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2006_天皇杯・・レッズは鈍重なサッカーだった・・でも次は準々決勝だからね・・(レッズvsアビスパ、3-0)・・(2006年12月16日、土曜日)

フ〜〜ム・・。たしかに、ギドが言うように、大きな目標を達成した後のモティベーションアップは難しいという側面もあったんだろうね。またそこには、今回のクラブワールドカップと同様、守備ブロックを固める(総合力で劣る)チームをうまく崩していけない(普通だったら)強いチームという構図もあった。まあ、バルセロナは例外だったけれどね。

 それにしても、レッズの動きはちょっと鈍重に過ぎた。守備では、高い位置から、協力した(勝負イメージが有機的に連鎖するような)ボール奪取プレッシングを仕掛けていくのではなく、アビスパが仕掛けてくるのを待つという受け身(リアクション)姿勢の方が目立っていたし、攻撃でも、ボールがないところでの動き(パスレシーブやスペースメイキング等を意図したフリーランニング)があまりにもお粗末だった。それに対して目立っていたのは、ゴリ押しの単独ドリブル勝負ばかりといった体たらくでした。

 たしかに何度か、両サイドの相馬や平川から良いカタチのクロスが送り込まれるシーンもあったけれど、結局は、強固な組織が構築されているアビスパ守備ブロックにことごとくはね返されてしまう。そして逆に、素晴らしく勢いが乗ったカウンターを仕掛けられて大ピンチに陥ってしまうのです。

 モティベーションが減退気味だったこと、そして、強化されたアビスパ守備ブロックに対抗する「組織プレーのイメージ」がしっかりと脳裏に描写されていなかったことは否めない事実です。まあ、イメージは描写できていたけれど、それを実際のアクションとしてグラウンド上に投影していくための意志のチカラに欠けていたという見方も出来るのかな?

 バルセロナと比較するのはフェアじゃないけれど、彼らが(一昨日のクラブ・アメリカとの準決勝で)展開した、夢のような人とボールの動き(その絶対的ベースは、ボールがないところでの忠実で創造的なフリーランニングの積み重ね!)が脳裏を離れないから、レッズの鈍重な攻撃に、どうしてもフラストレーションが溜まってしまう。出来るのに「やらない」のは、プロとして恥ずかしいことでしょう。

 とにかく、強いバルセロナの原型とも言える、天才たちが織り成す(もちろんロナウジーニョは除いてですよ!)汗かきのフリーランニングは、誰にとっても素晴らしいイメージトレーニング素材ですよ。「組織と個」が理想的にバランスしたバルセロナ・・ってな具合。

 それに対してレッズだけれど、まあ、前述した「やらない」というのは言い過ぎで、実際には「出来なかった」というのがより正確な表現だろうね。要は、チーム全体の動きが鈍く、一人や二人の選手が汗かきアクションをしても何も動かなかったということです。もちろん、そんな鈍重な雰囲気を打破するようなリーダーもいなかった・・。

 そんなレッズに対して、沖野監督代行が率いるアビスパは、素晴らしく気合いが乗ったサッカーを展開しましたよ。彼らが全力でプレーしていることは、スタンドで観戦する我々にも明確に伝わってくる。彼らは、古賀を中心にパスをつないでウラを取るというゲーム戦術イメージを忠実にトレースするようなチャレンジをつづけ、そして、まさにそのイメージ通りのチャンスを何度も作り出したのです。その吹っ切れたゲーム内容には、感動さえ覚えたモノです。

 そんな構図の一発勝負マッチだったけれど、延長前半3分にポンテが先制ゴールを挙げてからは、完璧に「オープン」な展開へと変容していきます。アビスパが人数を掛けて押し上げはじめたことで、アクティブなゾーンがタテに広がり、必然的にスペースが「オーブン」になりはじめたということです。こうなったらもちろん、個のチカラで明らかに優るレッズのもの。何度も、何度もカウンター気味にチャンスを作りつづけ、その流れがワシントンの追加ゴールへとつながるのです。そして万事休す。

 これでレッズは準々決勝まで駒を進めました。その試合は、12月23日。ということで、そこから決勝までは一週間しかない。その時点で具体的な目標イメージが明確なモノになるはずだから、モティベーションも自然とアップしてくるでしょう。まあ、次のジュビロとの準々決勝では、鈴木啓太、長谷部誠、山田暢久で組む「ダイナミック・トライアングル」も復活するだろうし、チーム全体の闘う意志も大きくアップするに違いない。

 それにしても、鈍重なサッカーのなかでも鈴木啓太のプレーコンテンツだけは普段と変わりなかった。彼の意識の高さには、本当に恐れ入る。大したものだ。彼だったら、「何やってんだ、もっと闘え! 足を止めずに、パス&ムーブで全力ダッシュしろ! どうして相手のマークに付きつづけないんだ!」などの叱咤を飛ばす『チームの刺激ジェネレーター』としても君臨できるはずだけれど・・。

 まあ彼は、言葉ではなく、行動でアピールするタイプなんだろうね。それでも、周りのチームメイトの多くは、彼のダイナミックな全力ファイトプレーを見ながらも、結局は笛吹けど踊らずってな体たらくだったからね(途中出場した長谷部は違ったけれど・・)。だからこそ、中盤のリーダーとして、実際のプレー以外でもっともっとアピール(強烈な刺激を放散)してもいいように思うのですよ。そのことが、鈴木啓太をより大きく飛翔させるはずです。日本代表も含めてネ・・。

 わたしは、例によって、元旦の決勝をラジオ文化放送で解説する予定なのですが、昨年と同様、浦和レッズが決勝へ進出してくれたらそれほど嬉しいことはありません。期待しています。




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