素早く、広く動きつづけるサッカー。彼らほど、「美しく」ボールがないところで勝負を決められるチームはありません。だからこそ世界の至宝であり、世界サッカーのイメージリーダーと呼ぶにふさわしい。

 グジョンセンの先制ゴールは、そんなバルサ攻撃のクオリティーの高さを象徴するものでした。中盤でボールをもった下がり目のミッドフィールダー、イニエスタがパスを出し、次の瞬間には、忠実なバス&ムーブで前線へ飛び出していく。ボールは、最初にイニエスタからパスを受けた選手(デコ?)からタテにいるロナウジーニョへとわたる。もちろんイニエスタは、徐々に「角度」をつけながら動きつづけている。

 そして最後は、ロナウジーニョから、ノールックパスが、イニエスタが走り込むスペースへと通される。まったく走る勢いを落とすことなくスムーズにボールをコントロールしたイニエスタは、そのまま素早く、逆サイドでフリーになっていたグジョンセンへラストパスを出す。最後は、グジョンセンのダイレクトシュートが、見事に、クラブ・アメリカのゴール右隅へ吸い込まれていった。鳥肌が立ちました。

 それ以降は、まさにバルサ劇場でしたね。逆に見たら、クラブ・アメリカが萎縮し過ぎていたとも言える。彼らの実力は「あんなもの」じゃない。もっと必死にディフェンスで食らいついていけば、バルサのフラストレーションが溜まり、足も止まり気味になったに違いないのに・・。あれ程フリーにプレーさせちゃ、バルサの攻撃パワーがどんどんと増幅していくのも道理だよね。

 とにかくバルサは、人とボールの素早く広い動きを基調に、守りに入ったクラブ・アメリカの守備ブロックを完膚なきまでに翻弄しましたよ。前述したイニエスタの、ボールがないところでのプレーに象徴されるような、後方からのオーバーラップや、忠実に繰り返されるパス&ムーブ、それらのボールなしの動きをリンクするように、素早く、広く動かされつづけるボール。彼らは、ボールのないところで勝負を決めてしまうという明確なイメージを持っているのです。サイドバックのファン・ブロンクホルストとザンブロッタが、左右ハーフのロナウジーニョとジュリを追い越して最終勝負を仕掛けていく・・デコとタテにポジションをチェンジしたイニエスタが最終勝負を仕掛けていく・・。フ〜〜ッ。

 とにかく、パスレシーブの動きに入ったバルサ選手は、最後まで、全力で走りきる。それは、本当にすごいことなのです。もちろん「それ」は、ボールが回されてくる確率が高いからに他なりません。そのバックボーンがなければ、必ず、その走りの勢いが途中で殺がれてしまうものなのですよ。

 とにかく、足許ではなく、常にスペースを活用してパスを回しつづけるバルサのサッカーは本当に感動モノでした。彼らは、本来的な意味の「良いサッカー」を披露するだけではなく、(高い確率で)結果も自力で引き寄せちゃう。現代サッカーでは、ある意味「二律背反」的にも考えられている「美しさと勝負」という二つの目標。彼らは、それらを(高い確率で)同時に達成してしまうのです。インテルナショナルとの決勝が、いまから楽しみで仕方ありません。

 あっと・・バルサ最終ラインが魅せつづけた、一体になったラインコントロールも見事でした。一体になった「ストップ&アップ&バック」。そんな「ユニットムーブメント」は見応え十分だったけれど、それについては、決勝レポートで・・。

 




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