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2006_天皇杯_準決勝・・ギド・ブッフヴァルトにとって、素晴らしい「仕事納めの舞台」が整った・・(レッズvsアントラーズ、2-1)・・(2006年12月29日、 金曜日)

「前半25分を過ぎたあたりから、しっかりとゲームをコントロールできるようになった・・全体としてみれば、レッズの順当な勝利だといえる・・」。試合後のギド・ブッフヴァルト監督のコメントです。まあ、そういうことだね。

 この場合のゲームコントロールとは、もちろん、しっかりと相手の攻撃の勢いを抑制し、その効果的ディフェンスをベースに蜂の一刺し(実効カウンター)を見舞うというゲームの流れを意味します。

 カウンター攻撃だけれど、それを別な表現に置き換えたら、こんな風になるでしょうかね。「ボールを奪い返した次の瞬間に(ボール奪取を予測した、守備から攻撃への素早い切り替えがキーポイント!)、間髪を入れずに繰り出される、前への勢いにブレーキが掛かることのない直線的でダイナミックな仕掛けの流れ・・」。もちろんその効果レベルをどこまで引き上げられるかは、どのくらい相手の攻撃を抑制できている(コントロールできている)かに掛かっているというわけです。相手の攻撃に「振り回されて」いたら、守備から攻撃への切り替えがうまく機能するはずがありませんからね。

 カウンターの流れに入ったとき、最後尾から、ネネや細貝までが最前線へ飛び出していきました(まあ彼らの場合、自分自身がボールを奪い返し、そこを起点にカウンターを仕掛けていくという状況だけれどネ)。確かにそのオーバーラップは、レッズが志向するサッカーを象徴したものだけれど、それでも、6-7人もレギュラークラス選手を欠いた状況でも「それ」をやっちゃうところがいい。そのアグレッシブな勝負の姿勢に大いに共感していました。

 カウンターの戦術的なベースは、やはり何といっても「個の才能」。レッズには、ポンテがいるし(この試合では)小野伸二もいましたからね。彼らが中継に入ったときのボールの「スムーズな流れ」には、期待を抱かせるに足るホンモノ感がありました。そんな、ボールの動きの「コンダクター」がいたからこそ、後方からのオーバーラップにも勢いが乗りつづけたというわけです。

 全体的に見れば、冒頭で述べたように、ゲームの(勝負の)流れはレッズにあったという評価が順当だと思います。多くのレギュラークラス選手を欠いたにもかかわらず、クレバーに、そして忠実にカップゲームでの勝負の流れを引き寄せたレッズといったところですかね。

 それに対して、積極的な前への勢いを、どうもうまくチャンスメイク(レッズ守備ブロックのウラスペースを突いていく仕掛け)に活かし切れなかったアントラーズ。まあ、ボールがないところでのチャレンジプレーの量と質が足りなかったということだね。要は、パスレシーブの動きや、後方からの三人目、四人目の飛び出しといったボールがないところでの組織プレーに対する主体性や積極性が足りなかったということです。そして最後は、ごり押しの個人勝負から強引なシュートを放つばかり。

 もちろんそれにしても、レッズ守備ブロックが素晴らしく機能(集中)していたからに他なりません。

 この試合では、左サイドの相馬崇人が展開するディフェンスに注目していました。ボールがないところでのマークの受け渡しや忠実な競り合い(マーキング)に課題を抱えている彼のことだから、このようなハイテンションの試合ではボロが出るに違いないと思っていたのですよ。でもそれは杞憂でした。もちろん何度かは、ボールウォッチャーになってウラのスペースを取られるシーンもあったけれど(パスが来なかったから事なきを得た!)、全体としては、まあまあの出来だったのです。

 相馬のディフェンスプレーでは、何度か、ボールがないところで走り込む相手を忠実にマークし、最終勝負でのギリギリのスライディングで相手のチャンスを阻止するといった素晴らしいアクションも目撃しましたよ。とにかく、ディフェンスこそが全てのスタートライン。このような忠実な汗かきプレーをつづけることこそが、相馬が天から授かった攻撃力を発展させることのベースになるのです。

 また、前述した細貝萌とネネ、そして、この試合では最終ラインのセンターに入った内舘秀樹の集中したプレーぶりも特筆でした。まあ、そのスリーバックと両サイド、そして山田暢久と鈴木啓太で組む守備ブロック全体が素晴らしい出来だったということだけれどね。ボール奪取勝負イメージが「有機的に連鎖」する素晴らしい組織ディフェンス・・ってなところ。

 また前線のポンテや小野伸二(また永井雄一郎)にしても、ケースバイケースで守備に参加し、ボール奪取勝負の流れに「最後まで」忠実に、そして効果的に絡みつづけるというシーンを何度も目撃しました。だからこそ、全員で勝ち取った価値ある勝利だと言える。

 これで、天皇杯の決勝は、レッズ対ガンバというエキサイティングな対戦になりました。決勝は、ラジオ文化放送で、小島伸幸さんと一緒に解説することになっているのですが、小島さんとの(バランスの取れた!?)コラボレーションが今から楽しみです。

 さて、今回で「一時」日本を離れるギド・ブッフヴァルト。これ以上ないという「仕事納めの舞台」が整ったじゃありませんか。つくづく、彼は強い星の下に生まれたんだな〜と感じますよ。もちろん、彼が為した素晴らしい成果からすれば、まさにフェアな( You deserve it !! ってな)成り行きではあるんだけれどね。とにかく、結果がどちらに転ぼうとも、レッズ選手全員がチカラの限りを尽くして最後まで闘い抜いてくれることだけは確かでしょう。それこそが、ホンモノの個人事業主たちからの、ギドに対するフェアな餞(はなむけ)なのです。




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