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2006_「J」入れ替え戦・・どちらに入るか分からないゴールを待ちつづけた両チーム!?・・(アビスパvsヴィッセル、1-1)・・(2006年12月9日、土曜日)

そのとき、息が止まりました。ロスタイムに入った91分にアビスパが作り出した絶対的な勝ち越しチャンス。でも結局最後は、ゴールに入りかけたボールを、ヴィッセルGK荻晃太に「かき」出されてしまった・・。フ〜〜ッ。

 そのシーンは、ヴィッセル選手のクリアミスが原因だったことで(平瀬からのバックパスをミスキックし、あろうことか、後方へ飛んでしまったボールが味方最終ライン選手のアタマを越してしまった=だからノーオフサイド!)、最後のボールかき出しシーンでは、GKも含むヴィッセル選手3人に対して、5人のアビスパ選手がゴール前まで詰めていたんですよ。息が止まるのも道理という極限テンションの攻防でした。

 ところで、平瀬のバックパスから絶対的チャンス(ピンチ)シーンに至るまでに何度かあった「交錯シーン」だけれど、まあ、ファールはなかったよね。それにしても、究極の偶然と必然の交錯ドラマだった。

 ご覧になったように、ゲームは、ヴィッセルが先制ゴールを奪った後半15分から、やっと本格的に動きはじめました。そりゃ、そうだ。この「アウェーゴール」で延長戦がなくなったし、アビスパには、2点奪い取るというオプションしかなくなってしまったのだから。

 人数をかけて押し上げるアビスパ。両サイドの攻め上がりが急を告げる。特に左のサイドハーフ古賀誠史のペースアップが目立っていた。それまでは、タイトにマークされ、サポートもないという孤立状態だったことで効果的に仕掛けていけなかった古賀だったけれど、ヴィッセルの先制ゴールによって、左サイドバックのアレックスのサポートが何倍にも増幅しただけではなく、「古賀の左足クロスを使うゾ!」という仕掛けイメージが急速にチームに浸透したことで、彼へポールが集められはじめたのですよ。

 特に、中盤の底のポジションでボールの分配役に徹していた(中距離シュートをイメージしていた!?)ホベルトから古賀へ送られる、「タメ」られたパスが効果的でした。そしてボールは、右サイドやセンターゾーンを経由し、素早く正確なサイドチェンジによってフリーの古賀へ。そこから、期待どおりの危険なクロスが送り込まれ、迫力満点の最終勝負が繰り広げられたというわけです。

 とはいっても、たしかに先制ゴールを奪ってからのヴィッセルのプレーからは、「2点取られなきゃいいんだろ・・」という余裕が感じられた。ディフェンスの状況判断も安定していたし、最終勝負でも、ボールの動きに対応して最終ラインを上げるという勇気あるラインコントロールさえ見られた。また次のカウンター攻撃でも、ある程度の人数を掛けられていた。

 ただそんな余裕も、後半39分にアビスパが同点ゴールを奪ってからは、どんどん希薄になっていったと感じました。同点ゴールを叩き込んだのは、アビスパ最前線の汗かきとして素晴らしいチェイス&チェックやポストプレーで抜群の存在感を発揮しつづけていた布部。まさに執念のダイビングヘッドでした。その布部を中心に、どんどんと存在感をアップさせる古賀、交代出場した田中と城後たちが、吹っ切れたリスクチャレンジを仕掛けつづけるのです。そして冒頭のシーンへ・・。

 結局そのシーンで「The End」ということになってしまいました。

 取り返しのつかない事態に陥ってしまう危険性を「必要以上」に高めないという「静の」ゲーム戦術を優先させた両チーム。どちらに転ぶか誰にも分からないといった展開でした。それが、一つのゴールによって、極限テンションの支配する均衡状態がブレイクし、試合終盤のエキサイティングドラマが幕を開ける。まさに、これぞ究極の勝負優先サッカーといったゲーム展開じゃありませんか。

 別な視点からすれば、両チームともに、その分岐点(ゴール)を「受け身に待たざるを得なかった」とも言える。均衡状態では、積極的にゴールを奪いにいくという意志をもって主体的にリスクへチャレンジしていったわけじゃないからね。さて、その意味するところは?? まあ、結局はそれも、結果によって決まってくるということだろうね。

 とにかく、久しぶりに(ある意味での!)サッカーの醍醐味を存分に楽しませてもらいました。

 




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